「血便が出ていないから大腸がんは大丈夫」——そう思っていませんか? 実は大腸がんは、便に血が混ざらないまま進行するケースも少なくありません。一方で、色や形などのわずかな“便の変化”が、体からのサインであることも。医師が、血便以外で注意したいポイントなどを解説します。

「血便=大腸がん」とは限らない

  • ※画像はイメージです

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赤色から暗赤色の血が混ざった便のことを「血便」といいます。血便の原因となる病気はさまざまですが、血便を起こしうる病気があっても、必ず血便として確認できるとは限らない点に注意が必要です。

なお、医学的には「便」は糞便(大便)を指し、尿に血が混ざる場合は「血尿」と区別されます。

血便で考えられる病気

血便が見られる病気として最も頻度が高いのは、痔核(いわゆる「痔」)でしょう。メタ解析によると、世界的に約4人に1人が痔核を有していると報告されています。

そのほか、大腸がん、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、大腸憩室出血、感染症、虚血性腸炎なども血便の原因になります。

出血の量や場所によっては、大腸がんでも血便にならない

便が鮮やかな赤色に見えるほどの出血は、実際には多くありません。もし便が明らかに血液のような色をしている場合は、早急な受診が必要です。

大腸がんでも、肛門に近いS状結腸や直腸にがんがあり、出血量が比較的多い場合には血便として確認できることがあります。一方、出血量が少ない場合や、がんの位置が奥の場合には、肉眼では血液が確認できないことも珍しくありません。

つまり「血便がないから大腸がんではない」とは言えないのです。

血便と便潜血では対応が異なる

肉眼で血液が確認できる血便と、検査でしか分からない便潜血は別物です。

大腸がん検診では便潜血検査を行い、陽性の場合に精密検査へ進みます。一方、血便に気づいた場合は、検診を待たず、早めに医療機関を受診することが重要です。

大腸がんで見られる「便の見た目」の変化

血便以外にも、大腸がんが原因で便の形や色が変化することがあります。ただし、これらは必ず現れるものではなく、がん以外の原因でも起こるため、あくまで目安として考えましょう。

便が細くなる・形が変わる

がんによって腸管が狭くなると、便が細くなったり、コロコロした便になったりします。下痢のような便になることや、粘液が混じって見えることもあります。

便が黒っぽくなる

上部消化管(胃や十二指腸など)で出血がある場合、血液が酸化して墨のような便になることが多いです。

便の「見た目」以外に現れる変化

便の色や形だけでなく、排便習慣や全身症状に変化が出ることもあります。

下痢と便秘を繰り返す

大腸がんが便の通過を妨げることで便秘になりやすくなります。一方、便の中の水分だけが通過して下痢になることもあり、下痢と便秘を繰り返すのは特徴的な症状のひとつです。

その他のお腹の症状

腹部の張り、不快感、残便感、腹痛、吐き気などが起こることがあります。体表からしこりを触れることもあります。

全身的な症状

慢性的な出血による貧血や、がんの進行による体重減少がみられることもあります。

こんな場合は「様子見」しない

ここまで紹介した変化は、大腸がん以外でも起こり得ます。しかし、次のような場合は注意が必要です。

血便などの異常が続いている

一時的ではなく、血便や便通異常、腹部症状が続く場合は、原因を調べる必要があります。

大腸がんのリスク因子がある

大腸ポリープの既往、家族歴、潰瘍性大腸炎などの持病、検診未受診、原因不明の貧血や体重減少がある場合は、早めの受診が勧められます。

便は体からのメッセージ

便には体内の変化が反映されます。とくに肉眼で確認できる血便は、見逃してはいけないサインです。大腸がん検診を定期的に受けることに加え、日常的に便の変化にも目を向け、異変に気づいたら早めに医療機関につなげましょう。

血便と大腸がんの関係について、消化器病の専門医に聞いてみました。

大腸がんを症状のみから早期に発見することは難しいので、定期的な大腸がん検診が推奨されます。また、大腸がん検診で必ず大腸がんを発見できるわけではないので、身体が発するわずかなサインに注意を払う必要もあります。そのサインとしては、下記があります。

・血便が持続する
・便が細くなる
・体重が減少する
・便秘
・残便感
・腹痛
・貧血(ふらつく、体動時の息切れ等)
・お腹にしこりをふれる など

特に複数個有する場合には早めに医療機関を受診してください。また、硬い便や下痢便のあとにお尻の痛みを伴って少量の鮮血が出る場合には裂肛(いわゆる切れ痔)のことが多いため、症状が続かなければ様子見してもよいと思います。

「いつもと違う便がでることが多い」と感じたら、大腸がんのサインの可能性もあるので様子観察せず医療機関に相談してください。

東 玲治(ひがし れいじ)先生

一宮西病院 消化器内科部長、消化器内視鏡センター長
資格:日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医