Puma Blueが語るバンドサウンドの解体と再構築、死を見つめて手にした真の自由

最新アルバム『Croak Dream』は、プーマ・ブルー(Puma Blue)におけるバンド・サウンドを確立した『Holy Waters』(2023年)をビルドアップした作品だ。ポスト・プロダクションを推し進め、ダビーな音響処理を加えることでボトムが強調されたダイナミックでヘヴィなサウンドは、圧巻のクオリティを誇っている。

今回のインタビューでは、傑作の制作舞台裏や影響源から、死生観の滲むリリック、自ら監督を務めるMVまで、ジェイコブ・アレンがその世界観の全貌をたっぷりと語ってくれた。まさにプーマ・ブルーの「現在地」を知るための決定版と言える内容になった。3月31日(火)大阪・梅田CLUB QUATTRO、4月1日(水)東京・ Zepp Shinjuku (TOKYO)で開催される来日公演では、インタビュー終盤でも言及されているとおり、『Croak Dream』以降のモードで、迫力満点の演奏が楽しめるだろう。今の充実したプーマ・ブルーを目撃する絶好の機会になることは間違いない。

Photo by Liv Hamilton

バンドサウンドの解体と再構築

―『Croak Dream』は、『Holy Waters』で築き上げたバンド・サウンドを更新した作品ですが、『Holy Waters』の後に『Croak Dream』を作るのではなく、『antichamber』『extchamber』という2作のEP(共に2025年)を間に挟みましたよね。プレスリリースには『Holy Waters』の後、すぐ『Croak Dream』に取りかかる気が起きなかったともありました。このプロセスについて教えてください。

ジェイコブ:プーマ・ブルーの表現の一番ピュアな形態が、自分一人で曲を書いてプロデュースした状態のものなんだ。それを、一緒にやってるバンドに持っていくと、また別のものに育っていく感じで……ライブやスタジオで一緒にやっていく中で自然と違う姿になっていく……しかも、そこから曲がどう発展していくかというその旅路自体に、自分自身すごく興味があるんだよね。

でも2年ぐらい前かな? 自分だけのために曲を作りたいっていう衝動に駆られて、それでアコースティックな作品を作って、アンビエント音楽を作ってという時期があったんだ。それ自体はそもそもリリースする予定もなしに、本当に日記を書くみたいな感じのすごくプライベートなものだった。ただ、友達からこれは「世に出すべきだよ」って言われてリリースしたのが『antichamber』と『extchamber』で、それにより『Croak Dream』の作業が一時中断したんだ。というのも、その時点で『Croak Dream』の作業には取りかかっていたんだよ。たださっきも言ったように、自分の中で抑えきれない欲求を抱えていたから、まずはそっちを片付けてから『Croak Dream』の作業に戻っていったんだ。

『antichamber』と『extchamber』を作り終えた後、自分の中に新たなエネルギーが生まれてるのを感じてね。というのも、ずっと自分一人で作業してたのが、また自分の仲間たちと一緒に音楽を作れるっていうその喜びとワクワクした感じになったんだ。しかも、せっかくなら冒険してみようかなと思ったんだよ。そこからまず自分がループを用意して、その上にバンドに演奏してもらって、それを録音したテープの上に音を重ねていくっていう手法を取ってみたんだ。完成するまでどんな曲になるのかわからない状態でバンドに演奏してもらった。そうしていく中で今回のアルバムが、徐々に形を成していったんだ。

―『Croak Dream』は、『Holy Waters』の頃よりもポスト・プロダクションの要素が強くなっているように感じました。その点はいかがでしょうか?

ジェイコブ:『Holy Waters』の頃は生々しいサウンドに惹かれてて、ドイツのCANとか、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスをよく聴いていた。その空間で鳴っている音をそのままの形で閉じ込めたようなサウンドというか。

一方で今回は、どこからが生演奏で、どこからがプロダクションなのか、聴いてると頭の中が混乱してくるようなアーティストに強く惹かれていた。ポーティスヘッド、マッシヴ・アタック、プロディジー、フューチャー・サウンド・オブ・ロンドン、ビョークなどね。そういうレコードを作るというアイデア自体にワクワクしたんだ。つまり、形式というものでどれだけ遊べるか?という。それこそルービックキューブをいじるみたいに、何度もガチャガチャ形を変えながら、しまいには自分でも何を作ってるのかわからないレベルにまで持っていく……それこそ最終的には、本人ですらどれが生演奏で、どれがプロダクションなのか判別つかなくなった時点で、見事ミッション達成というわけさ(笑)。

―『Croak Dream』を制作するにあたって、『antichamber』『extchamber』で得たものが役に立つ部分もあったのではないでしょうか。

ジェイコブ:『antichamber』と『extchamber』の音を作ってた時期に惹かれてたのが、とくに『extchamber』がそうなんだけど、リバース・エンジニアリング方式というか、この音がどう作られているのかを逆算して音を作るっていうアプローチを取っていた。普段は自分が色々実験していく中で偶然面白い音を発見するというパターンなんだけど、あの2作に関してはおそらく初めて、自分の頭の中に鳴ってる音を具体的に形にするにはどうしたらいいのかっていうアプローチから作った作品なんだよね。たとえば70年代の古いレコードの音を聴きながら「どうやって作ってんだろう?」ってことを解明していく、みたいな。それを自分なりにやってみたのが『antichamber』と『extchamber』で、それをしたことでプロダクションについてすごく多くの学びがあり……『Croak Dream』の制作に入った時も引き続き「次は何をリバース・エンジニアリング方式で作れるのか?」ってモードだったんだよね。昔の自分が聴いたレコードや何かの音を解明していった、あるいは自分の頭の中に鳴ってる音というか白昼夢を具現化するための実力や自信がついたってことなんだろうね。

―つまり、『Croak Dream』はこれまでの作品とは異なる独特な手法で作られたと。

ジェイコブ:うん、今回のアルバムはコラージュみたいな作り方をしたんだよね。バンドのみんなとスタジオにこもって、完璧なテイクが出るまでひたすら延々と録り続けることに全然気が向かなくて。もっと実験しながらアレンジを見つけていく形にしたくて。自分がやってたのは要するに、バンド・サウンドを丸ごとサンプラーに読み込んで、そこからサンプリングしていったようなもので、いわゆるコピー&ペースト方式だよね。ただまあ、実際のところ、長時間かけてテイクを録っていくプロセスを今回はとりたくなかったのと、 さっきも言ったように当時自分が聴いてた音楽が、ジャズを除いてはライブ感の強いものじゃなかったのもあった。ジャズはすごく聴いてたけど、それ以外はサンプラーとかループを軸にした音楽中心に聴いていて。そこから、セロハンテープで継ぎ接ぎするみたいな感じでプーマ・ブルーのレコードみたいなものを作っていくというアイデアに惹かれていったんだよね。

Photo by Liv Hamilton

―たとえば、リード曲の「Desire」はどうやって作られたのでしょう?

ジェイコブ:あれはホテルの部屋で作った曲なんだ。スマホを見てると気が滅入るから、最近はなるべく触らないようにしていて、本を読んだりカードをシャッフルしたりして退屈を紛らわせていた。その合間にギターを手に取って、バンド仲間のハーヴィーのためにコードを書き始めた。彼は通常の「4」とか「8」じゃなくて「3」のまとまりで動く進行が好きだから、それを試しているうちに自分でもワクワクしてきてね。録音機材もなかったから、結局はスマホを片手に録音することになったんだけど。

あとはギターの他に楽器もないし、録音手段もなかったから、手元にあったジャングルとかドラムンベースのブレイクビーツを元に曲を組み立てていくうちに、どこからともなく曲が降ってきたんだ。ほんの1秒前までこの世に存在しなかったはずの曲が、その夜のうちに丸々1曲できあがったんだ。そのあと最終段階としてスタジオに音を持ち込み、バンドに短い断片だけを聴かせて、それ以外は一切の手掛かりなしの状態でテクスチャーとかハーモニーを重ねてもらって、家に帰ってからそれらの音源をバラバラに解体し、最終的に曲の形に仕上げていくという流れだった。

―プロデューサーを務めたのは、『Holy Waters』と同じくサム・ペッツ=デイヴィスです。フランク・オーシャン『Blonde』やレディオヘッド、ザ・スマイルにも携わってきた方ですよね。そもそも彼と仕事をするようになったきっかけは何だったのでしょうか?

ジェイコブ:きっかけの1つ目は、バンド・サウンドを生き生きとした新鮮な形で録れる人を探してて、ちょうど彼が手がけたウォーペイントのアルバム(2022年作『Radiate Like This』)がまさに自分がイメージしてた通りで、そこから直接本人に会って『Holy Waters』をミックスしてくれないかって相談してみたんだよね。2つ目の理由としては、サムがすごくいい感じの人で、初めて会った瞬間から昔からの友人みたいに打ち解けることができたから。

今回の『Croak Dream』を作るときも、単純に「ああ、また会いたいなあ」っていう、自分の友達に再会するみたいな気持ちだったのもあるし、前回サムとの間で開拓した方向性をもう少し深堀りしてみたかったのもあった。つまり、バンドの音を少しだけいじって、スリリングな感じにする方法を探るという。ただ普通にライブ録音したっていう感じの音には、最近あまり興味がなくて、少しクセのあるサウンドを作りたい気分だったんだよね。

―ピーター・ガブリエル所有のReal World Studiosで録ったそうですね。近年多くの傑作が生まれている場所という認識ですが、ここを選んだ理由を教えてください。

ジェイコブ:まあ、ちょっと味気ない話になるんだけど、自分が何かを決める時の選択基準って、最終的にはいつも予算の範疇に収まるかどうかなんだよね(笑)。与えられた予算の範囲内で現実的な落としどころを探っていくという。そこからいくつかの候補が絞られた時点で、Real World Studiosに惹かれたんだよね。今回サムのリクエストでもあったオープンリール式テープレコーダーのテープマシンだとか、必要な機材も一通り揃っていたし。

それと、田舎にあるところにも好感を持った点だ。バンド仲間たちを都会の喧騒から離れたところに連れて行って、音楽だけに集中できる環境にしたいなと思って。休憩中も、羊とか小鳥とか小川とか、そういう景色しか目に入らないような環境でね。自分自身、自然との繋がりを大事にしてるところもあるし、音楽だけにちゃんとフォーカスできる場所を見つけられたらいいなと思っていたから。

Photo by Sarah Dattani Tucker

ダブ、ディアンジェロ、ジョン・フルシアンテから受け取ったもの

―本作では「Mister Lost」や「Jaded」など、ダブの要素を強く感じる楽曲が目立ちます。あなたがダブから受けた影響について教えてください。

ジェイコブ:そう、10代の頃からずっとダブに夢中でね。もともと父親がレゲエ好きで、その影響で自然とレゲエを聴くようになって、そこからダブに出会ったんだよね。その後、もう少し大人になってから70年代のダブにどハマりして、ちょうどUKでダブステップが盛り上がってきて、気づいたら完全に取り込まれていたという。あのどんどん暗闇に足を踏み入れていくような感覚が怖くもあり、同時になぜか心が落ち着くというか。少なくとも自分がよく聴いていたダブにはそういう感覚があって、あの感じがたまらなく好きなんだよね。音の空間とか余白をすごく感じさせるというか、ミニマルで、実験的で、長尺も厭わない大胆な姿勢にしろ、エフェクトを使って実験しているところにしろ、そうしたすべてに昔からすごく惹かれてて。

プーマ・ブルーでも昔からディレイ・ペダルを使ってみたりダブ的な要素を取り入れてはいたものの、年齢を重ねるにつれて、これまではちょっと遠慮しすぎてたかも?と思うようになり、そのブレーキを外して自分のクリエイティビティを自由に泳がせてみたらどうなるんだろう?と実験していったわけさ。だから、特定のサウンドを目指してたというよりも、先のことは考えずに作ってて、面白いと思う方向に流れていって、それをどうパッケージしていくかについては後から考えればいいや、みたいな感じ(笑)。というわけで、そこからダブだったり、単純に自分が影響を受けた音楽を取り入れていったという感じだね。

―好きなダブ・アルバムについて教えてもらえますか?

ジェイコブ:わあ、いい質問。ちょっと考えてもいいかな……昔からブリアルの『Untrue』が好きで。厳密にはダブではないけど、本当にすごく好きなアルバム。あとRhythm & Soundの『Trace』もすごく好きなんだよね。両方ともテクスチャーが豊かで、あの奥行きにしろ全体的な空気感にしろ、どこまでも深い闇に深く潜っていくような、ダークで果てしない虚無に吸い込まれていくような感覚がたまらなく好きなんだ。

―もう一つ印象的だったのはリズム面です。本作はバンド・サウンドが中心にありますが、ある時期からのレディオヘッドがそうだったように、エレクトロニック・ミュージックを通過していないと作れないサウンドだと思います。その点について、影響を受けた音楽はなにか思い浮かびますか?

ジェイコブ:それを言うなら、さっきも挙げたフューチャー・サウンド・オブ・ロンドンが大きいね。とくに『Dead Cities』ってアルバムがすごく好き。フォーテックもよく聴いてたな、ジャングルの名プロデューサーだと思う。あとはディス・ヒートとか。エレクトロニック・ミュージックではないんだけど、あの複雑なリズムとか、ちょっと不穏なエネルギーとか不協和音とか、今回のアルバムのところどころであの雰囲気を出していきたくて。これもエレクトロニック・ミュージックではないけど、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジも好きでよく聴いてた。とはいえ、今回のアルバムの2大影響源としては、フォーテックとフューチャー・サウンド・オブ・ロンドンになるかな。

―今言ったアーティストの影響は、たとえばニューアルバムの曲でいうと、どのあたりに反映されてそうですか?

ジェイコブ:フォーテックからの影響で言うと、ドラムブレイクの感じとか、曲の構造とか、アルバム全体のフリーなジャム・セッション的な雰囲気だね。たとえば、「Jaded」「Yearn Again」「Croak Dream」あたりに関しては、丸々インストだけで進行するセクションがあるんだけど、あの辺はジャングルとかダブにどっぷりハマっていた影響があからさまに出てるよね。普段よく自転車に乗ってるときにエレクトロニック・ミュージックを聴くことが多いんだけど、ただその空間に自分が存在しているみたいな、何も考えずに、ただそこに在るみたいなスペースに身を置くのが心地良くて。それから、ギターのトーンに関していえばクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジとかディス・ヒートのザラついた耳障りな感じも意識していた。というのも、プーマ・ブルーの音楽ってこれまでスムースなイメージで見られがちで、それはそれで光栄なんだけど、自分自身はもう少し大胆な音も好きだから(笑)、それで今回は思い切ってそっち方面にも舵を切ってみたわけさ。

―『Holy Waters』と比較して、本作ではあなたのボーカルの比重が減り、よりバンド・アンサンブルを重視したサウンドになっていると感じました。アンサンブル全体を際立たせるための歌い方をしているというか。そこは意図的でしょうか?

ジェイコブ:いや、意図的というよりはむしろ、プーマ・ブルーという表現において、声以外の部分にどんどん興味の中心が移っていったってことなんだと思う。最初の頃の、それこそ2015年くらいの初期のライブでは、ほぼ自分の声とギターだけで、当時は僕の声が音楽の半分くらいを占めていた。その頃のEP『Swum Baby EP』に入ってる「Untitled 2」なんて、完全にギターの弾き語りだし。当時は自分の声がプーマ・ブルーのサウンドにおいて重要な位置を占めていたけど、今では声もあくまでも楽器の一つであり、構成要素の一部としてとらえていて。そのへんのバランスを取っていった結果だろうね。

―「(Fool)」のグルーヴを聞いて、個人的にはディアンジェロを連想しました。彼が亡くなったとき、「彼のライブの細部をオタクみたいに必死に反芻しながら余韻に浸っていた」とInstagramに投稿していましたよね。この曲やアルバム全体、もしくはあなたの人生に与えたディアンジェロの影響について聞かせてください

ジェイコブ:いや、本当に……ディアンジェロって、僕らと同じような人間だったんだろうなあって。要するに有名になりたいから、賞賛されたいから音楽をやっていたわけじゃなくて、ただ純粋に音楽が好きで好きで愛しちゃってるがゆえに、どこまでもピュアな形で音楽とチャネリングすることができてた人なんだと思う。自分にとってのお手本であり、心から尊敬できる指針だよね。成功だの社会的地位だのフォロワー数だのどうでもいい、ただ純粋に音楽への愛だけを追いかけていっていいんだよっていう、それを自分の生き方を通して伝えていた。それが僕の生き方を考えるうえでもものすごく励みになった。

たしかに今回のアルバムの「(Fool)」では、自分がディアンジェロから受け取ったものがすごく共鳴しているのを感じる。あの曲のギターは、あえてビートよりも遅れる形で弾いていて。そこはディアンジェロからの影響だよなあって。ディアンジェロかJ・ディラか、あるいはその両方が元祖とされてるけど、あのちょっと気怠いダランとした感じというか。それが自分にとってはジャストというか……どう言えばいいのかわからないけど、自分の身体には一番心地よいリズムなんだ。正確にリズム通りに弾こうとすると、自分自身を偽ってる気持ちになるくらい(笑)。

―「Silently」のギターとグルーヴを聴いて、あなたがジョン・フルシアンテが好きだと話していたのを思い出しました。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのメロウな曲に通じるヴァイブがあると思います。この曲はどのように生まれたんですか?

ジェイコブ:そう、これが面白くて、ジョン・フルシアンテの昔の動画を見たのが最初のきっかけになってるんだけど。90年代くらいの映像だったかな。ジョンとアンソニー・キーディスがボートで、たしかヴェネツィアかアムステルダムだったと思うんだけど「Funky Monks」について話してるんだよね。ジョンの話だとギターのパートはアンソニーの案だそうで、あの♪バッパッパパパ、バッパッパパパってやつ。アンソニーはギターを弾けないけど、そのリズムが頭に思い浮かんでたって話で。

「Silently」でも、音楽なしでも自分を興奮させてくれるようなリズムがないかなあって考えてたときに、あの♪ブン、ププンっていうのを思いついて、それをループさせたらめちゃくちゃ気に入って。探してたリズムが見つかったところで、その上にコードを乗せていったんだけど、気がついたときにはもう曲ができてたという、たぶん1時間もかかってないと思う。どこか別の場所から自分を介して湧き出てきた、みたいな。ときどき本当に、宇宙かどこかから曲が降りてきたみたいな感じになることがあるんだけれど、この曲がまさしくそれ。そこに昔から大好きだった逆再生ギターを大量に投入して(笑)。子どもの頃にジミ・ヘンドリックスを聴いて以来、ずっとあのギターの音色に魅了されてきたから。ジョン・フルシアンテに関しては、レッド・ホット・チリ・ペッパーズでのギターも、彼のソロ作も自分にとってはすごく大事な作品だから、そこを感じ取ってもらえてすごく嬉しいよ。

死を見つめて手にした真の自由

―本作はMVもユニークですよね。「Desire」「Hush」はスタジオ・ライブ撮影、「Croak Dream」はビデオ・ゲーム風、ひとりの役者がセルフ撮影し続けているような「Mister Lost」と、様々なテイストの映像を採用しています。それぞれどういった発想から映像が生まれたのでしょうか。あなた自身もMVの監督を務め、エディットにも携わるなど映像表現も重視していますが、自分の音楽に映像をつけることの意義についてどのように考えていますか?

ジェイコブ:ああ、良い質問、昔からMVが好きだったんだ。何しろ、子どもの頃、レッド・ホット・チリ・ペッパーズとか聴いて育った世代だからね。「Cant Stop」でメンバーが自分の身体を使って変なオブジェを作ってるのとか大好きだったし、当時のMVってものすごくクリエイティヴだったなって思うんだよね。ホワイト・ストライプスのMVも毎回よかったし。そういうのもあって、MVも表現の一部として捉えてるし、サウンドだけじゃなくて視覚的にもどう響くかもものすごく大事にしてるんだ。もともと映画も大好きだから、最終的には自分の中では同じところで繋がってるというか。

今回のMVに関しては、ノスタルジーを呼び起こしたかったというか。それこそ自分が子どもだった頃、まだ赤ちゃんだった頃の、その時代に流行っていたレイヴ・カルチャーや初代プレイステーションとか、自分がリアルタイムでは経験できなかった世界に想いを馳せていった。「Desire」のビデオは90年代UKドラムンベースのMVのイメージで、「Croak Dream」は(レッチリの)「Californication」のMVが大きい。あの初期プレイステーションのヴィジュアルが入った感じ。子どもの頃、家に中古のプレイステーション2があってね。おそらく当時、自分の家にあった一番高価な品だったんじゃないかな(笑)。あの時代のグラフィックって、今みたいに洗練されてないから逆にアートを感じるというか、想像力を働かせる余地があるんだよね。その辺のノスタルジーな感覚を呼び起こしつつ、遊び心も交えながら、曲本来の持ってるダークな側面を描いていきたかったんだ。

―今作の歌詞は「命の終わり方がすでに決定しているとしたら、それが自分の意志や選択にどのような影響を与えるのか」というのがひとつのテーマとなっているそうですね。なぜそういったテーマに関心を抱くようになったのでしょうか。決定論と自由意志の問題は、SFでもたびたびテーマになってきますよね。

ジェイコブ:いや、運命論的なものよりも、人生がいかに儚いものであるかを自覚してるというほうに近いかな。普段生活していると、生きていることが当たり前になって、自分が生きているということすら意識せず、惰性で日々の生活を送るだけになってしまう。もちろん、自分から意識して日々の生活を大切にして、一つ一つの瞬間を味わいながら人生というバラの香りを楽しむという、そういう生き方を自覚的に選択していくこともできる。ただ何て言うか、ここ5年くらいで自分のまわりでたくさんの死や悲しみを経験していて……今回のアルバムを作ってる間も死について考えずにはいられなかったというか。

その上で、もっと楽しく生きたいなって強く思ったわけだよね。自分が死ぬと知っていたら、一体どういう生き方を自分は選ぶんだろうって。そういう意味では、たしかに運命論的でもある。自分が死ぬとわかってたらどうするか? もし自分の最期を知っていたら、人は自分を押し殺すのをやめて、もっと自由になれるんじゃないかな。もちろん、他人を傷つけてでも何でも自分の好き勝手にやっていいという自由ではなくて。もっと自分自身を生きるという自由だよね。 昔からずっとやりたいと思っててやらなかったことをやる自由というか。実際そういう考えがあったからこそ、今回のアルバムでももっと大胆に、もっと奇妙な方向に振り切れてもいいじゃないかと思えたんだ。人にどう思われるかなんて一切気にすることなくね。さんざん遊び尽くして、実験し尽くして、相当ヘンなものになったなって思っても、後になって振り返ってみたら、まだまだ全然足りないんじゃないかって思うこともある(笑)。それで次回はもっとクレイジーなことをしてやろうと毎回心が奮い立つわけさ。

今回、しみじみと深く噛みしめていたこととして、これがもし最後のプーマ・ブルーのアルバムになるとしたら?という想いがあったんだ。その前提のもとに音楽に向き合うこと自体が大きな喜びであったというか。もしこれが最後のアルバムになるとしたら、自分としてはやっぱり最後に一発ドカンとかましたいわけでね。そういう心意気だよね。

―本作のラストを飾る「Yearn Again」で、〈僕は再び渇望する理由を探すだろう〉と歌っているのは、まさに今言ったような心情が反映されてたりするんでしょうか?

ジェイコブ:もう、まさにそう。いつだってその先に何かあるし、何かしら自分に欠けてると感じずにはいられない。それを切ない、苦しいと捉えることもできるけど、自分は決してそうではないという考え方で。たとえそれが痛みや悲しみだとしても、何も感じないよりはずっといいから。

―リリースから少し時間が経ちましたが、本作を振り返ってどのように感じますか?

ジェイコブ:いや、ここがまたアーティストという生き物の厄介なところで、アルバムが完成した時点で自分の気持ちはとっくの昔に次に進んでしまっていて、今ではもう別のことにときめいているし、今回のアルバムよりさらに変な音楽を夢想している(笑)。もちろん、このあと始まるツアーに関しては楽しみにしてるけどね。アルバムが完成したときよりもほんの少し成長した自分が、一体どういう感じでこのアルバムを鳴らすのかってことにはすごく興味があるよ。『Croak Dream』を世に送り出せたことはすごく嬉しいんだけど、同時に「この音楽をどこまで連れていけるんだろう?」っていうワクワク感のほうが先にきてる感じかな。

Photo by Liv Hamilton

―前回の来日公演も素晴らしかったですが、今回のライブはどのようなものになりそうですか?

ジェイコブ:今回はメンバーがひとり増えて5人編成になるんだ。それもあって、よりエレクトロニックな要素だったり、即興やジャムっぽい展開が増えると思う。それと全体的によりヘヴィ寄りになっていくはず。とはいえ、昔の曲を演奏するのも大好きだから、それもやることになるよ。だから「どんな感じ?」って聞かれたら、それは実際にライブに来てもらって確かめてもらうしかないね(笑)。

―最後にひとつ質問させてください。あなたは以前、インタビューで映画音楽を手がけてみたいと言っていました。最近はインディー・ミュージシャンが映画音楽を手掛けることは少なくありませんが、担当してみたい映画作家がいれば教えてください。

ジェイコブ:そうだなあ、昔からジム・ジャームッシュの大ファンなんだ。あと、ダーレン・アロノフスキーの作品を手掛けることができたら間違いなく面白そう。それに女性の監督もいいんじゃないかな、最近はどんどん新しい女性監督が出てきてるし。とにかく、どんな監督だろうと自分に音楽を担当させることに興味を持ってくれるなら凄く光栄だし、その作品の一部に関わることができたら最高だよね。

Photo by Brooks Travers

PUMA BLUE JAPAN TOUR 2026

2026年3月31日(火)大阪・梅田CLUB QUATTRO

2026年4月1日(水)東京・ Zepp Shinjuku (TOKYO)

OPEN 18:00 START 19:00

スタンディング 前売り:¥7,800

詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4582

プーマ・ブルー

『Croak Dream』

発売中

日本盤:解説/歌詞/対訳付、ボーナストラック2曲収録

詳細:https://bignothing.net/pumablue.html