ガクラボメンバーの加納です。

2026216日、日本貿易会で開催された「商社の今」を知る商社ハンドブック改訂版刊行記念イベントに参加してきました。会場はすでに満員で、大学生がたくさん参加していました。

私は、これまで商社には興味を持っていたものの、「実際どんな仕事をしているのか」は正直よく分かっていませんでした。理系出身ということもあり、「そもそも自分の進路として考えていいのだろうか?」という迷いもありました。

ですが、今回、登壇者の方々のお話を直接聞いて、そのイメージが大きく変わりました。商社の仕事は海外でビジネスをする会社という漠然としたイメージではなく、現地の課題や暮らしにしっかり向き合いながら、信頼を基盤に価値をつくっていく営みなのだと実感しました。

私にとって商社は、「よく知らない業界」から「将来の選択肢として真剣に向き合いたい存在」へと変わりました。

商社の仕事とは? 商社の「今」をやさしく解説!

一般社団法人日本貿易協会の並里さん

第一部では、一般社団法人日本貿易会 調査グループ長の並里裕司さんが、改訂された「商社ハンドブック」をもとに、商社の特徴について分かりやすく整理してくれました。

商社の仕事は大きく3つに分かれるとのことです。 

トレーディング:企業と顧客をつなぎ、モノ・サービスの売買を生み出す
事業投資:事業の立ち上げから拡大まで、グループ会社や投資先の経営を支援
リスクマネジメント・市場開拓:商取引や投資の経験を生かして新たな市場を開く

これらの機能は最初からあったわけではなく、戦後から現代まで、商社が明るい時代も厳しい時代も経験するなかで積み上げてきたものだそうです。時代や社会のニーズを見ながら柔軟に役割を広げてきた結果、今の幅広い事業領域が形づくられたといいます。

中でも 「大変な時代があったからこそ、役割を変化させながら適応してきた」 という言葉が強く心に残りました。

現役商社パーソンが語る「成功」と「苦労」
見えてきたグローバルサウスの現場

第二部では、住友商事・豊田通商・三井物産でグローバルサウスを担当されている商社パーソンの方々が、現地での成功体験や苦労をディスカッション形式で話してくださいました。

左から増子さん、倭さん、酒井さん

【イベント登壇者】

・東南アジア:住友商事株式会社 海外ヘルスケアユニット事業開発第一チーム
チームリーダー 増子 雄介氏

 ・アフリカ:豊田通商株式会社  アフリカ本部アフリカ企画部経営管理グループ 
課長補  倭 浩司氏

・中南米:三井物産株式会社 鉄鉱石部ブラジル事業室 
室長補佐 酒井 伸彦氏

 グローバルサウスとは?

改訂版「商社ハンドブック」から引用

中南米、アフリカ、中東、東南アジア、南アジア、中央アジアなどを指す言葉です。 商社ハンドブックでは、2050年にはこれらの国・地域が世界経済の約3割、人口が世界の約7割に達すると紹介されており、エネルギー、脱炭素、医療・衛生など、SDGsに直結する領域の成長が期待されています。

テーマ1「グローバルサウスにおける成功体験は?」

住友商事 増子さん

「グローバルサウスでは、一足飛びの成功はありません。重要なのは最適化です」。立ち上げから5〜6年、試行錯誤と改善を重ねながら、機能配置やネットワークを積み上げてきた経験を紹介。「地道な最適化の継続こそが商社の価値につながる」と語りました。

豊田通商 倭さん

「商社で働く面白さは変化に乗ること」。原油トレーディングからアフリカ本部への異動という大きな転機を振り返り、「自分ではコントロールできない環境変化の中で、新しい挑戦が成長につながった」と語りました。予測不能な世界での適応力の重要性が印象的でした。

三井物産 酒井さん

「商社らしい成功とは、長期で価値を生み続ける事業」。1960年代から続く海外大型事業への関与を例に挙げ、「重要なのは、長い時間の中で変化する市場環境や求められる役割、収益構造に柔軟に対応してきた点にある」と説明。商社ビジネスのスケールと時間軸の長さを感じさせるコメントでした。

テーマ2「グローバルサウスで苦労したことは?」

住友商事 増子さん

「海外では日本の常識が通用しない場面が多くあります」。宗教や生活習慣の違いへの対応を例に挙げ、現地での細やかな配慮の重要性を説明。「ラマダン期間中は人前で飲食を控えるなど、小さな行動の積み重ねが信頼関係を築く」と語り、異文化理解の難しさを共有しました。

豊田通商 倭さん

「国際情勢の変化は、時にキャリアそのものを揺さぶります」。イランでのビジネス機会拡大から一転、制裁再強化で事業停止となった経験を振り返りました。「努力ではどうにもならない変化もある」。その中で新領域へ踏み出した苦労と、「変化を受け入れる覚悟」の必要性を語りました。

三井物産 酒井さん

「海外では人間関係や安全面での苦労も避けられません」。中南米での経験を例に、文化的背景による価値観の違いや、事故・治安リスクへの対応について言及。「日本とは異なる環境で事業を継続する難しさ」を語り、グローバルビジネスの現実的な側面を伝えました。

Q&Aセッション

会場の学生からは、登壇者に向けて次々と質問が投げかけられました。商社のリアルに迫る問いの中から、印象的だったものをいくつか紹介します。

 Q1.海外では商社をどう説明している?

酒井さんは「海外投資家の注目が高まっており、海外でも “Japanese Trading Company” への理解は深まりつつある。日本ならではのビジネスモデルを丁寧に共有しながら理解を得ていると語りました。

倭さんは「事業領域の転換が起きても、社員が新たなフィールドで活躍できる点は日本企業らしい特徴」と補足しました。

Q2.“ふわっとしたアイデア”はどう事業になる?

学生さんからの、新規事業創出に関する問いも投げかけられました。

増子さんは「最初から完成形が見えていることはほとんどない」と語り、仮説と検証を繰り返すプロセスの重要性を強調。倭さんは「変化の中で試してみる柔軟さが必要」と述べ、想定外の展開も前向きに捉える姿勢を紹介しました。酒井さんは「自分が信じる将来像をしっかりと描き、データで補足しながら丁寧に合意形成を進めることが重要」と説明しました。

Q3.ライバル同士でも協力することはある?

商社間での関係性に関する質問も寄せられました。

登壇者からは、海外駐在地での実例が紹介されました。倭さんは「閉鎖的な市場や特殊な地域では、情報交換や相互支援が不可欠になる」とコメント。酒井さんも「競合する領域では一定の線を引きつつも、それぞれの強みを持ち寄り、パートナーとして協力することはあり得る」と語り、グローバルの現場ならではの実情を明かしました。

QAセッションでは、業界関係者の社会人だけでなく、大学生から商社の業態や業務内容、働き方といった業界のリアルに迫る質問が次々と投げかけられました。登壇者は実体験を交えて丁寧に回答。実務者だからこそ語れるリアルが共有される場となり、大いに盛り上がりました。

取材を終えて

今回のイベントを取材し、商社の仕事は単なる「モノを売る仕事」ではなく、時代や社会の変化に応じて役割そのものを柔軟に変化させてきた業界であると感じました。

第一部では、商社がトレーディングに加え、事業投資や市場開拓へと機能を拡張してきた歴史が紹介されました。環境変化を受け入れながら進化を続けてきた姿勢は非常に印象的でした。

第二部では、グローバルサウスという成長市場における可能性が語られました。人口増加や経済発展を背景に、エネルギー、インフラ、ヘルスケアなど幅広い分野で商社が果たす役割の大きさを実感しました。

また、登壇者の話から強く伝わってきたのは、「最後はヒトとヒトが仕事をする」という点です。変化を恐れず挑戦すること。 そして、人との信頼を大切にすること。

それこそが商社の仕事の核であり、今回のイベントを通じて強く心に残った学びでした。


取材・文:加納裕也(ガクラボメンバー
編集:マイナビ学生の窓口編集部
取材協力:一般社団法人 日本貿易会  https://www.jftc.or.jp/