コンタクトレンズを使っている人も、そうでない人も「SEED(シード)」という名前を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。そのブランド名を冠したコンタクトレンズを製造しているのが、シードです。そんな同社が、埼玉県鴻巣(こうのす)市にある研究所の一角に、新しい製造棟を建てました。2026年4月の本格稼働を前に、その施設内に誕生した「福利厚生エリア」が、遊び心満載だと聞きつけ、さっそく現地へ向かってみました。
コンタクトレンズを作り続けて65年
シードは、1951年に創業した国内コンタクトレンズメーカーのパイオニアです。1951年にコンタクトレンズの研究を開始し、1972年には国内で初となるソフトコンタクトレンズを発売しました。
その製造拠点の1つが、埼玉県鴻巣市にあるシード鴻巣研究所です。都心から少し離れた静かな住宅地の中に広がる工場では、1dayのソフトコンタクトレンズからハードコンタクトレンズまで、9,600品目を超えるコンタクトレンズの生産に対応しています。
今回注目したのは、そこに新設された「4号棟」です。省人化や生産効率の向上を目的とした設備が整えられているだけでなく、「働く人が気持ちよく仕事ができる環境づくり」にもこだわりが詰め込まれています。その象徴が、4号棟内に新たに設けられた「福利厚生エリア」です。
「遊び心」が全開な、注目のスポットをひとめぐり
では実際、4号棟内にはどのような空間が広がっているのでしょうか。福利厚生エリアの見どころを、1つずつご紹介していきます。
■オフィスエリア:床には「SEED」の文字が!
1階のオフィスエリアに踏み込んでまず目を引くのが、床のカーペットです。よく見ると、そこには黄緑色で「SEED」の文字がさりげなくデザインされています。
パステルカラーを基調とした落ち着いた雰囲気でまとめつつ、業務用のパーソナルスペースもしっかり確保。遊び心と居心地のよさが、絶妙なバランスで共存している空間です。
■ラウンジ:清潔さと居心地にこだわった癒しの空間
2階にある従業員専用のラウンジは、開放感のある癒しの空間。同僚と話しながらリフレッシュしたい人にも、1人でゆっくり休みたい人にも過ごしやすい空間を意識したそうです。
そのため、ラウンジ内には1人用のボックス席も完備されていました。
このラウンジで特にこだわられていたのが「清潔さ」です。椅子の素材1つとっても、汚れてもすぐに拭き取れる素材を選ぶなど、いつでも清潔で快適に過ごせるよう工夫されていました。椅子やその素材は、担当社員が実物を見て、自分たちで「これがいい!」と選んだ物です。
また、休憩時間に「ゆったり1人になれる場所がほしい」という従業員の声に応え、個室の仮眠スペースが用意されているのもこのラウンジの特徴です。
仮眠スペースはそれぞれ仕切られているため、人目を気にせずに横になれる、贅沢なひとときが過ごせます。
■カフェテリア:24時間、みんながご飯を美味しく食べられる場を
働く人にとって、「仕事中の食事」は何よりも大切な時間です。鴻巣研究所の周辺は住宅地ということもあり、気軽に外へ食事に出ることが難しい環境です。だからこそ、誰もがリラックスして食事や一息つけるようにという思いで、このカフェテリアは設計されました。
鴻巣研究所は、24時間稼働しているため、昼夜問わず働く人がいます。このカフェテリアでは、夜勤の従業員も昼間と変わらず同じメニューが食べられるよう配慮されています。時間帯によってメニューが減ったり、簡素になったりすることはありません。
「ご飯がおいしく食べられる場所があることが、仕事へのモチベーションにもつながる」——鴻巣総務部 新藤部長のこの言葉が、空間づくりへの思いをよく表しています。
また、製造施設から離れてパソコン作業をしたい人や打ち合わせをしたい人に向けたスペースも備えています。
壁に描かれている絵は、ブランド名「SEED=種」をモチーフにしたデザインです。こんなところにも遊び心が隠れていました。
■階段やトイレのアイコン:コンタクト×視力検査で遊ぶ
階段には、コンタクトレンズと視力検査表をかけ合わせたオリジナルのアイコンがあります。
トイレのサインにも、コンタクトレンズをモチーフにした丸いアクリルが使われています。細部までぬかりない遊び心です。
何気なく移動する動線のなかにも、思わずくすりと笑えるような「シードらしさ」がちりばめられていました。
■トイレ:フロアごとに異なる自社製品カラーをイメージしたタイル
トイレの外観タイルには、コンタクトレンズを模した丸いタイルが配置されています。このカラーリングはフロアごとに異なり、シードの主力製品であるPureシリーズを表現しているというこだわりっぷり。
トイレに行くたびに「あ、このフロアは何色だっけ?」と思わず確認したくなる、遊び心あふれる演出です。
そもそも、なぜ「福利厚生エリア」が生まれたのか?
この福利厚生エリアが生まれた背景には、シードが抱えていたリアルな課題がありました。これまで鴻巣研究所にも食堂や休憩室など、簡易休憩スペースはいくつか設置されていましたが、働いている人数に対して、使い勝手が十分とはいえない状況だったそうです。従業員アンケートでも「休める場所がほしい」という声が多く寄せられていたと言います。
さらに、工場内には関連企業や取引先関係者など、外部の人が訪れる機会も多く、「休んでいても人の目が気になる」と感じる従業員もいたそうです。
施設づくりの主役は、現場で働く従業員の声だった
これだけ細部にこだわった空間が生まれた背景には、現場で働く従業員の声を丁寧に拾い上げたプロセスがあります。定例会を設け、鴻巣研究所で働く人々へのアンケートやヒアリングを継続的に実施しました。
「仮眠が取れる場所がほしい」という声を受けて仮眠スペースを設けるなど、それまでは存在しなかった要素も積極的に取り入れました。「1人でゆっくり食べたい」「にぎやかな雰囲気も欲しい」など相反する意見も、座席数やレイアウトに丁寧に反映されています。
トップダウンで決めた施設ではなく、「働く人が本当に使いたいと思える場所」を目指して積み上げられてきた空間——それがこの福利厚生エリアの本質と言えるでしょう。
見えないところにこそ、会社の本気が宿る
4号棟は2026年4月以降に本格稼働の予定です。残念ながら工場の一般公開は行っていませんが、埼玉県が主催するイベントなどで訪問できるチャンスもあるとのこと。もしそんな機会があれば、ぜひ足を運んでみてください。
床に刻まれた「SEED」の文字、フロアごとに色が変わるトイレのタイル、階段のアイコン——。施設のあちこちに散りばめられた遊び心は、「働く場所も、楽しくあっていい」というシードのメッセージのように感じられました。従業員の声をかたちにした仮眠スペースやカフェテリアと併せて、ここで働く人たちへの思いやりが、さりげなく、でも確かに伝わってくる空間でした。
