「こんなに頑張っているのに、なぜか軽く扱われてしまう」「頼まれると断れず、いつも自分ばかり我慢してしまう」――そんな経験はありませんか。こうした状態は、いわゆる自己犠牲タイプの特徴のひとつとされます。

精神科医・産業医の奥田弘美氏の著書『それ、すべて過緊張です。』(フォレスト出版)では、自己犠牲タイプを下記のように分類しています。

とにかく人の顔色を読んでしまい自分を押し殺してしまう傾向が強い人。嫌な仕事や気の進まない依頼でもNOと言えず、ついついOKしてしまうため、内面にストレスを溜めやすい。

自己犠牲タイプの人は、無理を重ねて疲れてしまったり、相手から「都合のいい人」と軽く見られてしまったりすることも。

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本記事では、同書をもとに、Noと言えない自己犠牲タイプの人が陥りがちなこととその対処法を紹介します。

NOと言えない自己犠牲タイプ

自分の都合もきちんと伝えて健全なギブ&テイクを

職場やプライベートの人間関係で、「いい人」「思いやりのある人」「優しい人」と評されている人の多くが、圧倒的にこのタイプの要素を持ってます。

本人も「いい人」「優しく思いやりのある人」であることを誇りとして生きているため、常に相手の顔色、周りの空気を読んで、他人の意向や要望に応えようと頑張り続けます。本当は嫌だったり気がのらなかったりしても、なかなかNOと言えない人が多く、ついつい自分を押し殺して相手の要望を受け入れてしまいストレスを溜めこみがちに。自分の気持ちを抑制しすぎて葛藤がひどくなってきたり、周りの要求に応え続けて疲弊してきたりすると、過緊張症状が発生します。

このタイプの人には、意識してギブ&テイクの人間関係を心がけることをおすすめします。

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相手の要求にひとつ応えてあげたら、自分の要求もひとつ相手に伝えるように意識するのです。要求というのは、「〇〇してあげる代わりに〇〇してほしい」という代替行為の要求ではなく、「自分の気持ちやお願いを伝える」と、考えてください。

例えば上司やクライアントから急な追加仕事を頼まれてOKするのであれば、「この仕事はお引き受けしますが、他にも仕事を抱えているため、これ以上は現時点では難しいです」などと、きちんと自分の都合も伝えるようにする。

自分が何かをしようと計画していた時間に、家族から用事を頼まれて対応しなければならなくなったときには、「これから〇〇をしようと思っていたけど、先にそっちをするね。代わりに〇時からすることにするから、そのときは用事を言わないでね」ときちんと伝えておく。

相手の要求にいつもイエスと答え続けるだけでは、「気軽に頼みやすい都合のいい人」になってしまう可能性があります。他者の気持ちばかり優先していると、「自分の意志がない人」「自分の自由になる人」と軽んじられてしまう恐れもあります。

このタイプの要素が強い人に、適正なギブ&テイクを心がけましょうとアドバイスすると、「私は損得勘定して他人に親切にしているわけではない」などと聖人君子のような面持ちで、強い拒絶反応を示す人にときどき出会います。

しかし「健全なギブ&テイク」ができていない関係性は遅かれ早かれいずれ破綻していきます。片方が我慢を強いられる人間関係は、エネルギーバランスが悪すぎて長続きしないのです。

このタイプの人がメンタル不調になり、医師である私のもとに相談に来られることがよくあります。面談の際に、このタイプの人が異口同音に訴えるのが、「私がいつも無理して対応してあげてきたのに、相手は何もわかっていない」「私の献身に対して、当たり前のように思っている。まったく感謝(評価)してくれない」という趣旨の不満です。

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しかしよくよく話を聞いてみると、その人が「自分を犠牲にして相手の要望をかなえている」「やりたくないのに、無理してやっている」ことを、相手には何ひとつきちんと伝えていないのです。

どんなに親しい関係であっても相手はエスパーではないのですから、きちんと気持ちを言葉にして伝えなければ、正確に理解できません。

あなたが何も言わずにOKを出したことに対して、相手はもしかしたら「負担なく受けてくれている」「喜んでやってくれている」と勘違いしていた可能性もあります。「健全なギブ&テイク」とは、何も「あなたが〇〇してくれないなら、私も〇〇しないからね」というオールオアナッシングの商取引ではありません。きちんと気持ちのキャッチボールができる関係性が、「健全なギブ&テイク」なのです。

Iʼm OK, you are OK.

自分の気持ちをきちんと伝えることが苦手な人は、「アサーション」(またはアサーティブ)という分野の実用書やビジネス書を読んで勉強されてみることをおすすめします。アサーションは、アメリカで提唱されたコミュニケーションスキルのひとつで、「相手も自分も大切にする」ことを重視したコミュニケーション法です。

「あなたはOKだが、私OKではない」「私はOKだが、あなたはOKではない」といった歪いびつな人間関係を見直し、「あなたもOK、私もOK」のバランスのいい人間関係を築いていくための対人関係を目指す方法です(本書では紙幅の関係から具体的な説明は割愛します)。アサーションはすべてのタイプの人に有用な対人関係術であり、特にこのタイプの人にとっては大きなメリットがあると思います。

「NOと言えない自己犠牲タイプ」の人は、言い換えると「相手の喜ぶ顔をみると嬉しい」「感謝されるのが嬉しい」という共感性や協調性の高さが抜きんでています。

自分自身を大切にする習慣が身につきネガティブ感情やストレスを溜めこまないようになれば、過緊張になりにくくなるだけでなく、よりハッピーな人間関係が築けるはずです。


人からお願いされると、断りにくくつい「自分が我慢すればいい」と思ってしまいがちですが、それが続くと苦しくなってきてしまいます。そればかりか、自分の価値を下げることにも繋がりかねません。

ぜひ、自己犠牲のクセから抜け出すためにも「健全なギブ&テイク」を試してみてください。

それ、すべて過緊張です。

1,925円(2026/3/4時点)
著者:奥田 弘美
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