第11期叡王戦(主催:株式会社不二家)は、伊藤匠叡王への挑戦権を争う本戦トーナメントが大詰め。3月5日(木)には準決勝の藤井聡太竜王・名人―永瀬拓矢九段戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり力戦から抜け出した永瀬九段が107手で勝利。充実の内容で挑戦者決定戦へと駒を進めています。
今後を占う大一番
現在王将戦七番勝負でタイトルを争っている真っ只中の両者。2月には2局の対戦がありましたがいずれも永瀬九段が制しており、タイトル奪取に向け勢いを増しています。振り駒が行われた本局は後手となった藤井竜王・名人が趣向を披露。△3三金型の角換わりから早繰り銀に組んだのは主流となっている角換わり腰掛け銀を外す狙いで、早い段階から定跡を外れじっくりとした構想力勝負が始まりました。
銀冠には組んだものの先手に飛車先の歩交換を許した藤井竜王・名人。平凡に指していると作戦負けと見て積極的な銀交換から打開を図りますが、この日は永瀬九段の冷静な対応が光りました。丁寧な銀打ちで後手の角を僻地に追いやっておいたのち、ジッと敵陣深くに角を打ち込んだのが損のない利かし。ここで守勢の藤井竜王・名人に疑問手が出ます。
取らせて働く角
手番を握るべく飛車で角取りをかけたのは自然な一手ですが、ここで永瀬九段が披露した鋭い踏み込みが悪手の証明に。攻めの要に思われた角を見捨てて銀との振り替わりに持ち込んだのは、藤井玉の囲いを乱しつつ、数手後の飛車角両取りを見越した構想でした。駒の損得が元に戻れば双方の玉形差がそのまま形勢差となって現れます。以降は永瀬九段の華麗な収束を見るばかりとなりました。
終局時刻は16時18分、最後は自玉の詰みを認めた藤井竜王・名人が投了。形作りすら許さない一方的な内容での永瀬九段の快勝譜となりました。敗れた藤井竜王・名人は「(先手の角打ちの)組み合わせを軽視した」と反省を口にしました。勝った永瀬九段は対藤井竜王・名人戦で直近3連勝と絶好調。2019年以来となる叡王戦五番勝負登場を懸けて斎藤慎太郎八段と対戦します。
水留啓(将棋情報局)
