エレガントさとイタリアンラグジュアリィの融合|マセラティ GT2 ストラダーレとMCプーラ

1月下旬、澄み渡る青空のもと、マセラティのメディア向け試乗会が袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われた。最高の楽しみはフラッグシップモデルであるGT2 ストラダーレと、昨年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでデビューを飾ったMCプーラ(PURA)をサーキットでテストできることである。しかもMC20の後継であるMCプーラは日本初披露となる。今年2026年は、象徴的なトリデント・ロゴを初めて掲げた名車ティーポ26がタルガフローリオに参戦して100年目に当たる。つまりマセラティにとってCorseおよびTridentの100周年という記念すべきタイミングと言えるのだ。

【画像】マセラティGT2 ストラダーレ、MCプーラ、グラントゥ―リズモ、グランカブリオに一気乗り(写真18点)

まずは簡単な試乗方法の確認を受け、予定より少し早くコース走行に入る。条件はヘルメットおよびグローブ装着無しのフリー走行ということで、速度としては約120km/h程度のドライビングスピードまでという指示。それでも走行枠は撮影も含めて1台あたり60分。全長2,436mものコースにわずか2台しか走らないので、安全マージンを取りながら様々なテストが可能だ。

まずはMC PURA Cieloから。MC20の進化系であるPURA(プーラ)とはイタリア語で「純粋な」という意味であり、マセラティとしては「飾らない本質」と定義している。つまり新しい原理やブランドとしての純粋なエッセンスを際立たせ、無垢なデザインとクラフトマンシップを有する斬新なモデルとしてこの車名が与えられている。

エクステリアを一見するだけではMC20との違いは分かりづらいが、ディテールには多くのデザイン変更が施されている。まずフロントシェープ。グリルからリップに至るまで各部のデザインをシャープに変更。ヘッドライトの意匠もより縦長になり、すっきりとした印象を与えてくれる。フロント・サイドからリアに掛けてのアンダーボディはすべて艶のあるグロス加工が採用されている。インテリアはすべてアルカンターラがおごられており、ミドシップスポーツカーとしてのパフォーマンスを大切にしながら、マセラティらしい真のラグジュアリィ空間を構築しているのだ。

今回用意されたPURAはルーフが開閉可能なCieloである。Cieloはイタリア語の「空」を意味するが、透過率を調整できるガラスルーフが標準となっており、閉じた状態でも青空を楽しむことができる。50km/hまで可動するルーフの開閉時間は12secと、他ライバル車と比べて数秒短い。

まずは数周、ルーフを閉じた状態で走行を重ねる。以前から感じていることだが、この車のシャシー剛性は非常に優れている。ゼブラに乗り上げたりコーナーでの荷重移動をわざと急いだりしても、ミシリとも言わないしっかり感はまるでクローズドボディと見紛うほどだ。またトップとボトムをフラットにしたステアリングホイールの採用で、より広い視界が確保できることは多くのドライバーにとって大きなメリットである。これによりハンドルを握る位置も10時10分から9時15分に近くなり、切り返しが非常にスムーズになっている。

Cieloの本質を味わうべくルーフを開けてみると、これが実に心地良い。キャビンに流れ込む風は適度にコントロールされており、走行中もパッセンジャーとは普通に会話をすることができる。100%マセラティが開発した新世代パワーユニット、ネットゥーノ(Nettuno海の神)エンジン。そのサウンドが背後から優しく耳に届く。NAに近いレスポンスをもつV6ツインターボ。最大出力は630馬力もあるが、それはいつでも楽しめる余裕として温存しておくのがMC PURAらしい走り方なのかもしれない。また多くのカラーパレットから内外装色を自由に選べるのも、おしゃれなマセラティらしく大きな魅力である。

過激ながら理知的なマセラティの矜持

GT2ストラダーレに乗り換える。1914年創業にちなんで世界914台の限定車だ。PURAと比べるとスペック的には最高出力10馬力増に留まるが、バネ下を中心にした59㎏もの軽量化が走りを大きく変えてくれる。カーボン製バケットシートに座り込む瞬間、アクセルを踏み込みたくなる気持ちを抑えられなくなりそうになった。そこについては以前のテストを思い起こすことにしよう。

昨年スペインでこの車に試乗する機会に恵まれた。選ばれたのは南部のリゾート地マルベーリャをスタートして、山合の町ロンダ近郊にあるプライベートサーキット、アスカリ・クラブまでのコース。インプレッションとしての乗り心地はソリッドで硬め。ただしカーボンボディのおかげで突き上げ感を適度にいなしつつ、足回りの剛性をしっかりと感じることができた。路面が多少粗れていてもボディの一体感は一切崩れず、逆にアウトピスタ走行での乗り心地は快適とさえ呼べるレベルにあった。

サーキットでの印象は「安定」の一言に尽きる。GT2ストラダーレ専用パーツのよりダウンフォースは最大でフロント95㎏、リア260㎏まで追求されている。いかにも効きそうなスワンネックの大きなリアスポイラーのおかげでもある。

4モードから選べるパフォーマンスパッケージ、セラミックブレーキの鋭い制動力、4点式シートベルトなどがドライバーのレーシングスピリットを大きく駆り立ててくれるが、一方でレーシングスーツやヘルメットをすべて収納できるカーゴスペースやオプションのソナスファベール製オーディオシステムなど、ツーリングカーとしての一面も大事にするあたりが心憎い。普段使いから本格的モータースポーツまでカバーできる。正にジェントルマンドライバーのための優れた車と言えるのが、このGT2ストラダーレだ。

グランドツーリングこそがマセラティらしさ

サーキット走行とブリーフィングの間に、マセラティジャパンが用意してくれたモデルにも試乗できた。乗り比べたのは75周年のマセラティグラントゥ―リズモとグランカブリオである。1台はグラントゥ―リズモ75th Anniversary Edition。マセラティからグランドツアラーがリリースされてから75周年となる歴史を称えるべくラインナップされた特別限定車である。先進的であったマセラティの愛好家は、いつの時代もレーシングエンジンとお洒落で優雅なスタイルを融合させるアイデアを好んだのだ。いわゆるアーリーアダプターによってマセラティの挑戦的な精神は受け入れられ、新たなドライビングライフスタイルが生まれたと言える。

マットブラックのボディカラーはネロ・コメタ(Nero Comet)。黑い彗星とでも訳すのか。内外装にミントグリーンのアクセントが仕立てられアグレッシブな印象を与えてくれる。

もう一台はグランカブリオのトロフェオ。大柄なボディのオープンだが、このモデルのボディ剛性も素晴らしい。今回のハイライトはトロフェオにスポーツエグソードを装着されたことである。センターサイレンサーを取り除くことで、ドライバーが求める時により迫力のあるエンジンサウンドを味わうことができる。

パドックなど限られた場所であったがローでレッド近くまで引っ張り、そこからセカンドにシフトアップすると胸の透くような炸裂音を体感することができた。550馬力を発揮するネットゥーノ V6 エンジンとAWDの組み合わせ。4人で楽しめるフルオープンの贅沢さこそマセラティの真骨頂である。