第84期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、9回戦全13局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた羽生善治九段―鈴木大介九段の一戦は97手で羽生九段が勝利。今期6勝目を挙げて昇級に望みをつなぎました。
オリジナル振り飛車への対応は?
3つの昇級枠をめぐって26名が争う今期のB級2組。8回戦を終え全勝の久保利明九段が昇級を確定させたあとは1・2敗で続く3名がデッドヒートを繰り広げますが、3敗の羽生九段も前期順位が1位であるため十分に昇級可能性のある位置取りです。羽生九段の先手番で始まった本局は後手の鈴木九段が三間飛車に構えて持久戦の構図に落ち着きました。
鈴木九段の駒組みは玉の位置を保留した美濃囲いが特徴的。居飛車が平凡に穴熊に組めば下段飛車に構えて玉頭を強襲する含みを残しています。意欲的な序盤戦術を前に早くも持ち時間を使うことになった羽生九段ですが、ここでの対応が見事でした。6筋の歩を突き捨てたのが駒効率を重視する柔軟な発想で、右銀を急所に配置して早くも作戦勝ちの様相です。
読み抜けとがめて快勝
居飛車ペースのまま盤上は終盤へ。自陣四段目で孤立する鈴木玉はいかにも寄りそうですが広さがあるため油断はできません。形勢が動いたのは夕食休憩直前、鈴木九段が6筋に金を上がったときでした。細かいようでも金は5筋に立って玉の逃げ道を一路残しておく必要があります。局後SNSを更新した鈴木九段は読み抜けをした悔しさを率直に明かしました。
持ち時間でリードされる羽生九段ですが、このチャンスは見逃しません。金で桂を食いちぎったのが厳しい寄せで、後手玉が危険な上部に逃げ出すよりないのを見越しています。終局時刻は19時36分、最後は自玉の必至を認めた鈴木九段が投了。積極的な突き捨てからペースを得た羽生九段の安定感が光る快勝譜となりました。
勝った羽生九段は6勝3敗、1期でのB級1組復帰に望みをつなぎました(最終局で自身が勝ちライバルの藤本渚七段が敗れれば昇級)。一方敗れた鈴木九段は3勝6敗と苦しい星取りです。
水留啓(将棋情報局)
