
『Octane』UK寄稿者による愛車レポート。今回はMr. ビーンでおなじみのローワン・アトキンソンが2004年ロールス・ロイス ファントムについて語る。
【画像】外装も内装もリフレッシュしたローワン・アトキンソンのロールス・ロイス(写真4点)
自分のファントムのボディワークを眺めては、どこか納得できずにいた。前オーナーの時代には、白い”ラッピング”を剥がした後、吹き付け塗装が施されていたが、見るたびにがっかりする。色は合っていないし、晴れた日には塗装面がまだらで粗く見えて残念な気持ちになっていた。
この車には、もっとふさわしい扱いが必要だと確信した私は、エセックス州グレート・イーストンのP&Aウッド社に持ち込み、正統なオリジナルのブラックアダーブルー色での再塗装を依頼した。そして、仕上がり品質にはこれ以上ない満足を覚えている。同時に、ウッドの内装も外して再研磨してもらった。常々、木部の表面がなぜか紙やすりのようにざらついていたことを不思議に思っていた、杜撰な吹き付け塗装による飛沫が原因だと気づいた。いやはや、もう何と言ってよいのやら…
それでも、この車のルックスは素晴らしい。私に言わせれば、時代を超えても色あせない傑作のデザインだ。論理的に考えれば、私は後継モデルである現行ファントムVIIIに買い替える客の候補となるはずだが、残念ながらその外観がどうしても気に入らない。私にとっては、これは自動車界の「2枚目の壁(セカンド・アルバムのジンクス)」にあたる。前モデルの端正な姿を、ピカソ風の歪みで奇妙に変形させたように思えてしまう。フロントのデザインは野蛮で、リアのスリークォータービューはかなり奇妙だ。技術的には、私のファントムよりはるかに優れた性能を備えているだけに、誠に残念なことだ 。より速く、より静かで、乗り心地もさらに洗練されているのに。
ともかく、話題を変えよう。ご存知の通り、現代のエンジン管理システムは、主に触媒コンバーターが作動温度に達するようにするため、コールド・スタート時にアイドリング回転数を上げるように設計されている。しかし、私の車ではこれが機能していない。冷間始動時はかなり荒く、エンジンが安定するのは暖まってからようやくだ。P&Aウッド社は、数週間に渡ってこの問題の解決に取り組んでくれているが、コンピューター診断システムに大きく依存せざるを得ない状況だ。トラブルを報告した後で最も落ち込むのは、「診断システムでは異常は表示されませんでした」と言われることだ。ああ、なんてことだ。
それ以来、「ロールス・ロイス・テクニカル」と呼ばれる部門とのやりとりを何度もしている。そこでは車両の情報がロールス・ロイス社の集中管理施設にオンラインで送信される。同部門は私の車両システムに対して大小さまざまな再起動を繰り返し行い、さまざまな対処法を提案したが、どれも効果はなかった。そして燃料圧力センサーの点検を提案され、2つのうち1つに不具合が確認されたため、両方とも交換した。しかし始動不良は解消しなかった。
次に、VANOS可変バルブタイミングのソレノイドからのオイル漏れを点検するよう提案され、実際に若干の滲み出しが確認された。しかもエンジン配線ハーネスにまで侵入し始めていた。それで、配線ハーネスとソレノイド4つを交換した。それでも始動不良は解消しなかった。問題の原因となる箇所は見つかったものの、根本的な原因そのものは特定できていない。非常にイラつく状況だ。
ただし、コールド・スタートの件を除けば、この車は実に快調だ。メディアシステムは昔から気に入っている。音質が抜群(CD再生との相性は完璧)なだけではない。1950年代のシルバークラウドさながらに、ラジオがAMの長波放送を受信できるという、なんとも面白い仕様なのだ。フランスを北上しているとディジョン辺りで、500マイルも離れたバーミンガム近郊の送信所からのBBCラジオ4が受信できる。音質はかなり粗いが、ロシアが我々の5Gやインターネットを遮断するような将来があるとしたら、こうした時代遅れの装備に感謝する日が来るかもしれない。
文:Rowan Atkinson