鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下JRTT)は11月7日、大阪にて令和6年度 内航船舶技術支援セミナーを開催。内航船の省エネ・自動化・労働環境改善の現況について報告し、『連携型省エネ船の普及に向けた取り組み』について紹介した。本稿では、オンライン配信された内容をまとめてお伝えする。
水素で進む海の未来 ~HANARIAの成果と挑戦~
基調講演として、商船三井テクノトレード 特別顧問 川越美一氏より「水素で進む海の未来 ~HANARIAの成果と挑戦~」が行われた。
「HANARIA」は、水素×バッテリー×バイオ燃料を搭載した国内初のハイブリッド型水素燃料旅客船だ。シップ・オブ・ザ・イヤー2024、マリンエンジニアリング・オブ・ザ・イヤー2024の2つの賞について、史上初のダブルを受賞しており、"人と環境と未来に寄り添う、その思想と革新的な技術が評価されている。
主要燃料は水素を活用しており、船舶では世界初の採用となる水素とバイオディーゼルのハイブリッド型電気推進を採用。GHG(温室効果ガス)削減率は運航方法によって53~100%を実現している。また電気推進のため、静かな船内環境も達成できる。
同プロジェクトの背景として、水素燃料船の実証実験は行われているものの、社会実装にはまだ至っていないことに着目し、社会実装に必要な技術要素の開発と水素燃料船の新たなモデルを構築する狙いがあったという。開発目標は、水素燃料を動力とする内航旅客船を開発すること。水素燃料電池を主要な動力源とし、冗長性確保の観点から、リチウムイオンバッテリー、バイオディーゼル燃料を補助動力源としたハイブリッドシステムを採用した。
開発にあたっては、水素燃料電池・リチウムイオンバッテリー・ディーゼル発電機の3種の電源を制御し、高効率の発電を目指した「PMS(Power Management System)の開発」、国土交通省海事局の「水素燃料電池船の安全ガイドライン」に沿った「水素燃料に対応した船体構造、安全システムの構築」、船舶に向けた水素ガスの供給と制御システム「FGSS(Fuel Gas Supply System)」の新規開発、船舶向けの水素供給インフラが存在しないなかでの「船舶向け水素供給モデルの構築」と、4つの課題と開発のポイントが紹介された。
今後の普及に向け、最後に3つの課題を示した。現状、船舶へ直接水素を供給する施設がない、もしくは限られている「水素供給体制」、舶用の水素関連機器の選択肢が少ないためコスト高につながる要因で、高圧ガス保安法と船舶安全法の両方に対応する必要を求められる「水素関連機器」、そしてデータの収集と解析が必要な「水素燃料船の実績」だ。水素燃料船を普及させるためにも課題を解決していくこと、また今後もドックの際に運航データなどを共有していきたい、と締めくくった。
内航海運業界の持続可能化に向けた歩みとこれからの活動
続いて、もう1つの基調講演として、一般社団法人内航ミライ研究会 専務理事 渡辺慶太氏より、「内航海運業界の持続可能化に向けた歩みとこれからの活動」が行われた。
内航海運業界特有の課題について、渡辺氏は「“人”が支えてきた業界ということで、船員不足は大きな課題となっている。船員だけでなく、小規模修繕事業者の減少もリスクだ。また、経験船員への属人化していることからくる安全対策、船の高齢化、新技術は新造船への適用が多く、既存船に対する技術のアプローチが少ない」と4つの項目を挙げた。
そのような状況を踏まえて、内航ミライ研究会では、技術・機器の提供と導入・普及のサポートや課題の解決を、機器単位ではなく船全体で行う取り組みを実施している。
取り組みのひとつとして、シップ・オブ・ザ・イヤー2021」小型貨物船部門を受賞した、バージョンアップしていく船「りゅうと」を紹介した。
船員労働負荷低減を目指し、集中荷役遠隔システム・離着桟支援システム・遠隔機器監視システムなど様々な機器を搭載したスマートアシストシップで、常に陸上と繋がりアップデート可能な船舶「コネクテッドシップ」がコンセプトだ。バージョンアップする船として更新作業を行い、現在は「ver.5.1」として運航しているという。この活動・建造を通じてコンセプトの重要性を痛感したと渡辺氏。「"求められているもの"と"建造時の課題"をふまえると、内航小型船では“良い船”だとしても、個社では建造が難しい」と振り返る。
そういったなか「内航ミライ研究会」が発足し、コンセプトを含めてコントロールすることが必要という思いから、課題解決に向けた機器・技術を搭載した船舶を建造支援・コンサルしていく「SIM-SHIP」を提唱、二隻の船を建造した。
そうして建造された船が「SIM-SHIP1 mk1」だ。コンセプトは省エネ・CO2削減と船員負荷低減を両立する次世代型貨物船で、運航時の省エネだけでなく、停泊・荷役・離着桟時のCO2削減技術、高効率推進システムの最適化と省電力システムを搭載しており、「連携型省エネ船」としての建造と評価を実施した。
続いて建造された「SIM-SHIP1 mk2」では、バージョンアップを行い、リアルタイムで船陸にてCO2削減量を表示し、運航に合わせた省エネ運転が可能となっている。内航船で3%~10%の省エネ効果を期待しており、現在、本船の実運航データを取得し検証を実施中とのこと。
また、搭載している陸上監視システム「RIKU-SAPO」を活用し、若い機関士だけが船に乗り、機関長は陸上から監視・サポートするという人にフォーカスした実験も実施。データだけではなく、カメラや目視・触診・音の必要性などを通し、陸上遠隔サポートシステムの課題と改良点の取りまとめも行っている。
最後に「内航ミライ研究会」のこれからの取り組みと課題について触れた。
「標準船の取り組み推進は、今すぐにでもトライしていくことです。今解決しなければならない効率化(人的リソース)へのルール的アプローチの検討と、当会に所属する仲間たちとの方向性や文化意識(当会の本質)の統一をしていきたい。何かしなければいけないとなった際、『自分達でやっていこう』という思いは、文化意識にもつながります。各社が事業をしながらの二足の草鞋となっている活動のため、人的リソースも限界ですし、金銭的リソースも限度がある」と渡辺氏。組織化の際、属人化はしたくないが、事業への強い想いがあるという、属人化ならではの魅力も語った。
「人はこの世で最も大切な資源です。内航海運は人が支える産業という思いで引きつづき活動していきますし、内航海運に技術を注いでくれる技術者の方々に敬意を表します」と渡辺氏は感謝の意を伝えて講演を終えた。
最新技術の情報をキャッチする技術講演も
続いての技術講演では、古野電気 舶用機器事業部 DX推進部 海運DX推進課 豊福修氏より「航海支援システムと拡張現実やAIの活用」、赤阪鐵工所 技術本部 副本部長 清水隆明氏より「信頼性の高い主機関システムの開発とバイオ燃料製造への挑戦」、BEMAC PEセグメント 担当部長 佐藤直氏より「パワーエレクトロニクスの活用による省エネ・GHG削減への貢献」、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT) 共有船舶建造支援部より「鉄道・運輸機構の制度と建造支援」が行われた。











