ア・リーグMVP争いはヤンキースの主砲アーロン・ジャッジ外野手(33)が制し、史上13人目となる3度目の受賞を果たした。ところが米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」は、結果が出た今もなお〝もう一人の主役〟を推し続ける異例の論調を展開している。

 同誌が記事化したタイトルは「カル・ローリーこそMVPだった理由」。マリナーズのカル・ローリー捕手(28)は今季60本塁打、125打点でリーグ2冠を達成し、本塁打・打点はいずれもメジャー全体トップ。しかも捕手としての60発は、従来の記録48本を大きく塗り替える前人未到の数字だ。スイッチヒッターのシーズン最多本塁打として、あのミッキー・マントルの記録も更新した。

 ローリーはMVP投票でジャッジに次いで2位だった。ジャッジの1位票17票に対し、ローリーは13票と僅差。打撃指標ではジャッジが上回るが、前出の「ON SI」は「MVPは最優秀打者を決める賞ではない」と強調する。

 同記事が強調するポイントは「捕手というポジション価値」だ。ローリーは今季、MLB最多イニングを捕球しながらパスボール0。守備防御指数も上位に入り、攻守両面でチームの屋台骨として機能した。一方のジャッジは、右肘屈筋損傷の影響で56試合を指名打者で出場。同誌は〝打つことに専念できる環境〟だった点も比較対象として問題提起している。

 MVPの基準は明確ではない。投票権保有者が所属するBBWAA(全米野球記者協会)が1931年に規定したのは「チームに対する実際の価値」。それを踏まえるとローリーの歴史的シーズンは、確かに票が割れても当然と言える内容だった。

 もちろん、ジャッジも圧巻の成績で受賞に値する。だが、MVP発表後にもかかわらず、ここまで断固とした〝ローリー支持〟を貫く米大手メディアは異例。SNS上でも米MLBファンの間で「ここまで推すのは珍しい」「結果が出た後も主張を続けるとは」と話題を呼んでいる。

 2025年のMVPはジャッジの手に渡った。だが、ローリーの残した数字と存在感は今なお多くの野球識者に「別の答え」を語らせるほど強烈だったようだ。

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