地域との共創をテーマに、江戸時代に北前船交易で栄えた港町、福井県坂井市の三国湊エリアにて、自然・歴史・文化・産業など地域の魅力を再発見するフィールドワークが行われた。参加した研究員たちは、地元事業者を訪ねながら、伝統産業や観光資源に触れ、地域が抱える課題と新たな可能性を探った。本稿では、まち歩きや東尋坊での見学の様子をレポートする。
「旅人」のまなざしで、いざ三国湊のまちへ
福井県坂井市の港町・三国湊を舞台に、観光を軸とした地域活性化を目指す「三国湊共創プロジェクト研究」が始動した。坂井市、社会人大学院の事業構想大学院大学、そしてNTT西日本グループが連携し、地域の魅力を再発見しながら新たな担い手を育成する産官学連携の取り組みである。少子高齢化や人口減少が進むなか、地域の資源を活かした“共創まちづくり”を次世代につなぐことを目的に掲げている。
NTT西日本グループはこれまで、ICTを活用した地域課題の解決に取り組み、持続的で自立可能な「地域循環型モデル」の創出を推進してきた。三国湊では、まち全体をひとつの宿に見立てた町家ホテルやレストラン事業を展開するなど、地域の文化や暮らしを観光資源として磨き上げる活動を続けている。
さらにNTT西日本グループの地域創生Coデザイン研究所が中心となり、地域の魅力を高める観光コンテンツの創出にも力を入れている。
10月9日には、第5回となるフィールドワークが行われた。会場となった三国コミュニティセンターには、福井県内外から11名の研究員が集結。3グループに分かれ、事業構想に向けたリサーチの第一歩としてオリエンテーションが始まった。
講師は「旅人の気分で臨んでください」と呼びかけ、「話をしてくれる人は、好意で協力してくれている。相手の立場に立って耳を傾け、興味を持って『探検』することが大切です」と語った。
手仕事に宿る記憶をたどりながら、三国湊の刺子文化を体験
フィールドワークの最初の訪問先(Bグループ)は、「オーベルジュほまち 三国湊 フロント」だった。まち全体をひとつの宿に見立て、町家ホテルやレストランを展開するこの施設は、NTT西日本グループと地域企業が連携して進める観光まちづくりの拠点である。
まず、NTT西日本グループである「Actibaseふくい」の担当者から、三国湊エリアでの取り組みについて説明が行われた。観光客の誘致だけでなく、二次交通やオーバーツーリズムへの配慮など、地域住民の暮らしと調和したサステナブルツーリズムの実現を目指す考え方が紹介された。続いて、町家再生の過程や分散型宿泊施設の仕組みなど、地域資源を生かした事業の全体像についても説明があった。
その後、ガイドも務める「Actibaseふくい」の担当者による「三国のまちの文化と刺子体験」の時間が始まった。三国のまちづくりや地域文化、雄島を含む海辺の歴史などが紹介され、参加した研究員たちは熱心にメモを取りながら話に耳を傾けた。講師は、地域に根づく手仕事文化の一つとして刺子を紹介し、三国湊で受け継がれてきた技法や模様の特徴を丁寧に説明した。
東尋坊の風と、人の声から“観光のリアル”を探る
次のコンテンツは、福井県を代表する景勝地・東尋坊の見学だった。三国湊から車で10分少々で訪れることのできるそこでは、荒々しい柱状節理の岩肌と雄大な日本海を背景に、研究員たちは人気観光地としての魅力と現状を肌で感じ取っていた。
まず訪れたのは「宮内庁御用達 献上越前かに 東尋坊 やまに本店」。巨大なカニのオブジェが目を引く店舗に入ると、事業者の話を聞き、観光の動向や客層について理解を深めた。
研究員たちは土産物店や飲食店を巡りながら、事業者や観光客に声をかけて現地の生の声を集めた。「どんな人が多いのか」「どんな食べ方が人気か」といった質問に、店主たちは笑顔で答え、地域の日常と観光の距離を実感させた。潮風と人の温かさに包まれた45分間のリサーチは、観光地を“数字ではなく人の営み”として捉える貴重な体験となった。
伝統と暮らしが息づくまちを歩き、職人の手仕事に触れる
続いて、旧森田銀行本店前からまち歩きが始まった。三国町の文化遺産でもある重厚な煉瓦造りの建物は、かつて三国町随一の豪商・森田家が創業した銀行であり、当時の繁栄を今に伝えている。研究員たちは、三国湊のまちなみを歩きながら、それぞれの関心に沿って地域事業者を訪ねた。
創業230年の提灯工房「いとや」は、1791年(寛政三年)に三国で創業し、今も伝統工法による一貫製造を守り続けている。店内では骨組みづくりや紙貼りの作業が進められ、観光客が自由に見学できるオープンな空間だ。体験ワークショップでは、ミニ提灯の絵付けや和紙貼りなどを楽しむことができる。
主に対応したのは、いとや初の女性職人である3代目の小島まりやさん。短大卒業後に病院の調理師として働いていたが、25歳で家業を継ぎ、現在は3児の母として制作・事務・広報を担う。「父と娘で力を合わせ、いとやを守り抜きました。だからこそ今があります」と語る姿に、研究員たちは熱心に耳を傾けた。作業工程は乾燥・塗り・再乾燥を繰り返すため長時間に及び、型紙の作成から完成まで数十時間を要するという。
見学を終えた一行は三国コミュニティセンターに戻り、1日の活動を振り返った。研究員からは「現地で人と触れ合うことで見える課題がある」「地域の魅力を発信する仕組みづくりを考えたい」といった声が上がり、今後は互いの気づきやアイデアを共有する場を設けていく方針が確認された。

















