日本各地で記録的な猛暑が続いています。気象庁の予報によると、今年は季節の進みが遅れており、9月から10月にかけても平年を上回る高温が見込まれ、「秋口も熱中症への警戒を解かないでほしい」と注意を呼びかけています。こうした中、自宅で過ごす高齢者にとっては、暑さによる体調不良リスクが一段と高まります。そこで、安全に過ごすための「一時避難先」として、老人ホームでのショートステイが注目されています。
■「老人ホーム=ずっと住む場所」という誤解
「老人ホームは長期間入居する住まい」と思っている方、たくさんいらっしゃいます。実際そのような契約形態が主流ですが、「長期間のみ」という点は大きな誤解。老人ホームには「ショートステイ」という数日~数週間だけの短期間利用できるサービスがあります。
ショートステイ(正式には「短期入所生活介護」)は、利用者が一定期間宿泊し、介護や生活のサポートを受けられる仕組みのこと。体調を整えたり、リハビリを受けたりして自宅での暮らしを続けやすくする目的があります。また、家族は介護から離れて休んだり、自分の用事に時間を使ったりできるので、介護する側の負担を軽くする役割もあります。つまり“夏だけ入居”はもちろん、年末年始などにも活用できるので、知っておくだけで家族の介護負担を大きく軽減できるのです。
■利用条件も費用も違う?ショートステイ2つのタイプ
ショートステイには大きく分けて2種類あります。ひとつは介護保険を利用する「介護保険型」、もうひとつは自費(保険外)で利用する「民間型」です。
【介護保険型ショートステイ】
こちらは介護保険を使って利用するタイプです。対象となるのは「要支援1〜2」または「要介護1〜5」の認定を受けた高齢者、もしくは40〜64歳で特定疾病による認定を受けている方です。利用にあたっては、担当ケアマネジャーを通してケアプランに組み込む必要があります。
介護保険の対象物件には、特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保健施設)などがあり、ショートステイ専用の居室が用意されています。1回の利用は最長30日まで。費用は1泊あたりおよそ2,500円〜8,000円程度で、介護度や居室の種類(個室・4人居室など)、地域によっても変わります。比較的安く利用できるため人気が高く、地域によっては予約が取りにくいのも特徴です。
【民間型ショートステイ】
一方の民間型は、介護認定がなくても利用できるので、自立している方から要介護の方まで、幅広い人が対象です。利用にあたっては、施設に直接申し込みます。費用は1泊あたり8,000円〜15,000円程度が相場。介護保険型よりは高めですが、比較的予約が取りやすいため「介護者が出張のため不在になる」「在宅介護が一時的に難しい」というときにも頼れる選択肢になります。
■ホテルでは得られない! ショートステイが安心できる理由
暑さ対策で短期間利用するだけなら「ホテルでもいいのでは?」と思うかもしれませんが、ショートステイはまったく性質が異なります。そこには高齢者が安心して過ごせる仕組みが整っているのです。
最大の違いは、24時間体制で介護スタッフが生活を支えていること。日中は看護師がバイタルチェックなどを行い、体調に変化があっても医療機関と連携できるため、健康面に不安がある方でも安心です。さらに、建物は段差のないバリアフリー設計で、手すりや広いトイレ・廊下を備え、車イス利用の方や寝たきりなど重度の要介護者にも対応できるよう工夫されています。
また、介護保険型では送迎サービスが標準でついていることが多く、自宅から施設までの移動もサポートしてくれます。自費型でも有料や条件付きで送迎を利用できる場合があります。さらに、食事・入浴・排泄・洗濯といった日常生活の支援に加え、レクリエーションや機能訓練も提供され、生活そのものを支えてくれます。
このように「介護」「医療」「生活」の三本柱がそろっている点は、一般的なホテルでは決して得られない大きな安心です。ショートステイは単なる宿泊ではなく、高齢者にとって“安全で快適な住まい”としての役割を果たしているのです。
■目的別に変わるショートステイの活用法
ショートステイは有効に活用したいサービスですが、利用前に確認しておきたいことがあります。まずは利用目的をはっきりさせましょう。暑さ対策なのか、家族の休養なのか、リハビリなのか、それとも将来の入居検討を兼ねるのか。目的によって選ぶべき施設は変わってきます。
たとえば「暑さ対策」であれば、どの施設も室温管理はしているので大きな問題はないでしょう。ただし熱中症リスクを最小限にするため、こまめな水分補給の声かけや体調変化への対応など、スタッフのケア体制も確認しておくと安心です。「家族の休養」が目的なら、送迎に柔軟で立地や費用が利用しやすい施設が向いています。「リハビリ」を希望する場合は、理学療法士や作業療法士が在籍し、しっかりしたプログラムを提供しているかを確認しましょう。リハビリは短期間では効果が見えにくいため、数週間利用できる施設を選ぶのも一つの方法です。
また、医療や費用面の確認も忘れずに。持病や服薬への対応が可能か、送迎の条件や距離・追加料金の有無、おむつ代やレクリエーション費用がかかるかどうかも事前に確認しておくと安心です。特に、たん吸引や胃ろう、インスリン注射などの「医療行為」が必要な場合は、看護師が常駐していることが重要なチェックポイントになります。
■ショートステイ探しはここから!相談・検索・見学のポイント
いざショートステイを探そうと思っても、何からすればよいか迷うものです。前述のとおり、ショートステイには、介護保険を利用できる「介護保険型」と、老人ホームなどが独自に受け入れている「民間型」があります。どちらを利用するにしても、探し方のポイントを押さえておくとスムーズです。
①ケアマネジャーに相談する
すでに担当のケアマネジャーと契約している場合は、介護保険型・民間型を問わず相談してみましょう。必要な手続きや、近隣で利用可能な施設を提案してもらえます。ただし、施設探しに特化した専門職ではないため、候補を十分に出せない場合もあります。
②老人ホーム紹介センターに相談する
老人ホームや高齢者向けの住まい紹介に特化した民間企業で、民間型を探す場合に最適。立地や費用などの希望条件を伝えれば、無料で施設を紹介してもらえます。効率的に幅広い選択肢を得られるので、民間型を検討する際は頼もしい存在です。
③インターネットで探す
「●●市 ショートステイ」と地域名で検索すると、対応している施設を探すことができます。民間型の有料老人ホームのなかには「夏のショートステイキャンペーン」などを実施している場合もあるので、サービス内容や費用を確認してみましょう。
④地域包括支援センターや行政窓口に問い合わせる
高齢者に特化した相談窓口である地域包括支援センターや行政窓口では、市内にある施設情報を教えてもらえる事があります。ただし、中立的な立場のため、特定の施設を勧めることができず、施設名や連絡先など基本的な情報提供が中心です。
探し方は一つではありません。併用することで最適なショートステイ先を見つけやすくなります。また、時間にゆとりがあれば、利用前に施設を見学しておくと安心でしょう。ホームページだけでは分からない雰囲気や設備を確かめられるのでおすすめです。その際は事前に見学予約を忘れずに。アポなしで訪ねても、担当者が対応中で見学できないこともあります。
■これだけあれば大丈夫! ショートステイの持ち物チェック
ショートステイを利用する際には、日常生活に必要な持ち物を準備しておくことが大切です。基本的には普段の暮らしで使っているものをそろえれば問題ありませんが、忘れやすい物もあるためチェックリストを活用しましょう。
たとえば、衣類や下着、冷房対策用の薄手の上着は必須です。服には名前を記しておくと、紛失防止に役立ちます。また、薬とお薬手帳は必ず持参しましょう。施設スタッフが服薬を管理しやすくなります。
日用品としては歯ブラシやコップなどの洗面用具、さらに保険型ショートステイを利用する場合には保険証・介護保険証も忘れずに。補聴器や眼鏡、杖などの補助具も普段の生活に欠かせない大切な持ち物です。
持ち物リストを作成して確認しながら準備すれば、安心してショートステイを利用することができます。
●衣類、下着、薄手の上着(冷房対策に)
●薬とお薬手帳
●歯ブラシ・コップなどの日用品
●健康保険証・介護保険証(保険型利用時)
●補聴器・眼鏡・杖などの補助具
※衣類に名前を記し、持ち物リストで忘れ物防止
夏のショートステイは、単なる宿泊先ではなく、安心して過ごせる“身近な避暑先”といえるでしょう。また、利用を通じて、将来の住まいを考えるきっかけにもつながります。 残暑が長引く今年は、秋口まで見据えて計画すると安心です。大切なご家族が厳しい暑さを無理せず乗り切れるよう、今できる備えのひとつとしてショートステイを検討してみてください。
