今年新卒入社したばかりなのに、わずか1年も経たずに「退職」を選ぼうとしている若手社員も少なくありません。特にZ世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)の若手社員にとって、「辞める」ことへの心理的ハードルが低く、違和感を抱けば早期に行動を起こす傾向があります。

こうした離職の背景には「メンタル不調」を原因とするものも少なくありません。そして、その原因には「職場とのミスマッチ」や「人間関係のストレス」など、職場環境やマネジメントの在り方に起因するものが見受けられます。今回はZ世代の特徴を踏まえつつ、メンタル不調を招きやすい職場環境や、管理職が注意すべきコミュニケーションのポイントを解説します。

若手社員がメンタルに不調をきたす主な原因

厚生労働省の調査によると、Z世代の離職理由の上位に「人間関係がよくなかった」「仕事が自分に合わなかった」「ノルマや責任が重すぎた」が挙げられ、結果としてメンタル不調を引き起こすケースが目立ちます。こうした結果から、いわゆる「職場の空気」や「業務内容とのミスマッチ」が、若手社員の精神的な健康に大きな影響を及ぼしていることが分かります。

特に人間関係に起因するストレスは深刻です。若手社員にとって、職場での人間関係は業務そのものと同じくらい重要な要素となります。例えば、上司が何気なく放った一言が「自分は必要とされていないのでは」と受け止められ、自己概念の低下や不安感に繋がることがあります。コミュニケーションの質や言葉の選び方次第で、若手社員の心理状態は大きく左右されるのです。

また、職場での教育・指導体制が整っていない場合も、メンタル不調を招く要因となります。「分からないことがあれば聞いて」というスタンスは一見相手のことを考えた発言のようにも聞こえます。しかし、「何が分からないのかが分からない」若手社員にとって、このスタンスでは、突き放されたようにも聞こえてしまい、逆に相談しづらくなり孤立を深めてしまう要因にもなってしまいます。結果的に先輩や上司からのフォローがなければ、「自分は成長できていない」と感じ、自責的に思い詰めてしまうこともあります。

さらに、指示が抽象的であったり、評価基準が不明確な職場では、仕事の方向性が掴めず不安が募ります。明確なゴールが見えない中で努力を求められると、無力感や虚無感を抱くようになり、やがて心身に影響を及ぼすことになります。

このように、若手社員がメンタル不調に陥る背景には、個人の弱さではなく、職場環境や人間関係、教育体制の課題があることが少なくありません。企業側には、若手社員が安心して働ける環境づくりと、適切な関わり方が求められています。

メンタル不調が起きやすい企業とは?

若手社員のメンタル不調が後を絶たない職場には、いくつかの共通する特徴があります。第一に挙げられるのが、「放置型の育成スタイル」です。「この仕事は君に任せたよ」と言って任せはするものの、その後の具体的なフォローもなく、相談しづらい空気があると、若手社員は孤立を感じやすくなります。一見「委任」したように見えても実際は「放置」してしまっているのです。特に経験の浅い新入社員にとっては、放置されてしまって「聞くことができない」こと自体が大きなストレスになります。

第二に「否定的かつ抽象的なフィードバック」も大きな要因です。「もっと頑張れるよ」「君なら絶対に出来るよ」といった曖昧な言葉は一見励ましているように感じますが、実際は何を頑張ればいいのかわからない、何を根拠に絶対と言っているのかわからないといったように、改善の方向性が見えず、逆に不安を助長してしまいます。また、「なんで出来なかったの?」といった声掛けは若手社員自身が、自分の出来ていないことに意識が行ってしまい自己肯定感を下げてしまうことにも繋がってしまいます。そして、アドバイスも感情的な指摘が繰り返されるようだと、精神的な安全性は確保されません。

第三に「空気を読む文化」や「暗黙のルール」が根強い職場も要注意です。明文化されていない価値観が常態となっている環境では、注意や指導に対する基準が曖昧なために仮に業務でミスをしてしまって注意や指導を受けても若手社員は「なぜ指導されたのか分からない」「何が正解なのか分からない」と混乱し、精神的に追い込まれてしまうことも少なくありません。このような企業では、「努力が足りない」や「センスがない」といった本人の性格の問題として処理されることが多く、根本的な職場改善に結びつかないまま、離職や休職へとつながるリスクが高まってしまいます。重要なのは、若手社員の声を拾い、求めていることを理解し、日常的に安心して話ができる職場風土を築くことなのです。

上司が気をつけるべきこと

Z世代との良好な関係性を築くためには、指示の出し方、コミュニケーションの取り方において従来のマネジメントスタイルを見直す必要があるかもしれません。

指示は具体的に「なぜ」を共有する

Z世代はスマホネイティブ世代でもあり、解らないことがあればすぐに検索することが可能で情報が簡単に手に入る時代です。その影響もあり「納得して動きたい」という傾向が強く、仕事を依頼する際には「目的」「背景」「期待する成果」を明示し、何のために、なぜ、どのような貢献ができるのかといったことを伝えることが重要となります。

NG例: 「この資料、来週の会議までに作っておいて」
OK例: 「来週の営業会議で新商品のコンセプトのプレゼンをして、販促に協力してもらいたいから、先月の市場調査を基に資料を作ってほしい。特に20代女性向けの反応に注目してほしい」

こうした指示により、若手社員は「自分の仕事がどこに役立つか」を理解でき、自分が任された仕事にやりがいと安心感を得ることができるようになります。

フィードバックは「否定」でなく「改善提案」に

Z世代は「評価されたい」という願望を持ちつつも、否定的な指摘には敏感に反応する傾向があります。そのため、ミスを指摘する際には、なぜ出来なかったのかという否定ではなくどうやったら次は出来るようになるのかといった提案型の言い方が効果的です。

NG例: 「何でこんなミスをしたの?」
OK例: 「この部分、次回をより良くするためにはどんな改善ができるだろうか?」

このように、「良くするために一緒に考える」姿勢を見せることで、自己肯定感の低下を避け、自分自身で改善策の選択をすることができます。

「雑談」「感謝」の積み重ねが信頼を育む

Z世代は、業務の合間のちょっとした会話や感謝の言葉が安心感を与えます。「昨日の資料、とても見やすくて丁寧に作ってくれてありがとう」「最近、考え事をしている時間が長いように見えるけど何か困っていることはある?」といったように抽象的ではなく具体的な内容の声かけをすることで若手社員は自分のどんな言動に対して承認され、そして心配してくれているのかがわかり信頼を育むことができるのです。

Z世代の退職を防ぐカギは「安心感と具体性」

Z世代の若手社員が辞めてしまう背景には、企業文化や上司の関わり方が大きく影響しています。若手社員の成長のためにも「甘やかす」必要はないと思います。しかし、Z世代が求めているのは「自分の力を活かしたい」「認めてほしい」という当たり前の欲求です。

ポイントは「褒める」ではなく「承認する」です。若手社員は褒められると、褒められることが目的になってしまいがちです。その代わり「承認」をしてあげてほしいのです。承認されることで自己概念も上がり、他者から認められる存在なのだと自分自身で感じることができ、「自分の力を活かしたい」と思っている若手社員は想像以上に力を発揮してくれる存在になってくれるでしょう。