国土交通省・関東運輸局は6月9日、東京青海で船員を目指す学生らと海運事業者による企業説明・就職面接会「めざせ!海技者セミナー IN TOKYO」を開催した。船員の雇用のマッチングを図ることを目的に、「めざせ! 海技者セミナー」を全国で開催されている同セミナー。企業説明会を実施した海運事業者などを取材した。

過去最大規模で企業・団体がリアル参加

関東運輸局が船員を目指す人や船員の仕事に興味がある人へ雇用などの促進を図ることを目的に、海運事業者等による企業説明や就職面接会を実施される「めざせ!海技者セミナー」。近年、2005年から毎年開催されており(コロナ禍ではオンライン開催)、今年で21回目を迎える。

船員不足への危機感が高まっているなか、6月9日の「めざせ! 海技者セミナー IN TOKYO」には、過去最大となる70の参加企業・団体(66社3独法1警察署)が会場に集結した。昨年はオンライン参加もあったが、今年は対面参加企業のスペースを広げ、1社でも多くの企業がブース出展できる方針となった。

200名を超える来場者は、主に船員教育機関や水産系の高校などの学生や生徒たち。実習船「銀河丸」に乗船してきた「国立宮古海上技術短期大学校」「国立清水海上技術短期大学校」の学生(約150名)や、独立行政法人海技教育機構(JMETS)「国立館山海上技術学校」の学生(約30名)のほか、関東管内の水産高校(茨城県立海洋高等学校、千葉県立館山総合高等学校、東京都立大島海洋国際高等学校、神奈川県立海洋科学高等学校等)の生徒などが、その主な内訳となっている。

開会挨拶で関東運輸局の米山茂次長は、「今年3月には国土交通省、防衛省、海運関係団体との間で、退職自衛官の再就職を後押しするための申し合わせが締結され、今回は退職が見込まれる自衛官の方々にもご参加いただく予定です」と語った。

本セミナーでは退職予定自衛官のほか、大学生や一般求職者らにも門戸が開かれており、海技資格の取得方法、海技試験の受験や就業活動に関する相談会なども行われる。

「2024年問題に象徴されるトラックドライバー不足の解決策のひとつとして、海運へのモーダルシフトを今後10年程度で倍増させる政府方針もあり、内航海運輸送のプレゼンスは今後ますます高まっていくことが予想されます」

一方、内航海運業界でも50歳以上の船員の割合が、依然として約半数近くを占めるなど新たな時代を担う船員の確保・育成が喫緊の課題だ。

「官民を上げて船員の働き方改革が行われており、関東運輸局でも海技人材の確保・育成に取り組んでいます。船員を志すみなさんには時間の許す限り、多くの企業等のブースを回っていただき、関心のあることや疑問に思っていることを積極的にぶつけてみてください」と呼びかけた。

多様な船種で柔軟な働き方を提供

今回最初に訪れたのは、内航海運業を展開する「広洋海運」のブース。広島に拠点を構える「広洋海運」では大型船4隻を運航している。11名ほどが乗船する大型船は、若手船員の教育環境が整えやすいというメリットがあるようだ。

「RORO船やバラ積み貨物船(穀物、鉱石、石炭などの梱包されていない貨物を船倉に直接積み込んで輸送する貨物船)、自動車運搬船やセメント運搬船と、さまざまな船種と大きさを取り揃えています。本人の希望によって転船というかたちで異動も可能です」

雇用船員は現在50名ほどで、航路は北海道から九州まで様々。船員の平均年齢は36〜37歳で20代の若手船員も多く、風通しが良く働きやすい環境を整備しているという。

「全船Wi-Fi完備で、LED照明で明るい船内が設備的な特徴です。ソフト的なところでは若手の意見を積極的に吸い上げる社風で、船員さんとの対話を大切にしています。陸上スタッフが毎月1回以上、船を訪ねてコミュニケーションを積極的にとるようにしていますね」

趣味や私生活の雑談もしながら、設備面での課題の抽出や休暇の希望などの意見が言いやすい関係づくりを面談で行なっているという。ここ数年で入社した船員は1人も辞めていないそうだ。

「離職が続いた時期があり、その原因を追及していく中での反省を踏まえ、対話ベースでしっかり関係を築ける体制をとっています。『Sea Human Power』というスローガンを掲げており、船員さん第一で手厚いサポートを行なっていきたいと思います」

続いて話を聞いたのは、2020年に日本郵船(NYK)の傘下に入った「太平洋沿海汽船」。同社では、セメント運搬船3隻と石炭運搬船1隻、昨年3月に竣工したLNGバンカリング船の計5隻の船舶管理と配乗を行っている。船員の平均年齢は37.5歳で、入社3年目の現役船員がブースでコミュニケーションを取っていた。

「同じ出身校から1学年上の先輩が入社しており、会社の学校訪問で受けた説明会で船内の雰囲気などを知って入社しました。コンテナ船や自動車船に比べ、セメント船は配管による荷役作業のイメージがつかず、貴重な経験ができるかなと逆に興味を持ちました。労働時間も荷役がなければ基本8時間以内に収まりますし、荷役作業で8時間を超えた分は、翌日に半休を取るなど調整してくれます」

船内の雰囲気も若い人が多く、上長も気さくで明るい会社とのことで、乗船スケジュールや荷役の内容などの具体的な質問があったようだ。昨年3月に竣工した最先端のLNGバンカリング船や、2年前に竣工したセルフ・アンローダー型という自動荷役できる石炭船で経験が積めるのも同社の強みだという。

「いずれの船も基本的には10〜12人。船長とオフィサー3人、その下に甲板部員が3〜4人、エンジンが2〜3人というかたちで、2年前から女性船員の採用も始めていて、スターリンクの導入も各船で進めています」

資格・経験不問の採用枠が拡大

「今回は神奈川・千葉・東京の労働局さんにお願いして、若者向けハローワーク『ジョブカフェ』にもチラシを置かせていただきました。去年から比べると朝から一般求職者の方々の姿も見受けられました」とは、関東運輸局の長谷川行宏氏。

試用期間を経て、やる気と適性さえ認められれば、資格や経験を問わないという企業も増えているという。

「近年は事務方の幹部候補ではなく、船長・機関長候補など船乗りに特化したかたちで一般大学の学生の採用も海運業界では進んでいます。事業者が6級海技士取得の費用を負担する自社養成の制度や、組合さんが補填する奨学金制度が活用されており、内航海運でも将来のため長期的に人材育成する意識が高まっています」

国交省海事局では、働き方改革などに取り組む事業者が自主宣言し、求職者への訴求力向上や業界の取引環境改善、生産向上の機運醸成を図る「みんなで創る内航」推進運動も行なっている。

「関東管内の船員の求人倍率は7〜8倍の超売り手市場。継続的に安定して働きやすく、経験次第で好条件の転職もしやすい。各社で待遇改善や働き方改革が進み、船員さんに選ばれる企業を目指す企業努力もされていらっしゃいます。海技者セミナーのブースも年々カラフルになってきていますね」と長谷川氏は今回のイベントに期待を寄せる。