英国女王陛下の名前を冠することが許された船「クイーン・エリザベス」で英国の伝統を堪能する

誰もがその名を聞いたことがある客船「クイーン・エリザベス」は世界で唯一、英国女王陛下の名前を冠することが許された船だ。釜山~横浜の6日間の乗船取材を通じてわかったオーセンティックかつアンダーステイトメントなその魅力をお届けする。

【画像】船内の至るところで英国らしさを感じることができる、クイーン・エリザベスでの船旅(写真16点)

船旅は、まず適切な船を選ぶところから始まると言っても過言ではない。もし目的にそぐわない船を選択してしまったら、どうなるだろうか。大人の落ち着いたクルーズを楽しみたかったのに、船内が幼い子連れのファミリーで賑わうテーマパークのようだったら? 逆に、家族旅行で賑やかに過ごしたかったのに、船内は重厚で静謐な空気で満たされ、子ども向けの設備も少なかったら? どちらも、大満足の旅にはならないことは想像に難くない。多くの人にとって船旅は非日常であるがゆえ、往々にして「乗船すること」自体が目的になってしまいがちだが、たとえばホテル選びに置き換えて考えてみよう。検討する際には、同じ予算内でも目的や家族構成によって選択が異なってくるだろう。それと同じことが船にも当てはまるのだ。

クルーズ船といえば「豪華客船」をイメージすることが多いもしれないが、すべてのクルーズ船が「豪華」というわけではない。世界で300ほどあるクルーズ船のうち、90%は「カジュアル船」に分類され、ファミリーで楽しめるエンターテインメント性を重視したカジュアルなものとなる。フォーマル度が上がるにつれ「プレミアム船」「ラグジュアリー船」「ブティック船」とカテゴライズされ、今回乗船したクイーン・エリザベスは「ラグジュアリー船」に該当する。落ち着きのあるリュクスな船旅を楽しみたいなら、ラグジュアリー船以上のカテゴリーをおすすめしたい。

クイーン・エリザベスの歴史

まずはクイーン・エリザベスの歴史について簡単におさらいしてみよう。クイーン・エリザベスを運航するキュナード社は、遡ること185年、1840年にイギリスで創業した。世界で唯一英国女王陛下の名前を冠することが許されたクルーズラインで、現在では「クイーン・メリー2」「クイーン・ヴィクトリア」「クイーン・エリザベス」そして2024年5月にデビューした「クイーン・アン」の4隻を運航している。

オリジナルのクイーン・エリザベスは1930年代に建造され、当時の英国王妃エリザベスによって1938年に命名された。この初代クイーン・エリザベスと、「QE2」の愛称で親しまれたクイーン・エリザベス2を称えるべく建造されたのが、2010年にキュナード船団に加わった、三代目となる現在のクイーン・エリザベスだ。命名者は故エリザベス二世女王である。

船内随所にあふれるイギリスらしさ

長い歴史と英国王室との繋がりをもつクイーン・エリザベスの船内はアールデコ調のデザインでまとめられており、船内の随所に英国らしさを見ることができる。まず目を引くのは、シンメトリックな3層構造のグランド・ロビー正面にある寄木細工のアートだ。作者は寄木細工の彫刻家でもあるエリザベス二世女王の甥、第2代スノードン伯爵。初代クイーン・エリザベスにちなんで制作されたこの作品は、まさに船のシンボル的な存在といえる。

重厚な佇まいの船内をそっと見守るエリザベス二世女王の肖像画。中央の螺旋階段がシンボリックなライブラリーに置かれた、初代クイーン・エリザベスから引き継がれた1930年代の地球儀。シガールームに飾られたウィンストン・チャーチルの写真。これらがあくまでもさりげなく置かれながら、しかし厳然たる存在感を放っているのも「アンダーステイトメント」を旨とするイギリスらしさの極みといえるだろう。

食においても、英国の特徴的なメニューが数多く取り揃えられている。パブ「ゴールデン・ライオン」では王道のフィッシュ&チップスとオリジナルのクラフトビールを。また、イギリスといえばジン。バーには「キュナード4クイーンズ・ジン」と呼ばれるオリジナル・コレクションが並ぶ。船の名を冠したクイーン・メリー 2、クイーン・ヴィクトリア、クイーン・エリザベス、クイーン・アンの4エディションで構成されるこれらのジンの風味は、それぞれの船が頻繁に航海している地域に敬意を表したものになっているというストーリーも心憎いばかりだ。

「クイーンズ・ルーム」で毎日開催されるアフタヌーン・ティーも外せない。弦楽器の生演奏を聴きながら、焼き立てのスコーンやサンドイッチなどを楽しめる至福の時間だ。船内アクティビティではアフタヌーン・ティーの基本的な作法がわからない人に向けて、元英国王室執事による「アフタヌーン・ティー・マナー講座」も開催されるため、初めての人でも不安に思うことはない。また、クイーンズ・ルームでのティータイムに間に合わない場合はルームサービスやブッフェでもアフタヌーン・ティーが提供されているのでご安心を。

英国らしさあふれる食の楽しみはまだ他にも続く。船内で供されるフル・イングリッシュ・ブレックファーストはバックベーコン、ソーセージ、卵、ベイクドビーンズ、焼きトマト、マッシュルームのソテー、ハッシュドポテト、ブラックプディングからなる本格的なもの。これらのメニューはルームサービスでもオーダー可能なので、キャビンのバルコニーで海を眺めながらゆっくりと朝食をいただくスタイルもおすすめだ。

おしなべて言えるのは、食のレベルが非常に高いこと。メインレストラン「ブリタニア」(宿泊するキャビンによって利用できるダイニングレストランは異なる)では定番以外の日替わりメニューも非常に充実しており、毎日通っても飽きることはない。また、船内にはそれ以外にも様々なレストランやカフェがあり、中には夕方以降のドレスコードが適用されないカジュアルなレストランもあるので、たとえ世界一周するほど長期間滞在しても、選択肢は無限にあるといえる。

ガラ・イブニングの夜はめいっぱいお洒落をしよう

前段でドレスコードについて触れたが、クイーン・エリザベスのドレスコードも読者諸氏には気になるところだろう。クイーン・エリザベスでは3日に一度程度の頻度でガラ・イブニングが設定されている。テーマは「ブラック&ホワイト」「マスカレード」「レッド&ゴールド」といった具合で、17時以降、夜の船内はドレスアップした紳士淑女の社交場となる。前述のとおりドレスコードが適用されず、夜でもカジュアルに過ごせる場もあるが、せっかくクイーン・エリザベスに乗船するからには船旅の醍醐味としてパートナーとともにめいっぱいお洒落をして楽しんでいただければと思う。

日本発着以外の航海にも目を向けたい

クルーズ旅行の魅力のひとつに、連泊で周遊観光ができるというメリットがある。ひとたびキャビンで荷を解けば、下船するまでそこが自身の拠点となる。寄港地で下船して観光したり、終日航海日は船内のアクティビティに参加したり、ゆったりと読書をしたりして日中を過ごす。夜にはレストランやバーで食事をし、シアターでのショーやカジノで大人の時間を過ごしたあとはキャビンで就寝。翌朝目覚めると次の目的地に到着している。このうえなく効率的かつストレスフリーな移動手段であることに疑いの余地はないだろう。実際、今回乗船した航海では乗客の7割ほどが訪日外国人であり、彼らがこのクルーズで日本周遊を楽しんでいるというのもうなずける。

裏を返せば「日本人だから日本発着のツアーに申し込む」のは、ある意味ではもったいないことかもしれない。海外へ行ったときこそ、その地を周遊する拠点としてクルーズを活用してみてはいかがだろうか。横浜をベースに日本周遊航海をおこなったクイーン・エリザベスは2025年5月24日に横浜を出航し、20泊の旅程でアラスカへと旅立った。6月中旬からクイーン・エリザベスはアラスカをベースとしてカナダ方面を周遊、その後は南下しマイアミをベースにカリブ海を巡る航海をする。北米を訪れる際には是非選択肢のひとつとしていただきたい。

最後にもうひとつ、声を大にしてお伝えしたいことがある。「クルーズ旅行はリタイアしてからの老後の楽しみにしているの」という言葉をよく聞く。たしかにクルーズ船で巡るゆったりとした旅は老後の楽しみとして最高のものとなるだろう。しかし、美食や美酒、寄港地での観光、船内でのアクティビティなどを楽しみ”尽くす”にはそれなりに体力が必要であることも今回の乗船取材で実感した。いつかクルーズ旅行をしてみたいという気持ちがあるのであれば、読者諸氏にはリタイアを待たず、体力に自信があるうちに是非一度は経験していただきたい。クルーズ旅行デビューに、早すぎるということはないのだから。

文、写真:オクタン日本版編集部 Words and Photography:Octane Japan

取材協力:キュナード https://www.cunard.com/ja-jp

■今回乗船したクルーズ

コース名:新緑の西日本周遊と韓国 11日間

船名:クイーン・エリザベス(キュナード・ライン)

日程:2025年4月16日(水)~4月26日(土)

   乗船取材は4月21日(月)~4月26日(土))

コース:横浜~広島~長崎~釜山(韓国)~大阪~横浜(乗船取材は釜山.横浜)

クルーズ代金:230,000円 租税、手数料及び港湾費用除く(2名1室利用/スタンダード内側).

注意:基本的な食事代は料金に含まれますが、ドリンクや一部レストランは別料金となります。必要に応じてドリンク・パッケージ(有料)のお申込をご検討ください。