大正製薬は5月26日、医師・谷口英喜氏監修のもと、「熱中症や熱あたりを防ぐための対策」を公開した。
「暑熱順化」意識している割合は?
気温も湿度も高い夏でも、体力、集中力を落とさず快適に過ごせるかは、初夏に向けて暑さに身体を順応させる「暑熱順化」ができているかが鍵になるという。
同社が全国の20代以上の男女1000人に「暑熱順化を意識してやっていること」を調査したところ、262人が「暑熱順化は意識していない」と回答した。
暑熱順化のためにおこなっていることの中では、「水分をこまめにとる」(480人)が最多で、次いで「睡眠をしっかりとる」(336人)、「汗をかく程度の活動(軽い運動など)をする」(319人)、「入浴を欠かさない・こまめにする」(251人)と続いた。暑熱対策として積極的にとる栄養素としては「たんぱく質」(190人)という人が最多で、「ビタミンC」(143人)、「クエン酸」(136人)、「ビタミンB1/B2/B6」(120人)、「タウリン」(66人)の順だった。
5月後半~梅雨明け前に取り組むのが理想的
暑熱順化とは、身体を徐々に暑さに慣らすことで、夏の高温環境に適応できるようにするための重要な生理的プロセスである。人間は汗をかいて気化させることで体温を冷やすが、そのためには自律神経がきちんとコントロールできること、汗をかくことに慣れていることが必要となる。暑熱順化を効果的に行うためには、少なくとも2週間程度の継続的な取り組みが必要とされる。最近では、暑さが原因で体へ熱が溜まったことによる体調不良を熱あたりと呼ぶこともあり、暑さ対策が改めて叫ばれている。酷暑の中で急に暑さにさらされるのではなく、今の時期から意識してライフスタイルを整えておくことが、熱中症をはじめとする夏の不調の予防につながるという。
自律神経を整え、体温調節をしやすくする栄養補給を
食事と栄養の面でも、暑さに対応できる体づくりが重要となる。体温調節に重要な自律神経や肝臓、筋肉の機能をサポートして疲労回復を図るタウリン(イカ、タコ、アサリ、その他の魚介類に豊富)、エネルギー代謝や疲労軽減に欠かせないビタミンB群(豚肉や豆類など)、抗酸化作用のあるビタミンC(キウイなどのフルーツ)、そして疲労物質の代謝を助けるクエン酸(梅干しや酢)などの栄養素をバランスよく摂取することが推奨されている。汗とともに失われやすいナトリウムやカリウム、マグネシウムといった電解質も、汗をかく上で不足しやすい成分。お味噌汁や果物などで補うことが勧められている。
また、熱中症シーズンに向けて、水分の貯蔵臓器である筋肉を増やし、膠質浸透圧(こうしつしんとうあつ・血管内の水分を維持し、体液のバランスを保つ上で重要な生理的圧力)の主構成要素であるアルブミンの原料となるたんぱく質(肉や魚、大豆などに豊富)もこまめに摂る習慣をつけておくことが大切だとされる。筋肉は毎日少しずつ破壊されるため、毎日補う必要がある。軽度の運動を付け加えるとさらに効果的だという。
水分補給については、日常的にこまめに水分を補う習慣つけ、1日あたり1.2~1.5リットルを目安に、カフェインやアルコールは除いて水や麦茶などを取り入れ、1日8回程度(寝起き、朝食時、昼食時、おやつ時、夕食時、入浴前、入浴後、就寝前)に分けてこまめに飲むのが理想とされる。なお、冷たい飲食物の摂りすぎは胃腸の働きを低下させて暑熱順化を妨げる原因となるため注意が必要となる。
軽い運動を習慣に
ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの軽い運動を、1日30分程度、週に5日ほど行うことも暑熱順化に役立つ。やや汗ばむ程度の負荷で、暑くなる前の時期であれば午前10時から午後3時の比較的気温が高い時間帯に実施することで、発汗機能や血液循環が促され、順化効果が高まるという。庭仕事や徒歩通勤など、日常生活の中で屋外での活動を増やすこともできる。栄養と運動で筋肉量と機能を保ち、自律神経を活発化させることで汗腺の働きが活性化され、効率的に熱を放出できる体になる。
入浴で汗腺機能を呼び覚ます
38~40℃のぬるめのお湯に10~20分間、半身浴を行うことで無理なく発汗が促され、汗腺の機能が整えられる。シャワーだけで済ませず、できるだけ毎日湯船につかるのが理想とされる。湯舟に浸かるのが難しい場合は、背中の肩甲骨まわりや腰の仙骨部など、血流が豊富で自律神経に関与する部位にシャワーを当てると、体を効果的に温めることができると言われている。
質のよい睡眠をたっぷり
睡眠についても、自律神経を整える上で欠かせない要素とされている。就寝前1~2時間前にお風呂を済ませると、ちょうど就寝時に深部体温が下がり、睡眠の質が高まることが期待できるという。睡眠不足や慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、体温調節機能を低下させてしまう。この時期からのエアコンの使用についても、過度に頼るのではなく、朝晩の涼しい時間帯には窓を開けるなどして自然の気温に身体を慣らす工夫を取り入れるよう、勧められている。
夏の暑さに耐えられる体づくりのためには、少なくとも2週間程度以上のプロセスが必要だという。自律神経を整えられるような栄養・運動・入浴・睡眠を意識し、無理なく継続することが重要であるとされている。
なお、気温が上昇する真夏は、涼しい場所での休養、疲労回復、十分な水分の摂取、3食を欠かさないバランスの取れた食生活が大切。暑熱順化の段階とは異なる対処が必要となるので注意したい。