お子さんのおねしょが続いていて悩んではいませんか? 子どもが小さいうちは、夜の睡眠中におねしょすることは珍しくありません。おねしょは成長とともにだんだん減っていきますが、中にはおねしょが長く続く子も。

病院に相談するとしたら何歳くらいからがいいのでしょうか? また、おねしょの原因や受診する年齢・症状の目安、治療方法などについてもご紹介します。

  • 就寝前の親子

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■「おねしょ」と「夜尿症」

睡眠中に自分の意思とは関係なくおしっこをもらすことを、一般的に「おねしょ」と言います。スウェーデンでの研究によると「4歳半でほとんどの子が起きている間におもらしをしなくなり、5歳でおねしょをしなくなる子が多い」ことがわかっています。

一方、おねしょの中でも、「5歳を過ぎてから、月に1回以上、睡眠中のおもらしが3カ月以上続くこと」については、医学的に「夜尿症」となります。

なお、定義された年齢や回数、期間に当てはまれば、お昼寝中におしっこをもらすのも夜尿症に含まれます。

<夜尿症の患者率について>

夜尿症は7歳の子どもの1割程度はいると言われていて、その後は1年に15%程度の子どもが自然に治っていきます。5歳以上15歳までの6.4%が夜尿症というデータがある一方で、成人になる頃にはほぼ全員の夜尿症が治ると考えられます。ただし、夜尿症が治らないまま成人になる人も0.5~数%います。

なお、明らかな原因はわかっていませんが、両親のどちらかに夜尿症だったことがある場合、そのお子さんのうち40%が夜尿症となるとされています。

ちなみに夜尿症になる子どもは男の子の方が多く、男女比は約2:1となっています。

■おねしょの原因は?

おねしょは、睡眠中におしっこが膀胱にいっぱい溜まっても尿意で目を覚ませない「覚醒障害」、抗利尿ホルモンが夜に十分分泌されずに起こる「おしっこの量の増加」、膀胱に溜められるおしっこの量がまだ少なかったり、膀胱にある程度おしっこが溜まると勝手に収縮して出てしまったりなどの「膀胱の機能の未熟性」によって起こります。

なお、誤解されがちですが、おねしょの原因は親の育て方や子どもの性格ではありません。

<原因ごとの夜尿症の3タイプ>

日本の小児科では夜尿症の原因を次の3つに分けています。

・夜間のおしっこの量が多い「多尿型」
・膀胱におしっこを溜められる容量が少ない「膀胱型」
・多尿型と膀胱型を兼ねた「混合型」

■受診の目安

  • 就寝中の子ども

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「小学校に入学しても夜尿症が治らない場合」や「おねしょで本人や保護者が困っている場合」が受診の目安です。小児科または泌尿器科に相談しましょう。

<夜尿症で治療を受けた方がいい理由>

夜尿症は成長とともに治っていく可能性がありますが、治療を受けた方が早く治ります。 「生活指導などの治療を受けた場合」と「自然経過で治る場合」を比べると、治療を受けた方が治癒率は2~3倍高く、治るまでの期間も短く済みます。

また「夜尿症がある子どもはおねしょをしない子どもに比べて、自尊心が低い」という研究結果もあります。さらに「夜尿症が改善すると自尊心の回復が見られた」というリポートが海外で報告されています。

特に、毎晩おねしょをするというような重症例は治りにくいものです。夜尿症を早く確実に治し、子どもの自尊心を守るためにも、小学校入学後も続くおねしょは小児科や泌尿器科に相談しましょう。

■夜尿症の治療法とは

診察では、最初に夜尿の頻度や夜尿がなかった時期があるかどうか、家族歴など、夜尿の状況などについて尋ね、身体検査を行います。さらに自宅で排尿日誌と排便日誌、夕方以降の飲水記録をつけます。

その後、まず生活指導を行い、改善されない場合は薬物療法やアラーム療法を検討します。

<生活指導の方針>

  1. おねしょをする前に夜間に起こしてトイレに行かせるのは避ける
  2. 寝る2時間前(できれば3時間前)以降は食事と水分補給をしない
  3. おしっこを膀胱に溜める容量を拡大するための排尿抑制訓練を行う

<薬物療法とアラーム療法のやり方>

夜尿症のタイプごとに異なる薬剤や治療方法を使い分けます。

・多尿型の場合:夜間のおしっこの量を減らす薬剤(抗利尿ホルモン剤)を服用
・膀胱型の場合:抗コリン薬を使って、おしっこを膀胱に溜められるように体の機能を改善。また、夜間睡眠中におもらしの始まるとアラームのスイッチが入って子どもを起こす「アラーム療法」を行う
・混合型の場合:多尿型・膀胱型の両方の治療方法を行う

最後に子どものおねしょと夜尿症に関して、小児科の専門医に聞いてみました。

おねしょは、睡眠から覚醒する力が未熟、睡眠中の膀胱の働きが未熟、夜間に尿が作られ過ぎてしまうなど、概ね体が成長段階にあることが原因と考えられています。そのため、個人差はありますが、年齢とともに頻度は少なくなり5歳頃までに改善することが多いです。

日本夜尿症・尿失禁学会のガイドラインでは、「夜尿症」の定義は5歳以降で、1カ月に1回以上の夜尿が3か月以上続くものとされています。また、おねしょの多くは成長とともに自然と治ることが見込めますが、生活指導や薬物療法によって、より早く解決できることもわかってきています。

治療によって改善されると、子どもの自尊心が回復するという報告もあるため、早期に解決したいならば、かかりつけの小児科にご相談されても良いと思います。

元野 憲作(もとの けんさく)先生

一宮西病院 小児科/部長
資格:日本専門医機構認定 小児科専門医、日本集中治療医学会 集中治療専門医、日本救急医学会 救急科専門医