山﨑福也8年ぶりの完封。「苦手投手」戦を制した、初回の狙い打ち【えのき…

得意と不得意。攻略したのは?

 GWの連戦が終わり、オリックスとの「真昼の首位攻防戦」を勝ち越して、5月中旬、単独首位に立ったファイターズである。ロッテ6回戦(5/16、ZOZOマリン)は久々の関東開催なので飛んで行った。つい先日、幕張メッセ駐車場への移転・新設が報道されたZOZOマリンスタジアムだ。1992年にロッテが川崎から移転して以来だから、もう30年以上のつき合いになる。ビジターチームのファンとしてだけでなく、高校野球ファンとしても毎年お世話になっている。シャトルバスを降りた途端、潮風が吹きつけてきて、「ああ、大沢親分が伊良部クラゲに刺された」って言ってたなぁ、今度は海からちょっと遠くなるんだなぁと感傷的になった。

 

 ロッテ6回戦。先発は山﨑福也と田中晴也だ。日本文理出身の田中晴也は22年の新潟県決勝で見ている。といっても僕は帝京長岡の芝草宇宙監督の応援だから茨木秀俊(現・阪神、札幌出身)サイドだ。実に見応えのある投手戦で、これは2人ともプロ入り確実だなと舌を巻いた。だからパに来た田中晴也と対戦するのを楽しみにしてたのだが、今シーズン、既に2敗(7回無失点、5回2失点)と苦手にしている。

 

 一方、山﨑福也はどうかというと(これは日刊スポーツの受け売りなのだが)オリックス時代からロッテ戦を上得意にしてきたそうだ。通算成績10勝5敗(他球団はトントンか負け越し)、特にZOZOマリンで強く、23年5月18日のたった一度しか負けてない。

 

 というわけで漠然とこの試合のフォーカス・ポイントは考えてあった。得意と不得意。カモと苦手。山﨑福也も田中晴也も相手打線から見ると「苦手投手」になるだろう。その苦手どうしが当たると何が起きるのか。その苦手をどう克服するのか。逆に投手の方はどう相手打線を型にハメていくのか。山﨑福也は伏見寅威と「さちとらバッテリー」だ。つまり、オリックス時代から気心の知れたコンビ。対して田中晴也は寺地隆成とのヤングバッテリー(20歳と19歳!)だ。この対照的なマッチアップも見どころだろう。

初回で試合を決めた

 試合。田中晴也は立ち上がりに失敗した。制球が定まらず、苦し紛れのストレートを痛打される。ファイターズは初回だけで4安打3得点。これは助かった。まぁ、5/16時点でハムは首位、ロッテは最下位であり、打線の勢いがそもそも違うのだが、この回に関してはひとり相撲というべきで、「あ、この投手真っすぐしかないな」と思えば少々速くてもプロは打ち返す。立ち上がりの悪さは本格派の泣きどころではあるのだが、それにしてもストレートをホームベース手前に叩きつけたりしてたから寺地もリードに窮しただろう。

 

 田中晴也はその後立ち直り、6イニングを被安打6、失点4(106球)でまとめたから、初回の3失点がなければ、1-0で試合をつくったことになる。これはファイターズ打線としては「見事に攻略」したのか「やっぱり調子が出てくると苦手」なのか難しいところだ。ただ初回、1番郡司裕也がポテンヒットで出塁し、2番淺間大基が悪くないレフトフライ、3番レイエスがセンターへクリーンヒットと、カンカンカンッと弾き返し、田中-寺地バッテリーをあわてさせた面はあったと思う。投手は初回、どの球が使えてどの球が良くないか調子を見極めるものだ。その余裕を与えないうちにカンカンカンッと狙い打ちした。僕は「落ち球は捨てろ、まっすぐだけ狙え」ぐらいの指示があったかなぁと想像しながら見ていた。

 

 では、山﨑福也はどうだったか。結論を言うと「8年ぶりの完封勝利(被安打7、122球)」だ。GW連戦でリリーフがへばっていたから、1人で投げ抜いたのはありがとうとしか言いようがない。そのピッチング。とにかくテンポが速かった。ロッテの打者に考える暇(いとま)を与えず、ポンポン簡単に追い込んでいく。それは初回の田中晴也の話とも通じる気がした。相手が頭を整理する前にこっちのペースに引きずり込んでいく。右打者のアウトコースの出し入れ。緩急の使い方。チェンジアップとツーシームと落ち球とスライダー。山﨑-伏見の引き出しの多さがハンパない。ロッテ打線を翻弄した。いや、あんなにスイスイ投げられたら楽しいだろう。

 

 ロッテ打線は確かに完封負けの試合が続いていたが、前日は東京ドームで楽天に打ち勝っている。ソトにホームランが出て、ちょっと心配であった。が、山﨑福也はソト、ポランコを完璧に封じ込める。藤岡裕大がマルチヒットで出塁したが、打線の繋がりを断ち切った。

 

 

附記 この日はロッテファンのプロレスラー、ワイルド・ベアーさん(バリアフリープロレス「ZERO」)と呉越同舟観戦であった。ワイルド・ベアーさんは文化放送のヘビーリスナーで、『くにまるジャパン極』の僕のラジオコラムを聴いて山田うどんに走ったりしていたそうだ。この週、野村邦丸アナはがんの摘出手術&入院から番組復帰したばかりで、つい「くにまるさん復活うれしいねー」「声も元気そうでよかったです」と話し込んでしまう。ちなみに↑のカモと苦手の話題については「苦手意識を持ってもらうとどんなにやりやすいか、去年の西武戦でウチがいちばん知ってるはずなんですけどね」との見解。

 

附記2 ワイルド・ベアーさん、ZOZOマリンのカン高い声を出すコーラの売り子さんに「おお、まだいるんだなぁ!」と反応してた。わかりますよね、男性のよく通る声のコーラ売り。