JA共済では、地震のリアルな揺れを体験できる学習型プログラム「ザブトン教授の防災教室」を日本全国で実施している。兵庫県神戸市が4月26日~27日に開催した『レジリエンスセッション 震災と未来のこうべ博2025』でもJA共済連兵庫のブースに巨大地震の体験コーナーを設置。両日、たくさんの親子が地震の怖さについて学んだ。現地で関係者に話を聞いた。

  • JA共済が、神戸にて学習型プログラム「ザブトン教授の防災教室」を実施。写真は、全国共済農業協同組合連合会 兵庫県本部の桑城康次氏

■8種類の地震を体験できる「ザブトン教授の防災教室」

神戸市では、阪神・淡路大震災(1995年1月17日)から30年が経過したことを期に、子どもから大人まで楽しく防災について学べる体験型イベント『レジリエンスセッション 震災と未来のこうべ博』を企画。4つの会場(KIITO、みなとのもり公園、新港第1突堤西側、メリケンパーク)にて家族向けの様々なイベントを実施した。

  • 「最新テクノロジーと暮らしの防災」をテーマに掲げたKIITO会場(デザイン・クリエイティブセンター神戸)

  • イベントのポスター

KIITO会場で、兵庫県・JA共済連兵庫の「ザブトン教授の防災教室」のブースを訪れた。ここでは過去に起きた地震と、今後、起こることが想定される地震の揺れ(全8種類)を体験できるという。現場スタッフは「直下型なら阪神・淡路大震災のほか、新潟県中越地震(2004年)、平成28年熊本地震(2016年)、令和6年能登半島地震(2024年)、海溝型なら東日本大震災(2011年)、東海地震(近い将来)、南海トラフ巨大地震(近い将来)の揺れを再現します」と説明する。

  • 「ザブトン教授の防災教室」。基本的に4歳以上なら体験できる(VRゴーグルをかけるバージョンは13歳以上が対象)

  • 体験できる地震は全8種類

「シートに深くまで腰掛け、手すりをしっかり掴んでください。南海トラフ巨大地震はマグニチュード9.0ということで、阪神・淡路大震災の震源を360個も集めた、とてつもないエネルギーになることが予想されています。震源地は海底ですので、地震が起きたときに海が丸ごと持ち上がり、この神戸市にも津波が襲ってきます。それでは体験してみましょう」(現場スタッフ)

  • 小さな子も巨大地震を体験!! このあと、座っているシートが左右前後に激しく揺さぶられた

揺れの体験中も解説が続いた。「南海トラフでは、地震発生からおよそ16分で最初の津波が高知市に到達します。津波の高さは最大で16mにも達する見込みです。ただ、すぐに高台に避難しようにも、16分のうち3分ほどは揺れが続きます。揺れている間、人間は何もできません。だから逃げる時間は、本当に限られてきます。何を持ち出そうか、なんて考えている時間はありません」「部屋の中にいたら、家具なども倒れてくるでしょう。この激しい揺れの中で『自分だったらどうやって身を守ろうか』と想像してみてください」。脇で見守る家族、そして順番を待つ他の家族にとっても勉強になることばかりだ。

  • 建物が揺さぶられ、部屋中の家具が倒れることで下敷きになったり、出口を塞がれたりする危険性もある(家具の固定が大事とのこと)

  • VR版を体験した女性は「すごい揺れ方だった、まだ床が揺れている感じがする」とコメント

JA共済連 兵庫県本部の桑城康次氏に話を聞いた。JA共済連では普段から、兵庫県の危機管理部と連携した取り組みを行っている。今回も、先に出展が決まっていた兵庫県から協力の打診があり、「ザブトン教授の防災教室」の実施を決めたそうだ。「本日、午前中には既に50名ほどの家族が参加してくれました」と桑城氏。

  • KIITO会場の様子

  • JA共済のブース

子どもの反応について聞くと「そうですね、見ていると『怖かった』という子もいれば『ボクは大丈夫だったよ』という子もいます。兄弟が体験している姿を見て『私は怖いからやめておく』という子もいます」とさまざまな様子。たしかにアミューズメント施設のアトラクションに臨む心意気で乗ってしまえば、そこまで怖くはないけれど、『これが近い将来、生活圏で発生する巨大地震なんだ』ということまで想像が至れば、とても怖い―――。そんなところかもしれない。

  • Webサイトでも情報を発信中。なお大規模災害時、JA共済では保険事業の「再建共済金」などで被災者をバックアップしていく

阪神・淡路大震災の発災当時、中学2年生だったという桑城氏。「住んでいた大阪は震度4程度でしたが、それでも驚いてベッドから飛び起きた記憶があります」と振り返る。過去の震災を風化させず、次の世代にどうやって伝えていったら良いか。いま、そんなことを考えているとし、「どれだけ災害を”自分ごと”として捉えてもらえるか、だと思うんです。震災のニュースをメディアで目にするだけでは、どうしても他人事として通り過ぎてしまうでしょう。でも、もしかしたら明日の我が身に襲いかかる災害かも知れない。今回のような取り組みが、防災について考えるきっかけになれば嬉しいです」と話してくれた。

  • 写真は、神戸市中央区の東遊園地に灯る「1.17 希望の灯り」

兵庫県 危機管理部の加悦(かや)竜馬氏にも話を聞いた。「兵庫県は阪神・淡路大震災を経験したことから、防災教育にとても熱心です。でも実際に地震が起きたときにどのくらい揺れるのか、なかなか体験できるものではありません。今回のような取り組みは、子どもたちにとっても貴重な機会になると期待しています」と加悦氏。そのうえで「私もブースで体験してみましたが、大人でも怖さを感じました。椅子に座って『揺れが来るぞ』と構えていても怖いので、こんな巨大地震が日常生活のなかで不意に襲ってきたら、と想像するとゾッとします」。そして「兵庫県の危機管理部では、日ごろからJA共済さんにご協力いただいております。県内の皆さまの防災意識を高めるため、今後ともこうした取り組みを共に進めてまいります」と話していた。