
大名曲「Hide and Seek」、TikTok経由でバイラルヒット中の「Headlock」を収録した2005年のアルバム『Speak for Yourself』で知られ、今なお根強い人気を誇るイモージェン・ヒープ(Imogen Heap)。手の動きで音を操るグローブ型インターフェース「Mi.Mu Gloves」の開発に関わるなど、音楽とテクノロジーの未来を切り拓いてきた彼女は今、「AI×音楽」の新たな可能性を示そうとしている。
2005年の楽曲「Headlock」がTikTokで突如バズを巻き起こし、イモージェン・ヒープ史上最大のヒットとなった今、彼女はその楽曲の”ヴァイブ”をAIを通じて合法的にシェアし始めている。ヒープは、AI音楽スタートアップ「Jen」が提供する新機能に初めて参加したアーティストとなった。
この機能では、ユーザーがライセンスされた楽曲の「ヴァイブ、フィール、リズムスタイル、楽器の質感」を新しい楽曲に直接取り込むことができるという。Jenの共同創業者兼CEO、シャラ・センダロフによれば、ヒープは「Goodnight and Go」「Just for Now」「Last Night of an Empire」「What Have You Done to Me」といった4曲も同様にライセンス提供しており、これらは「StyleFilters」と呼ばれる。
StyleFilter™ learns the unique elements of a specific licensed song—think its vibe, feel, instrument textures, song structure—and infuses them into tracks you make on Jen. pic.twitter.com/RFfrhqE1MZ — Jen (@jenmusicai) April 24, 2025 (※Xポスト訳)本日、グラミー賞受賞アーティストの @imogenheap とともに、StyleFilter™ を正式リリースしました。お気に入りのアーティストやプロデューサーのスタイルで音楽を制作でき、彼らに正当な報酬が支払われる、私たち独自の特許技術です。倫理的なAI音楽の創造、ライセンス供与、収益化のあり方を、私たちは再定義していきます。
StyleFilter™は、特定のライセンス楽曲が持つユニークな要素——たとえばヴァイブや雰囲気、楽器の質感、曲の構成など——を学習し、Jen上で制作するあなたの楽曲にそのエッセンスを注ぎ込みます。
多くのAI音楽プラットフォームが、著作権で保護された楽曲を無断で使って学習しているのに対して、Jenは完全にライセンスを取得した楽曲だけを使っている。ヒープがこのプロジェクトに参加した理由もそこにある。「Jenがすごいなと思ったのは、”正しくあること”の大切さをちゃんと理解しているところなんです」とヒープは語る。「すごく遠回りな方法を取っていると思いますが、その姿勢に共感しました」。
このサービスでは、StyleFilterが使われるたびにアーティストに収益の70%が支払われる。ユーザーは、ヒープの楽曲のエッセンスを反映した最大90分の楽曲を生成するのに4.99ドル(約710円)、より強く影響を反映させる”高強度”設定では7.99ドル(約1,130円)を支払う。Jenのもう一人の共同創業者マイク・カレンは、「StyleFilterは音楽クリエイターのためのアプリのようなもの。曲をライセンスするというよりも、新しいプロダクトを世に出す感覚。アーティスト自身が”ソフトウェア”になるんです」と語っている。
アルバムは「古い仕組み」AIから広がる可能性
ちょうど「Headlock」がTikTokで盛り上がっていたタイミングで、ヒープの代表作のいくつかの権利が、20年を経て本人のもとへ戻ってきたのも追い風となった。「これはまさに、タイミングがぴったりだったと思います」とヒープ。「奇跡的な巡り合わせでしたね」。今回の取り組みは、彼女自身が10年かけて開発してきた技術プラットフォーム「Auracles」を通じて行われている。Auraclesは権利管理システムとして機能し、Jenに対して必要なメタデータや許可をすばやく提供できる。「他のアーティストのみなさんにも、こうした仕組みのメリットを感じてもらえたら嬉しいです」と話す。
ティンバランドのようにAI音楽エンジン「Suno」を積極的に使っている例もあるが、AIを公然と支持しているアーティストや作曲家、プロデューサーはまだごく少数で、多くは無断使用に対して批判的な立場を取っている。「私もただ”AI最高!”って言いたいわけではないんです」とヒープは言う。「でも、倫理観やビジョンに共感できる人たちとなら、”AIっていいかも”と思えますし、未来に向けて意味のあることを一緒にやっていきたいなって思うんです。信頼のある環境で、もっと自由にコラボできる仕組みを作っていきたいんですよね」。
ヒープにとって、今の音楽業界の仕組みはすでに古い。「2014年以降、アルバムは出していませんし、もうその形には戻らないと思います」と語る。「絶対に、100パーセントないですね。あの仕組みって、レーベルが儲けるためにできてる感じがしますから」。最近、リミックス用に楽曲のステム(素材音源)を販売する試みでは、1件30ドルで400件のダウンロードがあり、合計で1万2000ドル(約170万円)を売り上げたという。「同じ曲がSpotifyで50万回再生されたとしても、1000ポンド(約19万円)にすら届かないんですよ」と明かす。
AIを活用する道を、もっと多くのアーティストが模索すべきだとヒープは考えている。「オープンでいることで、いろんなことが起こる可能性が広がると思います」と彼女は話す。「逆に、現実から目を背けてしまうと、結局、利益目的の人たちに主導権が渡ってしまって、自分たちのことなんて考えてもらえない、なんてことになるかもしれませんから」。
From Rolling Stone US.
StyleFilter™ learns the unique elements of a specific licensed song—think its vibe, feel, instrument textures, song structure—and infuses them into tracks you make on Jen. pic.twitter.com/RFfrhqE1MZ — Jen (@jenmusicai) April 24, 2025 (※Xポスト訳)本日、グラミー賞受賞アーティストの @imogenheap とともに、StyleFilter™ を正式リリースしました。お気に入りのアーティストやプロデューサーのスタイルで音楽を制作でき、彼らに正当な報酬が支払われる、私たち独自の特許技術です。倫理的なAI音楽の創造、ライセンス供与、収益化のあり方を、私たちは再定義していきます。
StyleFilter™は、特定のライセンス楽曲が持つユニークな要素——たとえばヴァイブや雰囲気、楽器の質感、曲の構成など——を学習し、Jen上で制作するあなたの楽曲にそのエッセンスを注ぎ込みます。
Each StyleFilter™ costs $4.99 (or $7.99 for high-strength) and applies to 90 minutes of jenerations. Tracks created with StyleFilters™ are fully owned by the user—ready to be used, released, and shared across any project—but not to train other AI models. #dontstealmusic pic.twitter.com/I1txbS17Nr — Jen (@jenmusicai) April 24, 2025 (※Xポスト訳)AI音楽の新たな地平へ——@imogenheap が自身の5曲をStyleFilter™として提供開始。ビルボードHot 100入りを果たした「Headlock」に加え、代表作『Speak for Yourself』収録の「Goodnight and Go」「Just for Now」もラインナップ。すべて正規ライセンス取得済み、あなたのクリエイションに自由に活用できます。
各StyleFilter™は1つあたり4.99ドル(高強度バージョンは7.99ドル)で、90分間のジェネレーション(楽曲生成)に適用されます。StyleFilter™を使って制作された楽曲は、ユーザーが完全に所有でき、どんなプロジェクトにも自由に使用・リリース・共有することが可能です——ただし、他のAIモデルの学習目的で使うことはできません。#dontstealmusic(#音楽を盗まないで)