ヒット商品やサービスを手掛ける企業のキーマンにお話しを伺う企画「#お仕事図鑑」。
今回は「カシオ計算機」のマーケティングテクノロジー統轄部 UXマネジメント部 エリアマーケティンググループに所属する先輩社会人、上野雄希さんにインタビュー。仕事をする上で大切にしていることや現状の課題、今後の展望について詳しくお話を伺いました!!
▼海外販売会社と連携しながらECサイトを運営する
――簡単に自己紹介をお願いします。
カシオ計算機 マーケティングテクノロジー統轄部 UXマネジメント部 エリアマーケティンググループの上野雄希と申します。2011年に入社しました。
――現在の仕事内容について教えてください。
現在、弊社カシオ計算機の直営ECサイトの売上アップを支援する仕事をしています。具体的には、機能的な支援と施策的な支援の2つの側面から業務を行っています。
たとえば、「この新製品を売りたい」という要望がある際に、「こういったECサイトのシステムの機能を活用してはどうか」といった提案をしたり、「このようなお客様にこういった情報を届けると良いのでは」といったマーケティング施策を提案したりしています。
特に、実際のECサイト運営を行っている海外販売会社のメンバーと連携しながら、売上向上のサポートを行っています。
――営業職から現在のECサイトマーケティング職に異動されたとのことですが、営業時代はどのようなお仕事をされていましたか?
営業職としては11年間勤務しており、大きく2つの役割を経験しました。
1つ目は、日本国内の営業所での営業活動です。具体的には、家電量販店や代理店、高校などを担当し、弊社の製品を販売・紹介する仕事を約5年間行いました。
2つ目は、本社の営業推進部での業務です。ここでは、電子文具、電子辞書などの各製品について、売上や損益目標を達成するための企画立案や営業支援を担当しました。約6年間、この業務を通じて、より広い視点で事業全体を見る経験を積みました。
――営業から現在の仕事を選んだ理由を教えてください。
1つ目は、新しい仕事に挑戦したかったからです。11年間、営業の仕事を2つの側面から経験したことで、次のキャリアを考えた際に、より視野を広げるためにまったく異なる分野にチャレンジしたいと考えました。
2つ目は、現在の職種が世の中のトレンドになりつつあったからです。ECサイトの売上向上に向けた業務では、ユーザーデータを活用しながら購買行動を分析し、それをもとに施策を立案・実行することが求められます。データ分析を活用したマーケティングは今後ますます重要になると考え、この分野に魅力を感じました。
3つ目は、異動当時、この部署ができて3年目という新しい組織だったことです。カシオの70年の歴史の中で、新しい部署の立ち上げに関わり、軌道に乗せる経験ができる機会は貴重でした。そうしたチャレンジングな環境に惹かれ、異動を決意しました。
――社内応募制度を活用する前後で、仕事に対するモチベーションや働き方に変化はありましたか?
はい、実際に変化がありました。まず、自分がやりたいと思っていた仕事を自分の意思で選び、それをやらせてもらっているという点で、モチベーション高く働けていると感じています。働き方に関しては、関わる相手が大きく変わったため、それに合わせる必要がありました。しかし、仕事に向き合う姿勢自体は大きく変わっていないと思います。
――営業職と現在の仕事で関わる人にどのような違いがありますか?
大きく変わったのは、現在関わる方々の99%が社内のメンバーである点です。営業時代は外部の顧客と多く接していましたが、現在は販売会社を通じた業務が中心で、基本的にはカシオグループ内の方々とのやり取りが主になっています。
また、担当エリアがヨーロッパになったことで、日本国内の営業からグローバルな視点での業務に変わりました。現地の方々とも関わる機会が増えたため、文化の違いを意識したコミュニケーションを心がけています。
――海外メンバーのサポートをする中で感じる課題はありますか?
1つの課題は、双方が同じゴールを見てコミュニケーションを取れているかどうかを確認することです。現地側からのリクエストも多く、わたしたちが提案する内容と異なる意見が出ることもあります。その際に、両者が共通の目標を持ち、それに向けて納得できる形で進められているかを確認することが重要だと考えています。
▼大切にしていることは「仕事のクオリティ」と「人との関わり」
――仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
1つ目は、仕事のクオリティです。わたしは「早く、正確に、強く」というモットーを持っています。まず、迅速な対応を意識し、その上で正確なアウトプットを提供し、さらに付加価値をつけることを心がけています。
2つ目は、人との関わりです。EC業務はデジタル要素が強いですが、実際に向き合っているのは「人」です。AIや自動化が進んでも、相手が何を考えているのかを意識し、尊重しながらコミュニケーションを取ることを大切にしています。
――英語でのコミュニケーションについての難しさを教えてください。
正直、とても難しいと感じています。11年間国内営業を担当していたため、その時代は英語を使う機会がほぼゼロでした。そのため、英語での業務は未経験の状態で挑戦することになりました。
ですので、最初から「やってみるしかない」という気持ちで取り組んでおり、試行錯誤しながら改善を続けています。まずは正確なコミュニケーションを意識しつつ、ニュアンスや言い回しを調整していくことで、より円滑なやり取りを目指しているところです。
――現在の部署で営業職時代の経験が役立っている点はありますか?
営業職時代に培った「人と話す力」が特に役立っています。プレゼンや提案の経験は、現在の業務にも大いに活かされています。言語が変わっても、準備の仕方や伝え方のポイントは共通しているため、非常に役立っていると感じます。
――プレゼンテーションで大切にしていることはありますか?
まずは「自分が一方的に話しすぎない」ことです。相手が聞きやすい話し方やボリュームを意識し、テンポよくメリハリをつけることを心がけています。
また、プレゼンの成功の鍵は、「相手の反応をしっかり観察する」ことです。頷きや相槌が見られると、しっかり伝わっていると感じられます。逆に反応が乏しい場合は、伝え方を工夫する必要があると考えています。
学窓会員限定!今回のインタビュー動画はこちら!
▼各国の文化的背景やユーザーの特性の違いに挑む
――ECサイトの運営の効率化で最も苦労された点はありますか?
まず、ECサイトの効率化について説明する前に、わたしたちの部署がどのような目的で業務を行っているかについてお話しします。
カシオ計算機のグループ全体の売上比率の約80%が海外市場に依存しています。そのため、各国ごとにカシオの公式ホームページがあり、一部の国では自社製品の販売も行っています。
わたしたちの業務では、日本、アメリカ、ドイツ、シンガポールといった各国のユーザーがアクセスした際に、どこでも統一されたフォーマットやデザイン、情報が表示されることを大きな目標としています。
この統一化により、カシオというブランドがグローバルで何を伝えたいのか、製品をどのように見せたいのかといったメッセージを、世界中のユーザーに一貫して届けられる環境を構築することを目指しています。
しかし、このグローバルな統一を進めるうえでの最大の課題は、各国の文化的背景やユーザーの特性の違いです。たとえば、東南アジアの市場とヨーロッパの市場では、同じ画像や動画、プロモーション手法を使っても効果が異なる場合があります。現地のユーザーが何を求めているのかを一番よく理解しているのは、各国のローカルスタッフです。
そのため、効率的に統一された情報を提供することと、各市場の特性に合わせた「ローカライズ」を両立させることが非常に難しい点となっています。わたしたちはこの調整を「ローカライズ」と呼んでおり、グローバル共通化とローカルニーズに応じたカスタマイズのバランスを取ることが大きな課題になっています。
――現状の課題と今後の展望について教えてください。
まず、ECサイトの売上向上に関してですが、現状の課題として「お客様が本当に必要としている情報を提供できているかどうか」の検証が必要だと考えています。ECサイトは商品を販売する場であり、会社としては直営ECサイト経由での売上を重視するのは当然ですが、お客様の目的はそれだけではありません。
例えば、「自分が持っている商品の修理方法を知りたい」「商品の実物を見たいが、どこで売っているのか知りたい」「カシオという会社自体についてもっと知りたい」といった購入以外の目的で訪問されるお客様にも、必要な情報にスムーズにたどり着ける仕組みを作ることが重要だと考えています。
今後は、お客様の目的に応じて適切な情報を能動的に提供できる仕組みを整え、どのようなお客様にとっても「カシオのサイトに来てよかった」と感じてもらえる環境を作ることが課題であり、展望となっています。
――数ある企業の中で、なぜカシオを選ばれたのでしょうか?
わたしは来年で入社15年目になりますが、当時の就職活動を振り返ると、最終的にカシオを選んだ理由は「扱っている商品がかっこよかった」からです。
特にG-SHOCKに惹かれました。例えば、卒業旅行で海外へ行った際に、至る所でG-SHOCKが売られていて、街中で多くの人がカシオの時計をつけているのを見たりしました。世界的に認知されているブランドであり、しかもプロダクト自体が非常に魅力的だと感じました。「この商品を自分の手で扱い、カシオの世界観を広げていきたい」という思いが強くなり、入社を決意しました。
――カシオ以外に志望していた業界はありますか?
はい、メーカーを中心に就職活動をしていました。飲料メーカーや機械メーカー、インフラ系の企業なども受けていましたし、並行して教員免許を活かす道も考え、公務員試験も受けていました。
最終的にカシオに入社を決めたのは、やはりプロダクトの魅力とグローバルなブランド力に惹かれたからです。
――最後に大学生に向けたメッセージをいただけますか?
就職活動は、自分にとって大きな成長の機会だったと感じています。自分の人生を振り返り、「自分は何が得意なのか?」「どんなことに向いているのか?」を考える良い機会になります。もちろん、時には苦しいこともあるかもしれませんが、楽しんで取り組むことが成功への近道だと思います。
また、大学生のうちにしかできないことがたくさんあります。友達や家族との時間を大切にしながら、今この瞬間を楽しむことも忘れずに過ごしてほしいと思います。みなさんの就職活動が良いものになることを願っています。頑張ってください!
取材:柴澤 実歩(ガクラボメンバー)
執筆:田中 妃音(ガクラボメンバー)
編集:学生の窓口編集部
取材協力:カシオ計算機