
2020年11月のデビュー以来、凄まじい勢いで進化を続けているグローバルグループ、ENHYPEN。コロナ禍を乗り越え、2022年からはワールドツアーも開催し、年々規模を拡大し続け世界中から熱視線を送られているといっても過言ではない彼らが、12日午後(現地時間)にアメリカ最大級の音楽フェスティバル『コーチェラ・フェスティバル(Coachella Valley Music and Arts Festival)』のステージに立った。出演アーティストで唯一のK-POPボーイグループというプレッシャーがかかる状況のなかで、繊細かつ大胆なENHYPENらしさを爆発させたのである。
印象的なギターのリフに導かれ、プラダの特別制作衣装に身を包んだ7人がSAHARAステージに登場。ロックサウンドの「Blockbuster」をドロップし、ほとばしるエネルギーをステージ上から解放していく。K-POPボーイグループの中ではデビューから最速でのコーチェラ出演となった彼らだが、臆する様子は1ミリも感じられない。そればかりか「絶対に爪痕を残す」という力強い覇気が、1曲目から堂々と放たれている。勢いそのままに「Blessed-Cursed」へ引き継ぎ、ダンサーと共にパワフルなダンスをぶちかましたかと思えば、「Future Perfect (Pass the MIC)」では会場が一体となるシンガロン。ENHYPENとオーディエンスが共鳴し、SAHARAステージのボルテージが最高潮まで高まっているという事実が、画面越しでも鮮明に届いた。
この日初となるMCでは、JUNGWONが「素晴らしいみなさんと一緒に、ここにいられることを光栄に思います」と挨拶。休む間もなく、JAYが「Make some noise!」と焚き付け、「ParadoXXX Invasion」へ誘われた。ほぼノンストップの進行であっても、まだまだ余裕しゃくしゃくといった様子のENHYPEN。NI-KIのソロパートを機に切り開くダンスブレイクでは、力強くも精巧なモーションで魅せていく。HEESEUNGが伸びやかな歌声で導いた「Paranormal」では、メンバーがステージに散らばってパフォーマンス。時には手を振りながら、時には遠くへ視線を飛ばしながら、舞台を駆け回る姿は無邪気な少年のよう。柔らかさのある朗らかな表情からは、彼ら自身がこのショータイムを楽しんでいることが伝わってきた。
ここまでノリのいいアップチューンを展開してきた彼らだが、ENHYPENの魅力はそれだけにはとどまらない。スムースで甘い雰囲気の「XO (Only If You Say Yes) (English Ver.)」、ダンサブルなシンセ・ポップサウンドの「No Doubt」、唇に人差し指を添える振り付けが印象的な「Sweet Venom (English Ver.)」、ミニマルなトラックにウィスパーラップが映える「Daydream」と、多彩なコンセプトを乗りこなしていく。楽曲が移り変わるたび、即座に曲に没入する姿は、まさに”圧倒的コンセプト消化力のENHYPEN”。声色やダンスのニュアンス、表情などを緻密にチューニングし、7人でひとつの世界を描き出していくのである。
(P)&(C) BELIFT LAB Inc.
バンドセッションを経て導かれたのは、「Moonstruck」だ。メンバーは一直線に並んだスタンドマイクの前に立ち、月の映像が浮かぶスクリーンを背負いながら、真っすぐに歌声を落とし込んでいく。紡がれるメロディーはあまりにエモーショナルで、たとえ歌だけであっても彼らの表現力が圧倒的であることを誇示していた。切なくも幻想的な空気が漂い、うっとりと恍惚のときに浸るのも束の間、”Oh, my, oh, my God”の声が響き渡り、再び場内は熱狂ムードへ。”Crazy over you you baby”と告げるナンバーから、血で繋がれた運命に気づいた少年がその証を残したいと願う気持ちを表現した「Bite Me」に繋げる演出には、独自のストーリーテリングを持つENHYPENらしさを感じざるをえない。SUNOOがアンニュイながらも凛とした佇まいで惹きつければ、SUNGHOONは様々な表情で視線を集め、JAKEは甘く伸びやかなボーカルを響かせる。ひとつのコンセプトを7人で描きながらも、それぞれの個性だって甘くことなく輝かせていた。ラストにはEDMバージョンの「Drunk-Dazed」と「Brought The Heat Back」を投下し、クールなダンスナンバーで熱い夜を創出。彼らがステージから去ったあとも、会場にはオーディエンスが「ENHYPEN」と叫ぶ声が響き続け、いかに興奮の渦が巻き起こっていたかを色濃く映し出したのだった。
Photo by Frazer Harrison/Getty Images for Coachella
生バンドとダンサーを率いて、約45分を全力で駆け抜けていったENHYPEN。彼らにとって夢のステージのひとつだった大舞台で、並々ならぬパフォーマンス力を発揮するだけでなく、グループのアイデンティティも存分に煌めかせてみせた。会場を存分に盛り上げることとコンセプチュアルな作品で魅せることを13曲で両立させたのである。それを実現できたのは、彼らがひとりひとりのオリジナリティを認識し、常に高めあってきたからこそなのだろう。どんなに大成功に思えるライブであっても、さらなるブラッシュアップを怠らないのがENHYPEN。きっと19日の出演でも、並々ならぬ感動をオーディエンスに与えてくれるに違いない。
また、今年の夏には日本2都市でENHYPEN初のスタジアムツアー『ENHYPEN WORLD TOUR WALK THE LINE IN JAPAN -SUMMER EDITION-』も予定されている。海外アーティスト史上デビュー最速でスタジアム公演を実施する彼らの動向に、今後も注目していきたい。
(P)&(C) BELIFT LAB Inc.