伊丹十三監督全10作品の4Kデジタルリマスター版を上映する「日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三4K映画祭」を開催中の東京・TOHOシネマズ日比谷で16日、『静かな生活』上映記念イベントが行われ、キャストの渡部篤郎、佐伯日菜子が登壇した。

  • 佐伯日菜子(左)と渡部篤郎 撮影:蔦野裕

    佐伯日菜子(左)と渡部篤郎 撮影:蔦野裕

最高の口説き文句「もしアメリカでやるならトム・クルーズに」

1995年の劇場公開から今日が30年ぶりの再会だという2人。佐伯が「言葉を失いました。でも相変わらずカッコいいなと思いました」と感激を語る一方、渡部は「(イベントの時間が)30分しかないで」とクールにかわしながら、トークがスタートした。

当初はオーディションだと聞いていた渡部だが、伊丹監督に会うと「もしアメリカでやるならトム・クルーズにお願いしたいんだけど、日本だったら君だよね」と言われたそうで、「最高の口説き文句で、それは思い出にありますね」と回想。佐伯は、当時伊丹監督が出演していたCMの印象が強かったらしく、初対面で「“ツムラ日本の名湯の人だ!”と思いました」と無邪気な感想を持ったことを振り返った。

その後、東京・飯倉のイタリアン「キャンティ」でバジリコのスパゲティをごちそうになり、伊丹監督に「たまにはこういう文化的な食事もいいよね」と言われたが、「文化的な食事って何!?」と当時高校生の佐伯には理解が追いつかなかったそうだ。

撮影現場では「めちゃくちゃ優しかったです」(佐伯)、「常にニコニコして見てくれていましたね」(渡部)という伊丹監督。佐伯は「イーヨー(渡部)がプールを泳ぎきって、マーちゃん(佐伯)がビデオを構えて泣くというシーンの時に、監督がスタスタスタって私のところに来て、“今の本当に良かった”とハグして褒めてくださったことをすごく覚えています。それに渡部さんが映ってないところで大変な体勢で泳いでくださって…。私は渡部さんにもすごく感謝しました」と涙をこらえながら、当時の心境を打ち明ける。

しかし、渡部は「あんまり覚えてない(笑)」と苦笑い。佐伯は「伊丹監督が長いコートを着てプールサイドを歩いてた時に、渡部さんは“日菜子、伊丹さんをプールに落とせ!”ってとんでもないミッションを課してきたんです(笑)」とヤンチャな裏話まで鮮明に覚えているが、それも「覚えてないですね(笑)」という渡部は「ユーモアがあっていいじゃないですか」と若き自分に感心していた。

「やっと俳優業の入口に立った作品」

そんな2人にとって、『静かな生活』はどのような作品だったのか。

佐伯は「デビューから2本目がすごく大きな作品でものすごいプレッシャーでしたけど、ものすごく優しい温かな現場で、今でも“伊丹監督好きです”という方もいっぱいいるので、本当にいい作品に出させていただいたなと、すごくすごく思います」、渡部は「やっと俳優業の入口に立った作品ですね」と、いずれも大きな存在のようだ。

そして最後に、佐伯は「伊丹十三監督は独特な作品を作られて、日本の一つの文化としてずっとずっと忘れちゃいけない、忘れられない方だなと思っています。私にとっても本当に大切な方だったので、今日はすごくいい機会でした」と挨拶。

渡部は「映画の賞とか、流行った作品に出ることもうれしいことなんですけど、私は名作に出ることがずっと夢で。でも、名作には時が経たないとならないですからね。やっと今日、それを頂けたかなと思いますね」としみじみ語り、「伊丹監督の企画をこういう形でやってくださった日映(日本映画放送)の方にも感謝してますし、今日お越しになった監督の作品を愛してくださる皆さんにも感謝しています」と思いを述べた。

「日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三4K映画祭」は、TOHOシネマズ 日比谷・梅田で3月から開催中で、全10作品を4K最高画質で1週間ずつ上映。また日本映画専門チャンネルでは、伊丹映画全10作品を4K最高画質で、5月17日(20:00~)に一挙放送する。

「伊丹十三4K映画祭」の今後の上映スケジュールは、以下の通り。

『静かな生活』4月11日~17日
『スーパーの女』4月18日~24日
『マルタイの女』4月25日~5月1日