一時は半導体不足が話題になったり、最近ではキャベツや米の不足&値上がりも問題視されている……が、とりあえず「鉄不足」じゃなくてよかった。
「半導体やキャベツは不足してもいい」とは言わない。米不足が進めば国を揺るがす死活問題になるだろう。でも、鉄もヤバい。代替がまったく効かない。「あって当たり前」になっているが、鉄がなければ我々の生活は即破綻する。
そんな極論がつい頭をよぎってしまうほど、鉄はスゴいんだと認識させてくれるのが科学技術館にある「鉄の丸公園1丁目」だ。
■科学技術館「鉄の丸公園1丁目」を探索してみた!
1964年に開館した科学技術館(東京都千代田区)。現代から近未来の科学技術や産業技術に関する知識を広く普及・啓発するための施設で、2階から5階にまたがるフロアには電気、車、建設、家電、石炭……などなど、科学技術にまつわる展示室が数多く設置されている。
「科学技術館という名前のとおり、科学と技術をセットで展示しています。私たちの生活の身近なところで使われている科学や技術の仕組み、背景をより広く知ってもらいたい。ですので、現在研究が進められている最先端技術というより、すでに世の中にある科学技術がどんな仕組みでできているのか、という点にフォーカスしています。そこが他の科学博物館との違いですね」(科学技術館スタッフ)
その一角にあるのが鉄鋼展示室「鉄の丸公園1丁目」。鉄の歴史などの映像を視聴できる「ビークルシアター」を中心に据えた公園風の展示室で、鉄の製造過程や用途などを幅広く学ぶことができる。
壁面には鉄に関する歴史や最近のニュース、身近にある鉄製品などの情報が丁寧に、それでいてわかりやすく記されている。例えば……
関東の地デジ放送の要を担う「東京スカイツリー」では約3万6,000トンもの鉄骨が使われていることや、時速300キロに達する新幹線「N700系」も鉄のレールがなければ成り立たないことなどが事細かに記されている。「そういえば、新幹線って高速鉄道(または超高速鉄道)なんだ。あまり考えたことがなかったけど、高速“鉄”道……か」といった具合に、当たり前のことを改めて実感させられる。
他にも、レインボーブリッジのような大きな橋梁やスチール缶、自動車、船艇、建築物……などなど、身の回りにあるあらゆるものが鉄鋼でできていること、そしてその仕組みなどやルーツなどが紹介されていたり……
鉄は何度でもリサイクルに回され、その都度かたちを変えて生まれ変わるサスティナブルな天然資材であること……など、鉄にまつわるあらゆる基礎情報が一覧でまとめられている。
それだけではない。
1975年式国産セダンのボンネットと2000年式国産セダンのボンネットの重量差を、ロープを引っ張ることで体感できる「ボンネットリフティング」や……
柔らかい鉄、硬い鉄だけでなく、バネのような“はずむ鉄”などもあることが実感できる「ばねシューティング」など、体験型の展示物もいくつか用意されている。
また、鉄を使ったワークショップなども定期的に開催されているという。
「ここでは、鉄に関連する工作や実験ショーを実施しています。例えば、磁石にくっつく・くっつかないの性質を子どもたちに確かめてもらったり、スチールウールを燃やして『鉄も燃えるんだよ』というお話をしたり。工作では『エッチング』といって、化学薬品で鏡に模様付けする実験なんかも楽しんでもらっています」(科学技術館スタッフ)
ワークショップでは、例えば廃棄された鉄のスチール缶を利用し、カブトムシやトンボなどを工作してみたり……
鉄と化学反応する液体に鏡を漬けることで模様をつける「エッチング」などが体験できる。
展示室には、子どもたちが「鉄」にまつわる夢を書いたメッセージカードも貼り出されている。
自由でユニークな発想に、ついほっこりしてしまう。
「科学技術館は、この他にも車や家電など、鉄に関わる展示室をいろいろと用意しています。まずは『鉄の丸公園一丁目』で鉄について知っていただき、その後ほかの展示室を回っていただくと、これまでとはまた違った視点でお楽しみいただけるかもしれません。ワークショップや実験ショーのほかに工作教室などもやっているので、ぜひ科学技術館のホームページで確認してお越しいただけるとありがたく思います」(科学技術館スタッフ)
あまりに身近な存在であるが故に、普段はなかなか思いを巡らせる機会がない「鉄」。だからこそ、改めて学んでみるとその偉大さが身に沁みてわかるし、新たな発見もあって面白い。春休みのお出かけスポットとして、ぜひ!