
最新アルバム『Bloom』が話題沸騰中のラーキン・ポー(Larkin Poe)。姉妹デュオは、ロック、ブルース、カントリーを融合させ、ダイナミックなライブ・スペクタクルを作り上げている。「このバンドには緊張と解放があるからこそ、いろいろな実験ができるんです」
レベッカとメーガン・ラヴェルが、ロック、カントリー、ブルースをルーツとするデュオ「ラーキン・ポー」を結成したのは15年前のことだ。当時すでに数年のツアー経験を積んでいたが、それはデュオとしてではなかった。当時の彼女たちは、姉のジェシカを含むアコースティック・トリオ「ラヴェル・シスターズ」として活動していた。
「ラヴェル・シスターズは、本当に趣味で始めたものだったんです。それを本格的にやっていくつもりなんて、最初はまったくなかったんですよ」とメーガンは話す。「でも、たまたまうまくいってしまったんです。『プレーリー・ホーム・コンパニオン』というラジオ番組に出演させていただいたことがあって、何百万人もの方々がそれを聴いてくださったんですね。皆さん、私たちのことをプロのバンドだと思い込んでしまって。それで、いきなりツアーバンドとしての活動が始まったんです」
その後、トリオは2010年に解散し、そのプロジェクトの”灰の中”からラーキン・ポーが誕生した。当時レベッカは19歳、メーガンは20歳だった。グループ名は、エドガー・アラン・ポーと親戚関係にあったラヴェル家の先祖、ラーキン・ポーから取られている。以来、彼女たちは着実にライブ・パフォーマンスで圧倒的な存在感を放つバンドとしての評価を築き上げてきた。彼女たちは米オースティンにて開催されたSXSWの「Rolling Stones Future of Music」ショーケースにも出演。パフォーマンスを目撃したファンは、二人の”解き放たれたエネルギー”を目の当たりにしたはずだ。レベッカは鋭いリード・ボーカルとギターで観客を圧倒し、メーガンはラップスティールで炸裂するようなフレーズを奏で、ハーモニーを重ねる。
「このバンドには、緊張と解放があるからこそ、いろいろな実験ができるんだと思っています」とレベッカは語る。
その感覚は、今年1月にリリースされたラーキン・ポーの最新アルバム『Bloom』でもはっきりと感じ取れる。サザン・ロック、デルタ・ブルース、アパラチアのブルーグラス、そしてアメリカーナが融合したその音は、姉妹ならではの独自のトーンを生み出している。これは、2022年のグラミー賞を受賞した『Blood Harmony』に続く、通算7作目のスタジオアルバムだ。
メーガンは『Bloom』について特別な”目覚め”があると語る。「何度やっても、”こんなにも新しくてフレッシュに感じるんだ”って驚かされるんです」と彼女は言う。「このアルバムは、本当に”ゼロからの再出発”という感じでした」
ラヴェル姉妹の物語は、故郷であるジョージア州北部から始まる。ブルーリッジ山脈の牧歌的な風景を遊び場に、森に入り込み、小川をさまよいながら日々を過ごしていた。南部アパラチアの幼少時代は、ナッシュビルの現在の住まいでも、世界中のツアー先でも、常に心の中にある。
「アメリカ南部の風景は、私たちの物語において”もう一人の登場人物”のようなものなんです。それが作品の中に何度も顔を出すことが、自分たちでも興味深いんですよ」とレベッカは話す。「ツアーで家を離れていた時間が長い分、余計にあの風景が美化されて心の中に焼きついているんです」
姉妹の絆、女性のエンパワーメント
アルバム『Bloom』のハイオク満タンな楽曲「Nowhere Fast」では、そんな故郷への思いが込められている。レベッカは、この曲でこう歌い上げる。〈私と私の仲間は田舎から来た/『ダメだ』って言われると、私の田舎者の血が騒ぐの/やることは山ほどあるけど、時間はない/最後尾まで突っ走れ、『go, go, go.』って叫んでる〉
この曲は、レベッカのパワフルなボーカルと、彼女の燃え上がるようなエレキギター、さらにメーガンの鋭利なラップスティールによる掛け合いが炸裂する、疾走感あふれるナンバーになっている。「If God Is a Woman」も同様で、レベッカは低く、どこか不穏なトーンで歌う。〈もし神が女なら、悪魔も女に違いない/ひざまずいたほうがいいわよ、祈る時間が必要だもの〉
女性のエンパワーメントや、男性優位になりがちな音楽業界の構造を変えていこうという意識は、ラーキン・ポーの根幹にある。彼女たちはまた、正直なコミュニケーションや思いやりを大切にしており、それはツアーを続けるバンドにとって欠かせない要素だと言う。
「音楽の世界には、”サッド(悲しぶる)な方がカッコいい”とか”虚無感の方がクール”みたいな価値観があって。でも実際には、そのまま堕落していくほうが簡単なんですよね」とメーガンは話す。「生きることを選ぶ、前向きでいることを選ぶ、進んでいくことを選ぶっていうのは、本当に強さがいるんです」
そうした思いは、ラーキン・ポーがステージに立ち、アンプにプラグを差し込み、最初の一音を鳴らすたびに、心に刻まれている。「私たちがステージに立ってお客さんとつながることは、本当に自然なことなんです」とレベッカは語る。「会場でお客様の目を見ていると、その瞬間に絆が生まれるんですよ」
SXSWへの出演を終えた後、ラーキン・ポーは4月から全米ヘッドライナー・ツアーをスタートさせ、秋にはヨーロッパ・ツアーも控えている。ラヴェル姉妹にとって、最大の武器は”姉妹の絆”だと言う。
「姉妹という関係が、すべての土台になっていることが、私たちにとって最大の贈り物だと思っています」とレベッカは言う。「お互いの支えがなかったら、ここまでやってこられなかったと思いますし、生き延びることすらできなかったと思います。それくらい、すべてなんです」
From Rolling Stone US.
ラーキン・ポー
『BLOOM』
発売中
日本盤ボーナス・トラック:「サザン・コンフォート(アコースティック)」