新NISAをきっかけに投資に興味をもったものの、ここ最近のややネガティブな経済ニュースを読んで、地図のない街に一人取り残されたような気持ちになってませんか? やはり、こんな時に頼りになるのは、何十年と市場を見ている識者の意見です。
今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト川上 雅人さんに、このような局面での選択肢になりうる国内株式ファンドについて伺いました。
下落が限定的、あるいは上昇したファンドがある
2025年に入り、日銀の利上げペース加速や米国景気への不安から円高ドル安が進行しています。2月下旬以降、米国株式市場はトランプ関税の不透明感や景気懸念で下落し、国内株式市場も調整局面に入りました。
国内リートはわずかにプラス(101.3%)であるものの、ほかは、下落率の大きい順で、米国株式(S&P500)が87.6%、全世界株式(オール・カントリー)が91.2%、先進国リートが94.4%、先進国債券が95.8%、新興国株式が96.3%、国内株式が96.8%と、100%を割り込んでいます。
また、図表2にあるようにインデックスファンドでは国内株式(TOPIX)が96.8%、国内株式(日経平均)が92.3%となり(ともに赤囲み)、半導体株の構成比率が高い日経平均は、トランプ関税による不透明感の影響等で下落率が大きくなりました。
一方でこの間、高配当など配当に着目した国内株式ファンドの下落は限定的で、上昇したファンドもありました。ここからは、これらのファンドについて個別に解説します。
配当に着目した、国内株式ファンドTOP7
年初来リターン(今年の1月1日から現在までの投資収益率)でランキングした1~7位をご紹介します。
7位 日本好配当株オープン
予想配当利回りに着目し、配当の安定性や成長性、企業の業績動向等を勘案して銘柄を選定しているファンドです。組入上位銘柄はソフトバンク、武田薬品工業、いすゞ自動車、セイノーホールディングス、アステラス製薬などとなっており、組入銘柄数は61銘柄、予想配当利回りは4.1%です。1年・3年・5年リターンの全てでTOPIXインデクスファンドを上回り、かつ値動きの振れ幅も示す標準偏差も小さいバランスの良い好成績ファンドといえます。
6位 三井住友・配当フォーカスオープン
配当に着目し、中長期的な株価の上昇と配当収入による成長を目指すファンドです。組入上位銘柄はみずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、KDDIなどとなっており、組入銘柄数は93銘柄、予想配当利回りは3.7%です。1年・3年・5年リターンの全てでTOPIXインデクスファンドを上回り、かつ標準偏差も小さいバランスの良い好成績ファンドといえ、運用効率を示すシャープレオ(5年)が最も高くなっています。
5位 SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン
10年以上にわたり毎年増配をしているか、または安定して配当を行っている最も配当利回りの高い企業で構成されるS&P/JPX配当貴族指数(配当込み)に連動する投資成果を目指すインデックスファンドです。配当貴族指数は増配株の指数として広く知られていますが、国内株式の代表的な増配株指数といえるS&P/JPX配当貴族指数に着目したファンド(ETFを除く)はこのファンドのみとなります。組入上位銘柄は長谷工コーポレーション、安藤・間、日本曹達、丸井グループ、センコーグループホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は50銘柄、予想配当利回りは3.88%です。1年・3年・5年リターンの全てでTOPIXインデックスファンドを上回っており、運用効率を示すシャープレシオ(5年)はTOPIXインデックスファンドを大きく上回っています。
4位 日経平均高配当利回り株ファンド
日経平均株価採用銘柄の中から予想配当利回りの上位30銘柄に投資しているファンドです。組入上位銘柄は本田技研工業、日本製鉄、武田薬品工業、日産自動車、商船三井などとなっており、組入銘柄数は30銘柄で、予想配当利回りは4.6%です。1年リターンではTOPIXインデックスファンドを下回りましたが、3年、5年では最も好成績のファンドです。
3位 NZAM 日本好配当株オープン(3ヵ月決算型)(愛称:四季の便り)
予想配当利回りが高い銘柄を中心に、株価の割安度等にも着目した投資銘柄を選定しているファンドです。組入上位銘柄は三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、SOMPOホールディングス、住友電気工業、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は99銘柄で、予想配当利回りは3.89%です。1年・3年・5年リターンの全てでTOPIXインデクスファンドを上回っているバランスの良い好成績ファンドといえ、TOPIXインデックスファンドに対する超過収益が1年・3年・5年でそれぞれ5%超となっている点が特筆されます。
2位 日本好配当リバランスオープン
日経500種平均株価採用銘柄で予想配当利回りの高い上位70銘柄程度に均等投資するファンドで、71銘柄に投資しており、予想配当利回りは4.52%です。1年リターンではTOPIXインデックスファンドをやや下回りましたが、3年、5年では好成績のファンドです。
1位 みずほ好配当日本株オープン
予想配当利回りが市場平均を上回る銘柄を対象としたファンドです。組入上位銘柄は三井住友トラストグループ、NIPPON EXPRESSホールディングス、日本電信電話、AREホールディングス、AGCなどとなっており、組入銘柄数は96銘柄、予想配当利回りは3.83%です。1年・3年・5年リターンの全てでTOPIXインデックスファンドを上回っているバランスの良い好成績ファンドといえます。
※ 上記ランキングは、個別銘柄の取引を推奨するものではありません。各ファンドの組入銘柄の情報は2025年1月末基準(2位のファンドのみ2025年2月7日基準)。
さらに最も好成績のアクティブファンドについて解説
配当に着目した最も好成績のアクティブファンドについて解説します。
NZAM 日本好配当株オープン(3ヵ月決算型)(愛称:四季の便り)(赤囲み、赤矢印)と配当に着目した好成績インデックスファンドであるSMT 日本株配当貴族インデックス・オープン、米国株式(S&P500)、国内株式(TOPIX)の長期パフォーマンスを図表4で比較しました。
2020年のコロナショックの急落や2024年の令和のブラックマンデーの急落を除いた円高局面においては、国内株式ファンドが優位性を発揮しているといえます。また、その中でも配当に着目した国内株式ファンドは長期で安定的に収益を積み上げていることが分かります。
まとまった資金で運用している方は、米国株式ファンドのみに投資するよりも米国株式ファンドと国内株式ファンドの併せ持ちを、国内株式ファンドを選ぶ際には下値抵抗力が期待できる配当に着目したファンドへの投資が、価格変動を抑える上で有効と考えます。参考にしてもらえると幸いです。
掲載されたファンドの情報はこちら
『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
※1 QUICKデータをもとにSBI証券作成。インデックスファンドのパフォーマンスはeMAXIS Slimシリーズで計算。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
※2 QUICKデータをもとにSBI証券作成(ファンド名は略称または愛称)。国内株式(TOPIX)、国内株式(日経平均)のパフォーマンスはeMAXIS Slimシリーズで計算。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
※3 NISA・成長投資枠対象(SBI証券取り扱い)の国内株式カテゴリーで「配当」に着目したファンドを3月12日までの年初来リターンでランキング(パフォーマンスデータは2025年2月末基準)。同じマザーファンドに投資しているファンドは、年初来リターンの上位ファンドのみを表示。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
※4 QUICKデータをもとにSBI証券作成(ファンド名は略称または愛称)。米国株式(S&P500)、国内株式(TOPIX)のパフォーマンスはeMAXIS Slimシリーズで計算。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません