
韓国のチョン・ジンヒ(Jeon Jin Hee/전진희)が2023年に発表したアルバム『Without Anyone Knowing(아무도 모르게)』は、個人的にその年もっとも耳を傾けた一枚だ。静謐なピアノと語りかけるような歌声で、彼女はリスナーの心に寄り添い、自身の内面と対話しながらパーソナルな物語を紡いでいる。
大学時代にジャズピアノを専攻した彼女は、2019年にソロピアノ作品集『Breathing』を発表。日記を綴るように感情の機微を描き出したこのアルバムには、「January」から「December」まで各月の名前を冠した、親密で透明感あふれる楽曲が並ぶ。今年1月には、その続編となる『Breathing II』もリリースされたばかりだ。
今年3月上旬、韓国のインディレーベル、SSE PROJECTから一通のメールが届いた。繊細で儚い作風で知られるシンガーソングライター、Damons yearと共に、東京のディスクユニオンでインストアライブを開催するとのこと(※現在は終了)。思わぬ形で初来日が実現すると知り、ほとんど脊髄反射的にインタビューを申し込むことにした。安らかな音楽性の背景には、幼少期から大人になるまでに抱えてきた葛藤も反映されているという。チョン・ジンヒは静けさを愛する感性をどのように育んできたのか。胸が締め付けられそうなエピソードの数々を知れば、彼女の音楽がますます愛おしくなるはずだ。
※取材協力:ディスクユニオン
You'll find Korean version after Japanese one. Here's the link.
繊細な感性が育まれた幼少期
―『Without Anyone Knowing』に感激して、いつかあなたに取材できたらと思っていました。まずお聞きしたいのですが、「静けさ」というのは自分の音楽にとって重要なテーマだと言えそうですか?
ジンヒ:そうですね。誰にとっても親しみやすいサウンドになればいいなと思っています。
―「静けさ」を表現するために、どんなことを大切にしていますか。例えば、あなたの音楽にはとても美しい余白があるように思います。
ジンヒ:自己紹介をするとき、いつも「余白」と「呼吸」の話をするんです。私は「余白」に意味を持たせたいんですよね。「呼吸」の話は、少しディープになってしまうかも……30代前半のときに、突然ひどい不安障害に襲われて。「どうしよう?」となったときに、「呼吸に集中してみてください」と言われたんです。それがきっかけで、呼吸についてたくさん考えるようになりました。生きていくうえで大切なものなんだと気づいたんです。そこから「私の音楽における呼吸とは何だろう?」と考えるようにもなりました。『Breathing』というアルバムもそこから生まれたんです。
―ジンヒさんの繊細な感性が、どのように育まれてきたのか気になります。どんな幼少期を過ごしてきたのでしょうか?
ジンヒ:この話は韓国でのインタビューでもしたことがないんですが……幼い頃はかなり恵まれない環境で育ちました。不安定だった時期にカウンセリングを受けたとき、カウンセラーの先生に「火の海から生きて戻ってきたみたいな人生だね」と言われたくらい。
でも私は、何事もなかったように、明るいふりをして、普通に生きていける人間だったので、友達から「大丈夫?」って言われても、いつも笑ってやり過ごしていました。後になって、あれは笑って済むことではなかったと気づくんですけど。当時はただ「乗り越えなくちゃ」みたいな感じでしたね。
そのなかでピアノだけは、2歳の頃から家にあったり、どこかへ売られてしまったり、教会に行って弾いたり……そんな感じでずっとそばにありました。ちゃんとレッスンを受けたわけではなかったけど、耳が良かったので、ただ聞いたまま弾いていたんです。テレビから音楽が流れてきたら真似して弾いてみたり、教会でも同じように弾いていました。
―幼い頃からピアノが身近な存在だったんですね。
ジンヒ:日本に住んでいる父方の叔母がいて、その方も音楽をやっていたんです。ピアノではなくコントラバスを演奏していたんですけど、その姿を小さい頃から見ていた記憶があります。それで「かっこいいな」と思って、自然と音楽の道を歩んできた感じですね。
―その頃に憧れていたアーティストは?
ジンヒ:実を言うと、私にとっては教会が大きな存在でした。讃美歌で育ったようなものですね。友達はクールな音楽に囲まれながら育ってきたと言うし、私も憧れのアーティストがいたらよかったんですけど、教会以外で音楽に触れる機会がほとんどなかったんです。
これは大人になってから気づいたことですが、教会音楽はクラシック音楽と密接なつながりがあると思うんですよね。例えば、バッハが好きで今でもよく聴くんですが、それも(自分の生い立ちと)何かしら関係がありそうな気がします。
「静かに寄り添うピアノ」が生まれるまで
―その後、同徳女子大学でジャズピアノを専攻したそうですね。
ジンヒ:高校3年生のとき、進路を決めなければならない時期になって、「やっぱり音楽をやるべきかな」と思ったんです。ずっと自分のそばにあるものだったので。そこからいろいろ調べていくうちに、キム・グァンミン先生のことを知りました。先生の音楽に触れて、「ああ、こういう音楽をやっている人から学びたいな」と思ったんです。
先生はピアノ・ボイシングの職人で、幸運にもほぼ3年以上、卒業するまで教わることができました。たまに叱られましたけどね(笑)。先生が奏でる温かい音色や、ジャズの語法とクラシックが合わさったようなボイシングに憧れて、ああいうふうになりたくて、ずっと努力していました。
キム・グァンミンは1960年生まれのピアニスト。韓国初のプログレバンド「東西南北」、80年代の国民的歌手チョ・ヨンピルのバックバンド「偉大な誕生」のメンバーとしても活躍。現在は学生を指導しながら演奏活動も行っている
―ジンヒさんの音楽にもジャズに由来する即興性を感じますが、ジャズという音楽からはどんなことを学びましたか?
ジンヒ:すべてを学びましたね。ジャズピアノ専攻だったのもあり、4年間しっかりと勉強しました。でも最初は、「きっと私はジャズピアニストになるんだろうな」と思っていたんですけど、なぜか不思議と、そっちの方向には進まなかったんです。どれだけ練習しても、結局はもっと静かな世界に戻っていく感じで……。
だから、「どうして私はこんなふうに、まるで突然変異みたいなんだろう?」とよく思っていました。他の友達がみんな一生懸命ジャズを追求しているなか、私も同じように学んではいたけど、気がつけば歌詞のある曲を演奏していて。「私、学校選びを間違えたのかな?」って思ったこともありました。
―そんな自分の演奏スタイルに影響を与えたピアニストは?
ジンヒ:20代の頃は、キース・ジャレットとフレッド・ハーシュをよく聴いていました。それから遅れて坂本龍一さん。数年前に坂本さんが韓国で演奏する機会があって。そのステージを観に行ったんですけど、そこで突然、すべての回路が一気に繋がるような感覚を覚えたんです。たった1台のピアノを弾いているだけなのに、まるでオーケストラ全体を指揮しているように感じられて。自然と涙がこぼれていました。その体験を通じて、「私が夢見ていた音楽はこういうものだったのかもしれない」と、ようやく気づくことができたんです。
―フレッド・ハーシュはどんなところが好きですか?
ジンヒ:彼も韓国でライブを観たことがあるんですが、まるでピアノの上に星が浮かんでいるようでした。会場中が夜空に包み込まれたみたいで、ピアノの演奏を見ているはずなのに、ずっと宙を見上げているような、不思議な体験でしたね。
―キース・ジャレットといえば、お部屋に『The Melody At Night, With You』のアートワークを飾っているのをお見かけしました。
ジンヒ:昔からキース・ジャレットの音楽を聴くと、まるでひとつの物語が語られているように感じていました。特にあのアルバムは、聴き手にそっと語りかけているみたいですよね。辛いときや眠れない夜、誰かに寄りかかりたくなるような気分のとき、いつもあのアルバムをかけていたのをよく覚えています。
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―ジンヒさんのアルバム『Breathing』は、タイトル通り〈呼吸するように〉ピアノを弾き、録音していったのかなと想像しています。このシリーズが作られた経緯を教えてください。
ジンヒ:先ほど話した不安障害に襲われたとき、私はまず、すべての仕事を辞めることにしました。それまではピアニストとして、かなり多くの仕事をこなしていたんです。外部の人と一緒に作業したり、演奏したり、いろんな活動をしていたんですが、「あれ、私は間違った道を歩んできたんじゃないかな?」と悩むようになって、全部ストップすることにしたんです。
かといって急に他の趣味を見つけたり、何か新しいことに挑戦できるわけでもなくて。すごく苦しいなかで、ただピアノの前に座って、何の欲ももたずに弾き始めたんです。それまでの私は「認められたい」「この音楽をちゃんと形にしなければ」って、あれこれ考えすぎだったんですよね。「そういうことのために音楽をやってきたわけじゃないよな」と思い直し、何の欲ももたず、ただできることをやってみようって。
それで、たしか2019年の4月だったと思うんですが、録音ボタンを押して、ただただピアノを弾いてみました。それが(『Breathing』収録の)「April」という曲になったんです。本当は自分ひとりで聴くつもりだったんですけど、そのときSoundCloudというプラットフォームを知って、「心機一転、1曲ずつアップしてみよう」と思い投稿してみたんです。
正直、誰も聴かないだろうと思っていました。あまりにシンプルすぎるし、自分のありのままの感情を表現したものだから。「大した音楽じゃないよね」と思っていたんです。でも不思議と、たくさんの人が聴いてくれて。それでじゃあ5月もやってみよう、6月も7月もやってみよう……という感じで、レコーディングが続いていくようになったんです。
―ジンヒさんが弾くピアノは、タッチはとてもシンプルですが、一音一音の響きが柔らかくて心地いいんですよね。演奏するうえでどんなことを大切にしていますか?
ジンヒ:一番大事にしているのはトーンです。そのトーンというのは、力が入っていると決して出てこないもの。自分がいちばんリラックスできる空間、ひとり部屋で弾いているような状態でないと、あのトーンは出せないように思うんですよね。
なので、スタジオで録音するときも、できる限りその雰囲気を保てるように心がけています。録音中は誰も入れないようにして、部屋の明かりもすべて消し、静寂のなかでひとり演奏に集中しています。
「穏やかに語りかける」歌声の秘密
―時系列をさかのぼると、Ravie Nuage(ハビ・ヌアジュ)の一員として2012年にデビューしていますよね。このバンドはどのように結成されたのでしょう?
ジンヒ:私は子どもの頃から曲作りをしていたわけではなくて、ただピアノに触れていただけだったんです。でも、なんとなく「ステージに立ってみたい」という気持ちが芽生えて、曲を書いて歌う友人と「じゃあ一度、小規模でもいいからやってみようか」という話になり、始めたのがそのバンドでした。私自身もそのバンドをきっかけに、初めて「曲を書く」ということを少しずつ始めたんです。
Ravie Nuageのミュージックビデオ。チョン・ジンヒはバンドリーダーで鍵盤楽器を担当(サムネイルの一番右)
―Ravie Nuageのアルバムにも、現在のジンヒさんに通じる穏やかな楽曲が収録されていますよね。その一方で、もっとバンド然とした曲もたくさん入っている。当時の活動については、今どのように振り返りますか?
ジンヒ:バンド活動には、20代のすべてを注ぎ込みました。あの頃は、それがすべてだったんです。ソロで何かをやる計画もまったくなかったし、ただ本当に全力でバンドに向き合っていました。その過程でたくさんの幸せを得ることもできましたし、ステージに立つために曲を作って、そこで出会った観客の反応……たとえば涙を流してくれる姿だったり、そういう瞬間が私自身を成長させてくれたと思います。「曲を作る」というのは、こんなにも幸せなことで、人の心を癒すとまではいかなくても、優しく包み込むことができるものなんだと気づきました。今の私があるのは、あの頃に培った能力のおかげだと思っています。
あと、私は最初から静かな音楽だけを目指していたわけではなく、「熱い音楽」も好きでした。だから、ロックバンドのゲストとしても長いあいだ活動していましたし、そういったあらゆる経験が、Ravie Nuageとしての活動に凝縮されていたように思います。ただ、今は自分の細く小さな声に合わせて、自然とより静かな音楽に向かっている、という感じです。
―ジンヒさんの歌声は穏やかで語りかけるようですよね。そういった歌い方をどのように発見したのでしょう?
ジンヒ:子どもの頃は教会でよく歌っていたんです。でも、本格的に音楽を学び、音楽の仕事に就くなかで、素晴らしい歌手の方々と知り合う機会が多くなり、「自分なんて歌ってはいけないんだな」と感じるようになって。自分の声をしまい込んでしまったんですね。
でも、30代前半にひとりの時間ができて、そこから曲がどんどん生まれてきたんです。なぜだか曲を書かずにはいられなくなって。そして、自分がその曲を歌ったとき、その歌が自分にとって心から大切なものに感じられたんです。「この曲たちは私が歌わなきゃいけないんじゃないか」と思うようになり、そこから自分で歌い始めるようになりました。
最初のソロアルバム『Piano and Voice』(2017年)には、私が歌っている曲は2曲しか入っていません。「私が歌っても誰が聴いてくれるんだろう?」と、その頃はまだ半信半疑でした。でも、ありがたいことにファンができて、「聴いてるよ」って声をかけてくださって。その声援が今も歌い続ける理由になっています。
ソロ1st『Piano and Voice』、2nd『Our Love Was Summer』(2019年)
―シンガーとしては、どんなアーティストや作品から影響を受けてきたのでしょうか?
ジンヒ:実は、自分と同じような声を持つ人に出会ったことがないんです。こんなに頼りない声は他に聴いたことがなくて。だからどこに行っても、「歌っている」というより「語りかけている」んだと説明しています。それくらい恥ずかしさが先に立ってしまうんです。
大貫妙子さんの『UTAU』というアルバム(坂本龍一との共作)を繰り返し聴いて、「こんなふうに歌いたい」と思いながら、なんとなく憧れていました。あと、最近よく聴いているのが青葉市子さん。以前、韓国にいらっしゃったときに観て感銘を受けました。
『Without Anyone Knowing』と次回作の展望
―『Without Anyone Knowing』についても聞かせてください。まずはアルバムのコンセプトについて。
ジンヒ:自分の声とさまざまな楽器との調和を表現できたら、というのを意識していました。それまでのアルバムはピアノ一台でやってきたんですが、今回はもう少し世界を広げてみたかったんです。実際に、バンド編成の曲も2曲収録していますし、ストリングスやギターも取り入れています。なおかつ「静けさ」というテーマは維持したかった。バンド編成の楽曲であっても、静けさを感じさせることができる。そんな世界を目指しました。
―歌詞についてはいかがでしょう?
ジンヒ:幼い頃の自分を少しでも癒したいという気持ちがありました。そして、なぜ自分が今も歌い続けているのか、たくさん悩みながら作った作品でもあります。そういった想いのすべてが歌詞にも表われているはずです。自分自身の悩みや問いかけを、このアルバムに詰め込んだような気がします。
―3曲目の「A Trivial Story(사소한 이야기)」が本当に好きで、いつも聴くたび泣きそうになってしまいます。この曲ではどんなことを歌いたかったのでしょう?
ジンヒ:「私は結局、ささいな人間なんだ」と認めることをテーマにしていました。それまでの私は、そういう自分をなかなか認めたくなかった。「自分はもっと素敵な人間になれるはずだ」と思いながら生きていたような気がします。
でも、このアルバムを作りながら、「自分はこういう人間で、器の大きさもこの程度なんだ」と、ようやく受け入れることができたんです。そして、そんな自分でもいいんだ、そんな私を愛してあげたい、そんな気持ちを込めました。
―ご自身にとって、『Without Anyone Knowing』で特に大切な曲を選ぶとしたら?
ジンヒ:そんなの全部に決まってるじゃないですか(笑)。私はアルバムのどれか1曲だけを聴くより、全体を通して聴くのが好きなんです。自分の好きなアーティストやアルバムは、最初から最後まで一気に聴き通したくなる、そんな作品が多い気がします。だから、このアルバムもそんなふうにしたかった。
―おっしゃる通りですね。アルバムを通じて一貫したフィーリングがあるように思いますが、作品全体で表現したかったものがあるとすれば、それはなんでしょう?
ジンヒ:”夜を越えて迎える明け方”というか……辛い夜を過ごしたあとにやってくる朝が、実は一番しんどかったりするじゃないですか。だから、夜が明けたからといって気持ちが晴れるわけではないけれど、暗闇のなかで少しずつ、一歩ずつ前に進んでいくような。そんな感覚を表現したかったんです。
―日本でも人気の韓国インディーバンド、wave to earthと「summer, night(여름밤에 우리)」という曲を2021年に発表していますよね。このコラボはどういう経緯で実現したのでしょう?
ジンヒ:wave to earthのキム・ダニエル(Vo, Gt)は学校の教え子として出会いました(笑)。彼らがまだそんなに有名ではなかった頃、CDをもらったことがあって。ある日ふと思い出して聴いてみたら、とても素敵で。すぐに「一緒に何か作ってみよう」と提案したんです。
「Summer, Night」はWave to Earthと一緒にパフォーマンスもしました。私は大学で客員教授としても働いているのですが、JisokuryClub というバンドのメンバーたちも私の教え子なんです。
―今回一緒に来日したDamons Yearとの交流についても聞かせてください。
ジンヒ:Damons Yearの音楽が大好きで、「ファンです!」って何度も気持ちを伝えていました。そこから実際に会うことになり、一緒に食事したりして。話してみたら、すごく気が合うし、楽しかったんです。
―最後に、今後の活動予定を教えてください。
ジンヒ:実は今、新しいアルバムの制作に取り掛かっています。『Breathing』というアルバムを2枚リリースしたことで、「チョン・ジンヒは静かにピアノで”呼吸”する人だ」というイメージが定着したと思うんです。もちろん、それは間違っていないんですけど、もっと具体的な風景も描いてみたいという気持ちが最近芽生えてきました。最近はストリングスの編曲に対する関心がすごく高まっていて、弦楽器のアレンジにも力を入れた作品になりそうです。
3月15日、ディスクユニオンお茶の水駅前店で開催されたインストアライブにて(チョン・ジンヒの公式Instagramより引用)
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Interview
전진희: 피아노와 노래, 공간과 호흡
한국 출신의 전진희가 2023년에 발표한 앨범 『아무도 모르게』는 내가 개인적으로 그 해 가장 많이 귀를 기울인 앨범이다. 고요한 피아노와 속삭이듯 이야기하는 그녀의 목소리는 리스너의 마음에 조용히 다가가고, 자신의 내면과 대화하며 매우 개인적인 이야기를 풀어낸다.
대학교 시절 재즈 피아노를 전공한 전진희는 2019년 솔로 피아노 작품집 『Breathing』을 발표했다. 일기를 쓰듯 감정의 미묘한 결을 담아낸 이 앨범에는 「January」부터 「December」까지 각 월의 이름을 딴 친밀하고 투명한 곡들이 수록되어 있다. 올해 1월에는 그 후속작인 『Breathing II』도 막 발표되었다.
올해 3월 초, 한국 인디 레이블 SSE PROJECT로부터 한 통의 이메일이 도착했다. 섬세하고 덧없는 음악 스타일로 잘 알려진 싱어송라이터 Damons Year와 함께 도쿄의 디스크유니온에서 인스토어 라이브를 개최한다는 내용이었다(※이 행사는 종료되었습니다.). 예상치 못한 형태로 첫 내한 공연이 성사되었다는 소식에 거의 반사적으로 인터뷰를 요청하게 되었다.
평온한 음악성의 이면에는 어린 시절부터 성인이 되기까지 그녀가 안고 있었던 갈등이 반영되어 있다고 한다. 전진희는 어떻게 이처럼 고요함을 사랑하는 감성을 키워왔을까. 가슴이 저릿해지는 에피소드들을 알게 된다면, 그녀의 음악이 더욱더 소중하게 느껴질 것이다.
※취재 협력: 디스크유니온
섬세한 감성이 자라난 어린 시절
― 『아무도 모르게』에 깊이 감동해서 언젠가 꼭 인터뷰를 해보고 싶다고 생각했습니다. 먼저 여쭤보고 싶은데요, '고요함'이라는 것이 본인의 음악에 있어서 중요한 테마라고 할 수 있을까요?
진희: 네, 맞아요. 누구에게나 친숙하게 다가갈 수 있는 사운드가 되었으면 하는 바람이 있어요.
― '고요함'을 표현하기 위해서 어떤 부분을 중요하게 생각하시나요? 예를 들어, 진희 씨의 음악에는 아주 아름다운 여백이 있는 것 같아요.
진희: 자기소개를 할 때 항상 '여백'과 '호흡' 이야기를 하게 돼요. 저는 '여백'에 의미를 담고 싶어요. 그리고 '호흡' 이야기는 조금 깊어질 수도 있는데요… 제가 서른 초반쯤에 갑자기 심한 불안장애가 찾아왔어요. '어떡하지?' 싶을 때, 누군가가 '호흡에 집중해보세요'라고 말해줬어요. 그때를 계기로 호흡에 대해 많이 생각하게 됐어요. 살아가는 데 있어서 정말 중요한 거구나 하고 깨달았죠. 그때부터 '내 음악에서의 호흡은 무엇일까?'라는 고민도 하게 됐어요. 그래서 『Breathing』이라는 앨범도 탄생하게 되었고요.
― 진희 씨의 섬세한 감성이 어떻게 자라났는지 궁금합니다. 어떤 어린 시절을 보내셨나요?
진희: 이 이야기는 한국에서 인터뷰할 때도 한 번도 말한 적이 없는데요… 어릴 때는 꽤 열악한 환경에서 자랐어요. 불안정했던 시기에 상담을 받았을 때, 상담 선생님이 ”불바다 속에서 살아 돌아온 사람 같은 인생이네요”라고 말할 정도였어요.
그런데 저는 아무렇지 않은 척, 밝은 척하면서 평범하게 살아갈 수 있는 사람이었어요. 친구들이 ”괜찮아?”라고 물어봐도 항상 웃으며 넘기곤 했죠. 나중에서야 그게 웃으며 넘길 일이 아니었다는 걸 알게 됐지만, 그 당시에는 그냥 ”버텨야 한다”는 생각뿐이었어요.
그런 가운데서도 피아노만은 늘 제 곁에 있었어요. 네 살 때부터 집에 피아노가 있었고, 그러다가 어디론가 팔려가기도 하고, 교회에 가서 피아노를 치기도 하고… 그런 식으로 계속 제 주변에 있었어요. 제대로 레슨을 받은 적은 없었지만, 귀가 좋았던 편이라서 그냥 들리는 대로 쳤어요. 텔레비전에서 음악이 나오면 그대로 따라 쳐보기도 하고, 교회에서도 마찬가지로 그렇게 연주했어요.
― 어린 시절부터 피아노가 아주 가까운 존재였군요.
진희: 일본에 사는 고모 가 계시는데, 그분도 음악을 하셨어요. 피아노가 아니라 콘트라베이스를 연주하셨는데, 어릴 때부터 그 모습을 지켜본 기억이 있어요. 그래서 ”멋지다”라고 생각했고, 자연스럽게 음악의 길을 걷게 된 것 같아요.
― 그때 동경했던 아티스트가 있었나요?
진희: 사실 저한테는 교회가 굉장히 큰 존재였어요. 거의 찬송가를 들으며 자랐다고 해도 과언이 아니에요. 친구들은 멋진 음악을 들으며 컸다고 말하지만, 저한테는 그런 동경하는 아티스트가 딱히 없었어요. 교회 외에는 음악을 접할 기회가 거의 없었으니까요.
이건 어른이 된 후에 깨달은 건데, 교회 음악은 클래식 음악과 굉장히 밀접한 연관이 있는 것 같아요. 예를 들어 바흐를 좋아해서 지금도 자주 듣는데, 그게 (제 성장 배경과) 뭔가 관계가 있지 않을까 싶어요.
”조용히 다가가는 피아노”가 태어나기까지
― 그 후 동덕여자대학교에서 재즈 피아노를 전공하셨다고 들었어요.
진희: 네. 고등학교 3학년 때였어요. 진로를 결정해야 하는 시기가 되었는데, 역시 음악을 해야 하지 않을까라는 생각이 들었어요. 음악은 항상 제 곁에 있었으니까요. 그러다 이것저것 알아보는 과정에서 김광민 선생님을 알게 됐어요. 선생님의 음악을 듣고 아, 이런 음악을 하는 분에게 배우고 싶다라고 생각하게 됐어요.
선생님은 피아노 보이싱의 장인이세요. 다행히도 거의 3년 이상, 졸업할 때까지 선생님께 배울 수 있었어요. 가끔 혼나기도 했지만요. (웃음) 선생님이 들려주신 따뜻한 음색과, 재즈 어법과 클래식이 어우러진 보이싱에 정말 감탄했고, 저도 그렇게 되고 싶어서 계속 노력했어요.
― 진희 씨의 음악에서도 재즈에서 비롯된 즉흥성이 느껴지는데요, 재즈라는 음악에서 어떤 것을 배우셨나요?
진희: 정말 모든 것을 배웠어요. 재즈 피아노를 전공했으니까 4년 동안 열심히 공부했죠. 처음에는 '나는 분명히 재즈 피아니스트가 되겠구나'라고 생각했어요. 그런데 이상하게도 그 방향으로는 가지 않더라고요. 아무리 연습해도 결국 더 조용한 세계로 돌아가게 되는 느낌이었어요.
그래서 '왜 나는 이렇게, 마치 돌연변이처럼 다른 걸까?'라고 자주 생각했어요. 다른 친구들은 다들 열심히 재즈를 파고들고 있었고, 저도 똑같이 배우고 있었는데, 문득 보면 저는 가사가 있는 곡들을 연주하고 있는 거예요. '나, 학교 선택을 잘못한 걸까?'라고 생각했던 적도 있었어요.
― 그런 진희 씨의 연주 스타일에 영향을 준 피아니스트는 누구였나요?
진희: 20대 때는 키스 자렛하고 프레드 허시의 음악 을 자주 들었어요. 그리고 뒤늦게 사카모토 류이치 씨도요. 몇 년 전에 사카모토 씨가 한국에서 공연한 적이 있었는데, 그 무대를 보러 갔어요. 그런데 그 자리에서 갑자기 모든 회로가 한 번에 연결되는 듯한 느낌을 받았어요. 단 한 대의 피아노만 연주하고 있었는데도 마치 오케스트라 전체를 지휘하고 있는 것처럼 느껴졌고요. 저도 모르게 눈물이 흘렀어요. 그 경험을 통해서 내가 꿈꾸던 음악은 바로 이런 거였구나라는 걸 비로소 깨닫게 되었어요.
― 프레드 허시의 어떤 점이 마음에 드시나요?
진희: 프레드 허시도 한국에서 라이브 공연을 본 적이 있는데요, 마치 피아노 위에 별이 떠 있는 것 같았어요. 공연장 전체가 밤하늘에 감싸인 느낌이었고, 분명히 피아노 연주를 보고 있었는데도 계속 하늘을 올려다보고 있는 듯한, 정말 신기한 경험이었어요.
― 키스 자렛 하면, 예전에 『The Melody At Night, With You』 앨범 아트워크가 진희 씨 방에 걸려 있는 걸 본 적이 있어요.
진희: 예전부터 키스 자렛의 음악을 들으면 하나의 이야기가 펼쳐지는 것 같은 느낌이 들었어요. 특히 그 앨범은 듣는 사람에게 조용히 말을 걸어주는 것 같잖아요. 힘들 때나 잠이 오지 않는 밤, 누군가에게 기대고 싶어질 때면 늘 그 앨범을 틀었던 기억이 나요.
この投稿をInstagramで見る 전진희 Jeon jin hee(@jinodanokino)がシェアした投稿 ― 진희 씨의 앨범 『Breathing』은 제목 그대로 호흡하듯이 피아노를 치고 녹음한 게 아닐까 하고 상상하게 되더라고요. 이 시리즈가 어떻게 만들어지게 되었는지 이야기해 주세요.
진희: 아까 말씀드린 불안장애가 왔을 때, 저는 우선 모든 일을 그만두기로 했어요. 그 전까지는 피아니스트로서 꽤 많은 일들을 해왔거든요. 외부 사람들과 작업하고, 연주하고, 다양한 활동들을 했는데, 어느 순간 나는 잘못된 길을 걸어온 게 아닐까?라는 고민이 들기 시작했고, 결국 모든 걸 멈추기로 했어요.
그렇다고 갑자기 다른 취미를 찾거나 새로운 일에 도전할 수 있는 상황도 아니었어요. 정말 힘든 상태였는데, 그냥 피아노 앞에 앉아서 아무런 욕심 없이 연주하기 시작했어요. 그 전까지의 저는 인정받고 싶다, 이 음악을 제대로 완성해야 한다, 같은 생각에 너무 사로잡혀 있었던 것 같아요. 그러다 문득 나는 이런 걸 위해 음악을 했던 게 아니잖아라는 생각이 들어서, 아무런 욕심 없이, 그냥 할 수 있는 걸 해보자고 마음먹었어요.
아마 2019년 4월이었던 것 같은데, 녹음 버튼을 누르고 그저 피아노를 쳤어요. 그게 『Breathing』에 수록된 ”April”이라는 곡이 되었어요. 원래는 저 혼자만 들을 생각이었는데, 그때 SoundCloud라는 플랫폼을 알게 돼서 새로운 마음으로 한 곡씩 올려보자라고 생각하고 업로드하게 됐어요.
솔직히 아무도 안 들을 거라고 생각했어요. 너무 단순하고, 제 감정을 그대로 담은 음악이니까요. 대단한 음악은 아니잖아라고 생각했거든요. 그런데 신기하게도 많은 분들이 들어주셨어요. 그래서 그럼 5월도 해볼까, 6월도, 7월도… 하는 마음으로 계속 녹음을 이어가게 됐어요.
― 진희 씨가 연주하는 피아노는 터치는 굉장히 심플하지만, 한 음 한 음의 울림이 부드럽고 정말 편안하게 다가오더라고요. 연주할 때 어떤 부분을 가장 중요하게 생각하시나요?
진희: 가장 중요하게 생각하는 건 톤이에요. 그런데 그 톤이라는 게, 힘이 들어가 있으면 절대 나오지 않더라고요. 내가 가장 편안한 공간, 혼자 방 안에 있는 것 같은 상태가 되어야만 그 톤이 나오는 것 같아요.
그래서 스튜디오에서 녹음할 때도 최대한 그런 분위기를 유지하려고 신경 써요. 녹음할 때는 아무도 들어오지 못하게 하고, 방 안의 불도 전부 끄고, 고요한 분위기 속에서 혼자 연주에 집중하고 있어요.
”조용히 말을 건네는” 노래 목소리의 비밀
― 시간 순서로 거슬러 올라가 보면, Ravie Nuage(하비 누아주)의 멤버로 2012년에 데뷔하셨죠. 이 밴드는 어떻게 결성하게 되었나요?
진희: 저는 어릴 때부터 곡을 쓰던 사람은 아니었고, 그냥 피아노만 만지고 있었어요. 그런데 왠지 모르게 한 번 무대에 서보고 싶다는 생각이 들었고, 곡을 쓰고 노래하는 친구와 ”그럼 우리 한번, 소규모라도 해볼까?”라는 이야기가 나와서 시작하게 된 게 그 밴드였어요. 저 자신도 그 밴드를 계기로 처음으로 곡을 쓴다는 걸 조금씩 시작하게 됐어요.
― Ravie Nuage의 앨범에도 지금의 진희 씨와 닮은 차분한 곡들이 수록되어 있잖아요. 한편으로는 밴드다운 곡들도 많이 포함되어 있는데, 그 당시의 활동을 지금은 어떻게 돌아보고 계신가요?
진희: 그때는 정말 20대를 전부 바쳤다고 할 수 있어요. 그 시절엔 그것이 저의 전부였거든요. 솔로로 뭔가를 할 계획 같은 건 전혀 없었고, 정말 온 힘을 다해 밴드에 집중했어요. 그 과정에서 많은 행복을 얻을 수 있었고, 무대에 서기 위해 곡을 만들고, 그곳에서 만난 관객들의 반응… 예를 들어 눈물을 흘려주는 모습 같은 것들이 저를 성장시켜줬다고 생각해요. '곡을 만든다'는 건 이렇게 행복한 일이구나, 사람의 마음을 치유한다고까지는 말할 수 없어도, 따뜻하게 감싸줄 수 있는 거구나, 라는 걸 깨달았어요. 지금의 제가 있는 건, 그 시절에 쌓아온 능력 덕분이라고 생각해요.
그리고 저는 처음부터 조용한 음악만을 지향했던 게 아니라, '뜨거운 음악'도 좋아했어요. 그래서 록 밴드의 게스트로도 오랫동안 활동했었고요. 그런 여러 경험들이 Ravie Nuage로서의 활동에 집약되어 있었던 것 같아요. 다만 지금은 제 얇고 작은 목소리에 맞춰서, 자연스럽게 더 조용한 음악으로 향하고 있는 느낌이에요.
― 진희 씨의 노래는 차분하고 말을 건네는 듯한 느낌이 있어요. 그런 노래 스타일은 어떻게 발견하게 되셨나요?
진희: 어릴 때는 교회에서 자주 노래를 불렀어요. 그런데 본격적으로 음악을 배우고, 음악 일을 하면서 훌륭한 가수분들을 많이 만나게 됐고, '나는 노래하면 안 되는 사람이구나'라는 생각이 들더라고요. 그래서 제 목소리를 마음속 깊이 감춰버렸어요.
그런데 서른 초반쯤에 혼자 있는 시간이 많아지면서, 그때부터 곡이 계속 나오기 시작했어요. 왠지 모르게 곡을 쓰지 않으면 안 될 것 같은 마음이 들었고요. 그리고 그 곡들을 제가 직접 불러봤을 때, 그 노래들이 저한테 정말 소중한 것처럼 느껴졌어요. '이 노래들은 내가 불러야 하지 않을까'라는 생각이 들었고, 그때부터 직접 노래를 부르기 시작했어요.
첫 번째 솔로 앨범 『Piano and Voice(피아노와 목소리)』(2017년)에는 제가 노래한 곡이 두 곡밖에 없어요. '내가 노래해도 누가 들어줄까?'라는 의심이 그때는 여전히 있었거든요. 그런데 감사하게도 팬분들이 생기고, '듣고 있어요'라고 이야기해주셔서 그 응원이 지금까지 노래를 계속하게 되는 이유가 되었어요.
솔로 1집 『Piano and Voice (피아노와 목소리)』, 2집 『Our Love Was Summer (우리의 사랑은 여름이었지)』(2019년)
― 싱어로서 어떤 아티스트나 작품에 영향을 받아오셨나요?
진희: 사실 저와 비슷한 목소리를 가진 사람을 만난 적이 없어요. 이렇게 연약한 목소리는 다른 데서 들어본 적이 없거든요. 그래서 어디서든 노래하고 있다기보다는 말을 건네고 있다고 설명하게 돼요. 그만큼 아직도 부끄러움이 먼저 앞서는 것 같아요.
오오누키 타에코 (大貫妙子) 씨의 『UTAU』라는 앨범(사카모토 류이치와의 공동 작업)을 반복해서 들으면서 이렇게 노래하고 싶다라고 막연히 동경했어요. 그리고 최근에는 아오바 이치코 (青葉市子) 씨의 음악을 자주 들어요. 예전에 한국에 오셨을 때 공연을 보고 정말 깊은 감명을 받았어요.
『Without Anyone Knowing』과 차기작에 대한 전망
― 『Without Anyone Knowing (아무도 모르게)』에 대해서도 들려주세요. 먼저 이번 앨범의 콘셉트에 대해 이야기해 주실 수 있을까요?
진희: 제 목소리와 여러 악기들의 조화를 표현하고 싶다는 생각을 많이 했어요. 그동안의 앨범들은 피아노 한 대로만 작업해왔지만, 이번에는 그 세계를 조금 더 넓혀보고 싶었어요. 실제로 밴드 편성의 곡도 두 곡 수록했고, 스트링과 기타도 더해봤어요. 그럼에도 불구하고 고요함이라는 테마는 유지하고 싶었어요. 밴드 편성의 곡이라도 고요함을 느낄 수 있는, 그런 세계를 지향했습니다.
― 가사에 대해서는 어떻게 접근하셨나요?
진희: 어린 시절의 저 자신을 조금이라도 치유하고 싶다는 마음이 있었어요. 그리고 왜 지금도 내가 노래를 계속하고 있는지에 대해 많이 고민하면서 만든 작품이기도 해요. 그런 생각들이 전부 가사에 드러나 있다고 생각해요. 제 자신의 고민과 질문들을 이 앨범에 가득 담아낸 것 같아요.
― 세 번째 곡인 「A Trivial Story(사소한 이야기)」를 정말 좋아해요. 들을 때마다 울컥하게 되는데, 이 곡에서는 어떤 이야기를 하고 싶으셨나요?
진희: 나는 결국 사소한 사람일 뿐이야라고 인정하는 것을 주제로 삼았어요. 그 전까지의 저는 그런 제 모습을 좀처럼 인정하고 싶지 않았던 것 같아요. 나는 더 멋진 사람이 될 수 있을 거야라는 생각으로 살아왔던 것 같거든요.
그런데 이번 앨범을 만들면서 나는 이런 사람이고, 내 그릇의 크기도 이 정도구나라는 걸 비로소 받아들일 수 있었어요. 그리고 그런 나라도 괜찮다고, 그런 나를 사랑해주고 싶다고 하는 마음을 담았어요.
― 진희 씨에게 있어서 『Without Anyone Knowing』에서 특히 소중한 곡을 하나만 꼽는다면요?
진희: 그건 당연히 전부죠! (웃음) 저는 앨범에서 어떤 한 곡만 듣는 것보다 전체를 처음부터 끝까지 쭉 듣는 걸 더 좋아해요. 제가 좋아하는 아티스트나 앨범들도 대부분 처음부터 끝까지 한 번에 듣고 싶어지는 작품들이 많거든요. 그래서 이번 앨범도 그런 느낌이었으면 했어요.
― 정말 그렇네요. 앨범 전체를 통해 일관된 분위기가 느껴지는데, 작품 전체에서 표현하고 싶었던 것이 있다면 무엇인가요?
진희: 밤을 지나 맞이하는 새벽이라고 해야 할까요… 힘든 밤을 보내고 나면 아침이 오잖아요. 그런데 사실 그 아침이 가장 힘들 때가 있잖아요. 밤이 끝났다고 해서 마음이 맑아지는 건 아니니까요. 그래도 그 어둠 속에서 조금씩, 한 걸음씩 앞으로 나아가는 그런 느낌을 표현하고 싶었어요.
― 일본에서도 인기가 많은 한국 인디 밴드인 wave to earth와 「summer, night(여름밤에 우리)」라는 곡을 2021년에 발표하셨죠. 이 콜라보는 어떻게 이루어지게 된 건가요?
진희: wave to earth의 김다니엘(보컬, 기타)을 학교에서 제자로 만났어요. (웃음) 그들이 아직 그렇게 유명하지 않았을 때, CD를 받은 적이 있었거든요. 어느 날 그걸 문득 생각나서 들어봤는데, 너무 멋진 거예요. 그래서 바로 ”같이 만들어보자”라고 제안했어요.
「summer, night」는 wave to earth와 함께 퍼포먼스도 했어요. 제가 대학에서 객원 교수로도 일하고 있는데, jisokuryClub이라는 밴드 멤버들도 제 제자들이에요.
― 이번에 함께 일본에 온 Damons Year와의 교류에 대해서도 들려주세요.
진희: Damons Year의 음악을 정말 좋아해서 ”팬이에요!”라고 여러 번 마음을 전했어요. 그러다 실제로 만나게 되었고, 같이 식사도 하면서 이야기를 나눴는데, 정말 잘 통하고 즐거운 시간이었어요.
― 벌써부터 발매가 기대되네요. 어떤 내용의 앨범이 될까요?
진희: 사실 지금 새로운 앨범 작업을 시작하고 있어요.『Breathing』이라는 앨범을 두 장 발표하면서 ”전진희는 조용히 피아노로 호흡하는 사람이다”라는 이미지가 굳어진 것 같아요. 물론 그게 틀린 건 아니지만, 조금더 구체적인 그림을 그려보고 싶다는 생각이 들었어요 요즘 스트링 편곡에 대한 관심이 굉장히 커져서, 이번 작품은 현악기의 어레인지에도 힘을 준 앨범이 될 것 같아요.