家計簿歴47年、家事アドバイザーとしてメディアでも活躍されている山﨑美津江さん。現在、夫と二人暮らしをしている山﨑さんですが、老後に夫婦が心地よく暮らしていくには、ちょっとした秘訣があると言います。今回は、実際にお宅を訪問し、山﨑さんが長年の試行錯誤を重ねてたどり着いた暮らしの工夫について伺いました。

家計簿歴47年、家事アドバイザーとしてメディアでも活躍する山﨑美津江さん。現在70代で夫と二人暮らしの山﨑さんですが、老後に夫婦が心地よく暮らすためには、ちょっとした工夫が必要だといいます。長年の試行錯誤を重ねてたどり着いた、その暮らしの工夫とは一体どのようなものなのでしょうか。

◆全てのモノに置き場所を決めることが大事

――山﨑さんのお宅のリビングには、余計なものが一切外に出ていませんが……なぜ、このようにきれいに片付いた状態を保つことができるのでしょうか。

山﨑さん:それは、全てのモノに置き場所を決めているからです。出したモノが元の場所に戻れば、散らかることはないのです。

基本的に、“どの場所に置くか”というルール作りは、私がやっています。ですが、時々夫から「思っていたのと違う」「置き場所は右より左がいい」といった苦情が出ることもあります。そういった場合は、話し合ってお互いに歩み寄りながら、より使い勝手がよくなるように置き場所を見直します。

「使ったらしまう」が徹底された山﨑家のリビング

今では、片付けの大半を夫がやってくれているのですが、私が“頭の体操になる”と思って時々置き場所を変えると、文句を言われます(笑)。でも、ずっと同じ場所というのはね……より使い勝手がよい場所に変えることで頭の体操になるし、認知症予防にもなっていいと思うのです。

◆置き場所を決める3つのポイント

――使ったモノをどこに戻すか、夫婦で決めることが大事なのですね。では実際、置き場所はどのように決めているのでしょうか?

山﨑さん:置き場所の決め方は、「取り出しやすい・使いやすい・しまいやすい」を意識しています。特に、「取り出すこと」と「しまうこと」がスムーズにできるよう心掛けていますね。

例えば、片付けをする際、大きなものから整理しようとする人が多いかもしれませんが、私は小さなものから順に置き場所を決めていきます。そうすると、一目で何がどこにあるのかが分かり、スッキリと収納できます。

キッチンの4段式の引き出しで例えると、1段目には毎日使うものを収納しています。輪ゴムや楊枝など、使用頻度の高いものは奥ではなく手前に置くことで、すぐに取り出せるようにしています。

また、散らかりがちな冷蔵庫にはラベルを貼って置き場所を決め、中身が一目で分かるように工夫しています。こうすることで、家族の誰が見ても、どこに何があるのか把握しやすくなりますよね。

ラベリングされた冷蔵庫は、どこに何があるかが一目瞭然

そして何より大切なのは、「使ったら元に戻す」こと。もし使った後、元に戻せなければ、そこは置き場所にふさわしくないということです。

◆お互いがそれぞれの時間を過ごす場所も必要

――老後になると、夫婦ともに家で過ごす時間が一気に増えますよね。お互いが心地よく暮らすために、心掛けていることや意識していることはありますか?

山﨑さん:現役時代は、朝に家を出たら夜まで帰らなかった人が、定年退職後は一日中家にいるわけです。ずっと一緒にいるというのは……正直、なかなか大変ですよね(笑)。そこで、限られたスペースの中でも、夫婦がそれぞれ快適に過ごせる場所を作ることにしました。

日中、お互いが家で過ごすときは、私は自分の部屋、夫はリビングの窓際が“定位置”になっています。食事のときにリビングで顔を合わせるくらいで、ほとんど別々に過ごす日もあります。

夫婦円満のためには、一緒にいる時間だけでなく、それぞれの時間を大切にすることも必要だと感じていますね。

教えてくれたのは……山﨑 美津江さん

家事アドバイザー。1948年東京生まれ。長女出産後、「友の会」に入会し、整理収納や掃除の技術を磨く。NHK「あさイチ」などで「スーパー主婦」として活躍。自宅を公開しての家事アドバイスも行う。家計簿歴は約45年。著書に『再出発整理――心地よい居場所とお金のつくり方――』(婦人之友社)など。

文=All About 編集部