2025年(令和7年)から、子どもを3人以上扶養している家庭に対して、大学の入学金と授業料が無料となる制度が始まります。これは多子世帯が経済的な理由で、高等教育を子どもに諦めさせることをなくすための新たな支援策です。本記事では、この制度の要件や注意点について詳しく解説します。

2025年(令和7年)から、子どもを3人以上扶養している家庭に対して、大学の入学金と授業料が無料となる制度が始まります。これは多子世帯が経済的な理由で、高等教育を子どもに諦めさせることをなくすための新たな支援策です。本記事では、この制度の要件や注意点について詳しく解説します。

◆大学無料の対象となる世帯と子どもとは?

2025年度(令和7年度)より大学無料の対象になるのは、「子ども3人以上を同時に扶養している世帯」です。

世帯が扶養する子どもが3人以上であれば、その子たちが大学、短期大学、高等専門学校(4・5年生)、または専門学校に在学している間、最も年上の子どもから支援が受けられます。

なお、ここでいう扶養とは税法上の扶養です。世帯が扶養する子どもの人数は、日本学生支援機構(JASSO)が「マイナンバー」を通じ、毎年12月31日時点の情報を元に確認します。

新たに始まるこの制度は、従来の「高等教育の就学支援制度」の拡大版であり、多数の子どもを育てる家族が経済的な理由で、子どもに大学進学を諦めさせることがないようにするものです。

◆世帯の所得制限はありません

本制度の大きな特徴として、所得制限がないことが挙げられます。

これまでの「高等教育の修学支援新制度」は、世帯年収に応じて支援額が決まる仕組みでした。しかしながら今回新たに拡充された多子世帯に向けの支援では、世帯の所得に関係なく支援が受けられます。

◆支援されるのは入学金・授業料です

支援対象となるのは入学金と授業料であり、就学する学校の種別に応じて国が定めた額が上限となります。

例えば国立大学であれば入学金28万円、年間授業料54万円、私立大学であれば入学金26万円、年間授業料70万円が上限額となります。

支援されるのは入学金・授業料で国が定めた額が上限です(出典:文部科学省)

この額は、現行の「高等教育の修学支援新制度」における満額支援と同額であり、学生本人に直接お金が支給されるのではなく、大学等の授業料・入学金が減額される形で実施されます。

◆申し込み方法には2種類あります

本制度の申し込み方法には、高校3年生の段階で申し込む「予約採用」と、大学等へ進学後に申し込む「在学採用」の2種類があります。なお開始年度である令和7年度については、「在学採用」のみの申し込みとなります。

○予約採用(高校3年時に申し込み)

令和8年度(2026年度)進学予定者から利用可能

○在学採用(大学在学中に申し込み)

令和7年度(2025年度)は「在学採用のみ」利用可能

申し込みは進学先の学生窓口(奨学金担当窓口)から申請書類を受け取り、日本学生支援機構の「スカラネット」へ登録の上、マイナンバーの確認書類を提出しなければなりません。

◆本制度の注意点

この制度を利用する上での注意点は以下となります。

◇第1子が就職などで扶養から外れると支援が受けられなくなる

例えば、第1子が大学卒業後に就職し扶養から外れると、その時点で多子世帯の条件を満たさなくなり、第2子以降の支援も打ち切られます。

第1子が扶養から外れると2子以降は支援を受けられません(著者作成)

◇大学院生は支援対象外

本制度では大学院生は支援の対象外となります。ただし、大学院生であっても扶養に入っていれば、扶養する子どもとしてカウントされるため、第2子以下の子が支援を受けられる可能性があります。

◇入学時の費用は一時的に自己負担(令和7年度)

令和7年度は「在学採用」のみです。そのため入学時に入学金・授業料をいったん全額支払う必要があり、後日、大学から返還される形となります。

◆まとめ

2025年度(令和7年度)から、多子世帯(扶養する子どもが3人以上)に対し、大学等の入学金・授業料が実質無料となる支援が始まり、より多くの世帯がその恩恵を受けられるようになります。ただし、毎年12月31日時点の子どもの扶養人数で判断されるため、第1子が就職などで扶養から外れてしまうと支援が打ち切られる点には注意が必要です。

2025年度(令和7年度)の申し込みは「在学採用」のみで進学先の大学窓口から申請する形になりますが、2026年度以降は高校3年時に「予約採用」も利用できるようになります。

本制度に該当されると思われる方は、忘れずに申請されることをお勧めいたします。

〈参考〉

文部科学省 高等教育の就学支援新制度

文:川手 康義(ファイナンシャルプランナー)

CFP・1級FP技能士。製薬会社に勤務し、お金にも詳しいMR(医薬情報担当者)として活躍。日本FP協会に所属しており、協会会員向けの研修会や一般の方へのセミナーの企画・運営活動にもボランティアとしてかかわる。

文=川手 康義(ファイナンシャルプランナー)