全国の高校生を対象とした国内最大級のビジネスアイデアコンテスト「マイナビキャリア甲子園」。その決勝大会が3月15日・16日に東京・大手町で行われた。

第11回を迎えた今年は過去最多となる全国3,136チーム、計1万1,595名の高校生が参加。大盛況のうちに幕を閉じた。今回は、初日に行われた「Discovery部門」の模様をレポートしたい。

  • 「第11回 マイナビキャリア甲子園」開催【Discovery部門編】

■「マイナビキャリア甲子園」、第11回のテーマは「Be Adventurers」

企業が出題するテーマに対し、高校生たちがチームを組んで挑むビジネスコンテスト型探究学習プログラム「マイナビキャリア甲子園」。今年のコンテストの大テーマは、「Be Adventurers(冒険者であれ)」で、ここには「新しいアイデアやビジネスモデルを探究する中で、これからの時代を生き抜くための自分自身の道標を発見してほしい」という思いが込められているという。

この大テーマに基づき、参加企業が独自にテーマを出題。その中から高校生チームがそれぞれテーマを選択し、自らの考え出したアイデアを競うというルールで、今年は「Discovery部門」、「Innovation部門」の2部門が設けられた。決勝大会では各企業の選抜チームがプレゼン合戦を行い、大会後半では優勝、準優勝、特別賞〈トリリオンゲーム賞〉が選出された。

3月15日に行われた「Discovery部門」で決勝に勝ち残った代表チームは下記のとおり。

・アート引越センター代表|もこもこバイターズ(帝塚山高等学校)
・河合塾マナビス代表|Ashes(関東学院六浦高等学校)
・Dynabook代表|芝柏生徒会科学班(芝浦工業大学柏高等学校)
・日本生命代表|ロックロック(帝塚山高等学校)
・ミツカン代表|Le lien(桃山学院高等学校/大阪教育大学附属高等学校/大阪女学院高等学校)

■優勝は日本生命代表! 被災地支援に繋がるショッピングサービス「BUYBUY」を提案

「Discovery部門」で優勝に輝いたのは、日本生命代表の帝塚山高等学校の女子生徒4人組「ロックロック」だ。

  • 「Discovery部門」で優勝に輝いたのは、日本生命代表|ロックロック(帝塚山高等学校)

日本生命が設定した課題は、「『誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会』の実現に向けて、日本生命が地域の方々と共に展開する、これまでにない新しい取組を提案せよ」。ロックロックはこれについて「安心して暮らせる社会を作るには、安心できない要因を取り除けばいい」と考え、“自然災害”にフォーカスした。

「『自然災害に不安を感じますか』という防災アンケートでは、『はい』と答えた人が93.5%もいることがわかりました。現代の技術でも自然災害を止めることは不可能。そこで私たちは、震災後も安心して暮らせるシステムを提案します」(ロックロック)

ロックロックのメンバーは能登半島地震の被災地をボランティアとして訪問。そのなかで、【1】震災の影響で廃棄しなければいけない商品が多く存在し、中にはまだ価値のあるものも多く含まれていること、【2】風化によって復興支援金が集まりづらくなっていることの2点に着目し、「物の廃棄問題と被災地の風化問題を解決するため、オンラインショッピングサービス『BUYBUY』を提案します」と主張した。

オンラインショッピングサービス「BUYBUY」は損害保険会社と連携し、災害の影響などで廃棄せざるを得なくなった商品を活用することで新たな価値を付与。それらを販売し、売上の9割を被災地への募金に回す仕組みを採用する。被災地から集められた商品は、日本生命が保有する物流拠点「ニッセイロジスティクスセンター」で保管。販売する際はAIが自動で査定し、市場価格よりも手頃な価格で提供するという。消費者は通常よりも安価に商品を購入でき、同時に被災地への復興にも貢献できるという一石二鳥のシステムだ。

「地域と深い関わりをもつ日本生命の約5万人の職員だからこそ、地域の状況や出品された商品の生産背景を知ることができ、それにより顧客は自分の購入体験を通じてより社会に貢献したということが実感できます。さらに、約3,000万件の個人保険契約保有数を誇る日本生命が『BUYBUY』を提供することによって、多くのユーザー獲得へ繋げることができます。『BUYBUY』は、日本生命でしかできないサービスです」。

さらに、保険未加入率の高い10〜30代を中心にターゲティングすることで、新規契約者数の増加も見込むことができ、日本生命の利益も増加すると予想しているという。

大会でプレゼンターを務めたマイナビ執行役員の藤島潤氏は、優勝に輝いたロックロックについて、「日本では災害が非常に増えていて、今まさに必要なサービスだと思います。社会課題の設定が本当に素晴らしく、日本生命だからこそできるサービスだというところも素晴らしい。災害支援という一貫したコンセプトを貫いているところも素晴らしく、今回の評価になりました。おめでとうございます」と賛辞を送った。

また、準優勝はDynabook代表の「芝柏生徒会科学班」(芝浦工業大学柏高等学校)とアート引越センター代表の「もこもこバイターズ」(帝塚山高等学校)の2チームが受賞。

Dynabook代表・芝柏生徒会科学班(芝浦工業大学柏高等学校)のお題は、「35年前に冒険者としてノートPC市場を切り拓いたdynabookのように、AI時代の冒険者として、世界が抱える社会問題を解決し人類が快適に暮らせる新時代へと導くPCやサービスを創造せよ」。芝柏生徒会科学班は、過労死に着目したうえで、働き方改革を促進し、新時代の働き方に繋げるサービスを考案。dynabook社のエッジAI処理を用いて、社員の疲労度を統計的に管理する疲労度管理システム「dynaVision」を提案した。

  • 準優勝を受賞した、Dynabook代表|芝柏生徒会科学班(芝浦工業大学柏高等学校)

アート引越センターの代表「もこもこバイターズ」(帝塚山高等学校)で、課せられたお題は「『あったらいいな』をカタチにしてきたアート引越センターの経営資源を活かし、世代や性別を越えてみんなが心躍る“人生の節目をお手伝いする”新ビジネスを提案せよ」。これに対し、もこもこバイターズは“廃校”を活用し、アートチャイルドケアと住宅型有料老人ホーム、そして商業施設をミックスした「商業一体型幼老複合施設」として集客することを提案した。

  • 準優勝のアート引越センター代表|もこもこバイターズ(帝塚山高等学校)

特別賞〈トリリオンゲーム賞〉を受賞したのは河合塾マナビス代表の「Ashes」(関東学院六浦高等学校)。お題は「河合塾マナビスのこれまでの特長を踏まえ、若年層の新習慣を生み出す新しい事業を提案せよ」と設定した。Ashesは「高校生が投資を始めることで、社会への興味関心が向上し、興味のある分野へ出会うキッカケになる」として、若年層の新習慣として“投資”を浸透させるべきだと主張。生徒一人ひとりに合った進路選択支援を強化するために、金融(ファイナンス)と河合塾マナビスをかけ合わせた新サービス「ファナビス」を提唱した。

  • 特別賞〈トリリオンゲーム賞〉を受賞したのは、河合塾マナビス代表|Ashes(関東学院六浦高等学校)