三井住友信託銀行は3月18日、新しいNISAに関する調査の結果を発表した。調査は2025年1月、全国の18~69歳(関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く)11,435名を対象にインターネットで行われた。

NISA口座数は増加傾向、2024年は急伸

2022年11月に岸田内閣から発表された「資産所得倍増プラン」では、柱の1つに「家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせる NISAの抜本的拡充や恒久化」が打ち出された。ここでは、NISA口座数を当時の1,700万口座から、5年間で3,400万口座に倍増させる目標が掲げられている。

2024年に「新しいNISA」が始まり、1年が経過した。口座数はこの1年で約2,125万口座から約2,560万口座へ約436万口座(約17%)増加し、国民の「貯蓄から投資へ」のマインドチェンジが伺える。

  • 図表1 四半期ごとのNISA口座数の推移(2019年3月末~2024年12月末)

資産形成制度としてのNISAの認知度は?

1万人のアンケート回答者に「制度として知っているもの」を複数回答で選択してもらったところ、NISA制度の認知度が6割と圧倒的な結果となった。資産形成の制度における認知度は、NISA制度がトップ、次いでiDeCo(個人型確定拠出年金)、財形・社内預金等が続いている。一方で、どの年代においても「この中にはひとつもない」との回答が3割程度存在し、認知度の格差がありそうなことが伺える。

  • 図表2 「資産形成のための制度」の認知度(複数回答可)

この1年でNISAの認知度や利用状況はどう変わった?

新しいNISAが始まって以降、メディア等において「NISA」に関するテーマの露出も増加しているが、この1年でその認知度ならびに利用状況はどのように変化したのか。

2024年1月に実施された調査データと時系列で比較すると、NISAの「認知度」は、全体で14.3%の伸びとなり、どの年代も10%以上の上昇、「利用者」は7.0%の上昇となった。年代別では、特に60代の認知・利用が1年で最も伸びていることが分かる。すでに利用者が多かった30代は、相対的に伸びが少ないものの、利用率は依然トップの状態だ。

  • 図表3 NISA制度を「知っている」「利用している」割合の時系列比較(2024年-2025年)

NISA利用意向

NISAを利用していないと回答した人に対し、「NISA制度を今後利用しますか」と聴取した。すると、「利用済み+利用意向者」の総和は伸びている(30.8%⇒34.1%)ことが分かった。

一方で、「利用しない・おそらく利用しない」旨の回答者も顕著に伸びている(29.0%⇒36.7%)ことが分かる。NISAを利用するのかしないのか、この1年である程度はっきりさせた人が相当数いることが伺える。

  • 図表4 NISAの利用者と未利用者における利用意向の時系列比較(2024年-2025年)

さらに、このデータを年代別に分析すると、18-29歳以下のNISA検討とNISA利用が最も進み、かつ、60代の「利用しない」層が顕著に多いことが分かった。

  • 図表5 年代別:NISAの利用者と未利用者における利用意向の時系列比較(2024年-2025年)

金融教育の経験やライフプランニングがカギか

次に、保有する金融資産額と利用率・利用意向をクロス分析した。これを見ると、18-29歳の一部を除き、どの年代も「資産額」が多いほど「NISA利用者/利用意向者」は多い傾向であることが分かる。年代間を比較すると、若年層は資産が少なくてもNISA利用が進んでいる。図表6の左側のグラフを見ると、資産額500万円未満の18-29歳の利用率と、資産額1,000万円~2,000万円の60代の利用率がほぼ同じであることが分かる。この傾向は、図表6の右側のグラフのとおり、「利用意向者」を含めても同様となっている。

  • 図表6 年代別:保有金融資産ごとのNISA利用者/利用意向者割合

もう1つ、顕著に差が出ているのが、「金融教育の受講経験」や「ライフプランニング」だった。図表7のとおり、どこかしらの"場"で、金融教育を受けた経験がある人は、NISAの利用済+利用意向ありの割合が、未経験者に比べて大きくなっている。特に、実際にNISAを活用できる年齢に達しているであろう、「短大生・大学生・大学院生・専門学校生」や「社会人」のタイミングで教育を受けた層は、NISA利用率が顕著に高い傾向がみられる。

また、図表8のとおり、「ライフプランを立てている人」は、そうでない人に比べて顕著にNISAの活用が進んでいる。自身の長期的な"家計のあり姿"を描くことで、そのプラン実現に向けたアクションとして「NISAを活用した資産形成」が選ばれているものと推察される。

  • 図表7 金融教育を受けた時期(複数回答可)とNISA利用者/利用意向者割合

  • 図表8 ライフプランを立てている度合いとNISA利用者/利用意向者割合