「テレビ朝日新人シナリオ大賞」第23回大賞に選出された松下沙彩氏の『スプリング!』。“小論文”をテーマに、高校生の葛藤と恋をさわやかに描いた同作がテレビ朝日でドラマ化され、3月21日(23:15~24:15)に放送される。主人公・逢坂碧を演じるのは、乃木坂46の5期生で、最新シングル「ネーブルオレンジ」で中西アルノとともにセンターを担う井上和。今作で地上波ドラマ初出演にして、初めての主演を務める。

インタビューでは、グループの看板を背負う緊張感を実感したという撮影現場や、苦手だったという“瞬発力”への意識の変化について話したほか、井上がこれまでに一番高いと感じた“ハードル”についても明かした。

  • 乃木坂46井上和 撮影:宮田浩史

    乃木坂46井上和 撮影:宮田浩史

地上波ドラマ初出演で主演に抜てき「本当に私で大丈夫なのか」

――今回、地上波ドラマ初出演で主演を務められましたが、主演が決定した際にはプレッシャーや緊張はありましたか?

いちばん最初は嬉しいという素直な気持ちだったんですが、台本を読んだりして、どんどん撮影に近づくにつれて、「本当に私で大丈夫なのか……」という不安が出てきて。撮影初日はかなり緊張していました。

――乃木坂46としても様々なステージなどを経験されている井上さんでもそんなに緊張されたんですね。

ベクトルの違う緊張感だったと思います。ライブで人前に立つのも、もちろん緊張するんですが、乃木坂46に加入して3年が経ってファンの方とも信頼関係もできてきているので、最近はいろんな私がいるけど、それも受け入れてもらえるんじゃないかなと思えるようになってきています。

ただ、すごく大きなこと言ってしまうと、今回のように私1人で参加する現場は、私が乃木坂46の看板を背負っているので、ここでグループの印象を悪くしてはいけないと思うんです。それはスタッフさんやキャストさんに対してもですし、この作品を観てくださる方に対しても、一生懸命がんばらなきゃいけないと。そう考えたときに「果たして私で大丈夫なのか」という不安と葛藤していたんですが、撮影が終わって振り返ると、とても楽しくて!

初日がいちばん緊張しましたが、そこから緊張感はありながら楽に演技ができるようになったのは、現場の雰囲気のおかげだと思います。

――グループから離れたおひとりでのお仕事でも、グループに対する意識をずっと持たれているんですね。現場はどんな雰囲気でしたか?

監督さんやスタッフさんが「良かったよ」と声をかけてくださって、皆さんの優しさのおかげでとても居心地がよかったです。メイクさんやスタイリストさんともどんどん距離が縮まって、普段の自分に近い状態で現場にいることができました。

ドラマ現場でも求められた“瞬発力”は乃木坂46の活動との共通点

――演技経験でいうと、これまで『乃木坂46"5期生"版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」2024』などの舞台に立った経験もありますが、映像作品の撮影で新しい発見はありましたか?

舞台は長い期間をかけて作り込んだものを皆様にお届けするもので、稽古の間に何回も何回も同じシーンをやって、その稽古中に発見もありますし、本番中もお客さんが入ると感情も変わったりとそういう発見がありました。

ただドラマは台本の読み合わせはあるけど、現場でやっている自分の演技が全てなんだと感じました。準備はできるようで、できないというか……その瞬間で変わる自分の感情とかもあって、おもしろいと思うと同時に難しさを実感しました。

――確かに同じシーンを何度も演じて積み重ねるという面で言うと、舞台よりは圧倒的に回数は少ないですね。その分、瞬発力も求められそうです。

本当にそれはすごく感じました! 普段の乃木坂46としての活動の中でも、「井上は対応能力がないから、そこをがんばりたいね」と言われることも多くて……自分でもそう思うし、私は準備してきたものを皆様にお届けするのは好きで得意なんですが、その場でいきなり何かしなきゃいけない場面になると、「どうしよう……」となってしまうことが多いので、その点は今回の撮影でも苦戦はしたかなと思います。

――確かに乃木坂46としての活動でも瞬発力や対応力を求められる場面は多くありそうですね。

ライブのMCなどでも、「これを投げかけられたらこう答えよう」と準備してきたものがあって、それが1つでも崩れちゃうとどうしたらいいかわからなくなっちゃうこともあります。特に加入当時はやり取りもワンラリーしか考えられないから、それ以上続いてしまうと、お手上げ状態になってしまっていました。

楽曲をお届けするために歌やダンスを一生懸命練習して覚えて、それを見てもらうのは好きだし得意だけど、MCやトークなどその場の対応力を求められることには、どこか苦手意識があって、今までは「私にはできないな」と思っていましたが、今回のドラマ撮影を通して、いろんな人の言葉を聞いて、そのときに生まれた感情で、こういう風にしたらいいんだと学ぶことができた時間がすごい楽しかったです。

――番組で寸劇の経験もありますが、その経験が活きたことはありましたか?

スキット(寸劇)もやらせていただいていて、よかったなとすごく思いました! バラエティ番組もそうなんですが、目の前にお客さんがいるライブや舞台と違って、届ける相手がカメラの向こう側にいる収録撮影は、皆さんがどういう反応をしてくれるのかがわからないので怖いと思っていたんです。今回は、スキットをやらせていただいた経験があったからそこに対しての恐怖は感じるけれども、初めてスキットをやった時よりも感じなかったんです。それがとても良かったなと思いました。

学生時代も過密スケジュール 転機となった高校2年生

――今作は、高校生である碧のまさに青春といった物語でしたが、井上さんご自身の学生時代で1番青春だった思い出を教えてください。

私はやっぱり部活ですね! 弓道部に所属していて、本当に毎日弓道をやっていました。それこそ私は高校2年生の時に「3年生になったら受験とか色々あるから、2年生のうちにできることをとにかく全部やろう」と思って。そうしたら、やりたいことが多すぎて予定がパンパンになっちゃって(笑)。朝練も3人以上いれば自由にやっていいというルールだったので、ほぼ毎日やっていました。授業を受けて、放課後も部活、その後に塾に通って23時ぐらいに帰宅、次の日も朝6時に家を出て朝練みたいなスケジュールで、今振り返っても忙しかったなと思うんですが、ずっと何かに向かって走り続けてる時間は青春だったなと思います。

――今ももちろん忙しいと思いますが、学生時代からそんな過密スケジュールだったんですね(笑)。

あとは乃木坂46のオーディションを受けたのも高校2年生のときですし、絵も勉強したかったので画塾に通い始めたりなど、いろいろ挑戦していた時期でした。

――まさに転機になった時期ですね。今回、小論文を題材に碧が受験という“ハードルに挑む”姿も描かれている物語だと思いますが、井上さんが経験したなかで、いちばん印象的だった“ハードル”を教えてください。

私は2023年の「真夏の全国ツアー」が個人的にはとても記憶に残っています。様々な感情が入り交じっていた時期でした。

私は2023年夏にリリースしたシングル「おひとりさま天国」でセンターを務めさせていただいたのですが、そうすると夏のツアーでも任せていただく場面が多くて。2023年は2カ月で全国16公演という内容だったので、ライブを2日間やって中日が1日、次の日から別の土地でライブというスケジュールで、ほぼ毎週ライブをやらせてもらっていたんです。

ライブ中にスピーチをする場面があって、毎公演違う内容を考えるのですが、話したいことはいっぱいあるはずなのに、私の言語化能力が低すぎるのと、いっぱいいっぱいになってしまっているせいで、自分が何を言いたいのか、何を伝えたいのかわからなくなってしまっていました。

でも、そんな状況のなか全16公演、一生懸命ファンの方に向けてお話しをさせていただいて、その期間はしんどかったし、大変だったけど、今は「その時期を乗り越えられたから大丈夫な気がする」と思えるくらい、自分の中では大きい出来事でした。

――センターとしての重圧やグループを代表するプレッシャーにも正面から向き合った時期なんですね。乗り越えられたきっかけや出来事で覚えていることはありますか?

やっぱり1人では乗り越えられなくて、メンバーの力は大きかったです。私は特に先日卒業された与田祐希さんにお世話になりました。私がいっぱいいっぱいになって、人とどう接したらいいのかもわからなくなってしまって1人でご飯を食べていたら、与田さんが隣で一緒にご飯を食べてくれたんです。そのときに支えてくれる人が自分にもいるんだから、がんばらなきゃ! と思えたことがきっかけで乗り越えられました。

■井上和
2005年2月17日生まれ。2022年に乃木坂46の5期生オーディションに合格し、グループに加入。2023年には33rdシングル「おひとりさま天国」で初センターを務めた。2024年には、ファッション誌『non-no』(集英社)の専属モデルに就任。4月22日には、1st写真集『モノローグ』(講談社)を発売する。3月21日放送のテレビ朝日『スプリング!』で地上波ドラマ初出演で初主演を務める。