「このバッターに対してどういう配球をする?」という問いかけを続けてい…

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第97回選抜高等学校野球大会が2025年(令和7年)3月18日から13日間、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)にて開催。今年も熱戦を繰り広げる。22024年大会では悲願の初優勝を成し遂げ、連覇を目指す健大高崎の「守備メソッドとは?」《健大高崎・木村亨 バッテリーコーチ編》(3月17日発売『高校野球界の監督が明かす! 守備技術の極意』より一部抜粋)

正捕手の条件は「大人とコミュニケーションを取れる」こと

 

――― どういう目線で、練習試合を観ているんですか?

 

木村 基本的には、毎試合テーマがあります。

試合前にキャッチャーから、「今日はこういう配球で行こうと思います」という話があり、そのあとにバッテリーで確認して、組み立てを考えるようにしています。

先発完投を予定しているのなら、1巡目、2巡目、3巡目、4巡目で何を軸にしていくのかをある程度は考えておく。

同じ配球をしていたら、中盤以降に捕まってしまいます。

 

――― 準備をしたうえで試合に臨むと。

 

木村 そういうことです。そのうえで実際に試合に入ってからは、その日に使える球種を早く見つけて、それをどうやって生かすかを考える。

練習試合ではベンチに入ることが多いので(*公式戦ではベンチに入れない)、守備から戻ってきたときに、「あそこでスライダーを使ったのは何で?」と聞くようにしています。正解や間違いがあるわけではなく、その狙いを確認するためです。

そのときに会話が成り立たないようなキャッチャーは、なかなか活躍できません。

 

――― 健大のキャッチャーは毎年、自分自身の言葉を持っている印象です。

 

木村 肩の強さやキャッチングはもちろん大事ですが、大人とコミュニケーションを取れることが、正捕手に求める大きな条件のひとつです。

今、正捕手を務める小堀(弘晴)は何度も問いかけていきながら、自分の言葉で表現できるようになってきました。

 

――― 実際に、キャッチャーとしての頭脳はどうやって育てていくのですか。

 

木村 1年生のときから、練習試合で私の隣に座らせて、バッターの見方を教えながら、「このバッターに対してどういう配球をする?」という問いかけを続けていきます。箱山は最初からしっかりと考えを表現できていて、キャッチャーとしての感性を持っていましたね。

――― 具体的に、配球はどうやって教えていくのでしょうか。

 

木村 まずは、バッターの基本的な見方を教えます。たとえば、トップのときにグリップの位置が高いバッターは、高めにバットが出づらく、低めにバットが出やすい。

ただし、あくまでも傾向に過ぎないので、例外は当然出てきます。そのうえで、セオリーを伝えていきます。

基本線はバッターの目からもっとも遠いアウトロー。そのラインを軸にして、バッターの反応を見ながら、外に出すか(ボール球)、逆に行くか(インコース)を決めていきます。

アウトローに対してしっかりと踏み込んでくるのであれば、インコースが必要になり、踏み込まないのであれば、外の出し入れで勝負ができる。

踏み込まないチームなら、ずっとアウトコースでも構わない。インコースはひとつ甘く入ると長打のリスクがあるので、やみくもに使うコースではないと思っています。

 

――― インコースは連続で投げさせるような球でもないですか。

 

木村  そうだと思います。インコースに投げ切ったあとに、もう1球、インコースに要求するキャッチャーがいますが、「そんな厳しいところに2球続けて投げられないだろう」という話はします。

ピッチャーの心理を考えると、「1球前よりも厳しいボールを投げなければいけない」と考えがちです。だから、インコースに関しては、1球投げ切れたら大拍手。次はその球を生かして、違うコースや球種で攻めていけばいいわけです。

 

――― 右対右、あるいは左対左で、外のスライダーで2球空振りを取って、次に同じスライダーを投げられれば三振……と予想できる場面でも、真ん中にスライダーが抜けて打たれる場面を目にします。

 

木村 それがピッチャー心理です。「より良い球を投げよう」と思うことが、力みにつながっていくものです。キャッチャーはそれを頭に入れておかなければいけません。

 

――― インコース攻めにつながる話ですが、ホームベースにベタ付きをして、インコースを消す高校もありますが、そのときはどんな考えで攻めればいいのでしょうか。

 

木村 インコースは多少甘くなってもいいと伝えています。厳しく攻めすぎると、デッドボールのリスクもあるので。

気を付けておきたいのは、バットを短く持って真ん中甘目をフルスイングしてくるバッターです。長打の危険性がある。こういうバッターに有効なのは、外の出し入れと、真ん中低めへの緩い球。

短く持っている分、体から遠いところや低いところは長打になる可能性が低いと言えます。

 

――― 新基準バットになったことで、「緩い球が効果的」という声を聞くようになりました。

 

木村 非常に有効です。反発力が低いので、外野フライで打ち取れる確率が上がっています。

 

――― 2ストライク後にノーステップで対応するチームも増えていますが、どんな配球が必要でしょうか。

 

木村 ェンジアップ系でタイミングをずらせば、前に泳いで当てるバッティングになりやすい。

ノーステップにするほど、緩急への対応が難しく、ボールとの間合いが取りにくくなります。

 

 

▼木村亨(きむら・とおる) 健大高崎バッテリーコーチ

1969年11月21日生まれ、埼玉県出身。帝京高〜中央大。北本東中から帝京へ進学し、3年時に主将、捕手として春夏甲子園出場を果たす。中央大卒業後は働きながら中央大準硬式野球部、北本東中で外部コーチを務める。2015年より健大高崎の外部コーチに就き、バッテリーの指導を担当する。

 

書籍情報

『高校野球界の監督がここまで明かす! 守備技術の極意』

定価:1980円(本体1800円+税)

全ポジションの指導を網羅

新基準バット対応マル秘上達メソッド

守備を制するものが高校野球を制す――。

2024年春の公式戦から、「新基準バット」が本格的に導入された高校野球。

「新基準バットになったことで、守りの重要性がこれまで以上に高くなっている」

多くの指導者が口にしている言葉だ。

そこで、2018年から続く「技術の極意シリーズ」の第5弾として選んだテーマは、「守備技術」である。

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書籍『高校野球界の監督がここまで明かす! 守備技術の極意』

 

【了】