
3月15日、東京・Zepp Shinjukuにて、edhiii boiによる自身最大規模のワンマンライブ『edhiii boi Oneman Live "大人になんてなりたくない"』が開催された。edhiii boiとは、2022年にSKY-HIがCEOを務めるマネジメント/レーベル・BMSGより中学生ラッパーとしてデビューしたアーティスト。高校2年生の頃にリリースした”おともだち”は、「2024年上半期TikTokソング・チャート」にて2位を獲得するほどのヒットとなった。満員のオーディエンスは10〜20代を中心に、60代までと幅広い。さらには「お子様エリア」も設けられており、edhiii boiのトレードマークである赤い帽子をかぶった少年もたくさん集まった。この春に高校を卒業し、学業と音楽を両立した日々の集大成として開催したワンマンライブにて、edhiii boiが表現したことを一言で表すならこうだ――edhiii boiは「高校生」から「ヒーロー」へ。
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ライブは、タイトルにもなっている「大人になんてなりたくない」からスタート。真っ暗な中でステージに登場し、スポットライトがあたると、なんとedhiii boiは金髪になっている。続けて歌った「2025」には〈やっと顔が売れたところなのに 俺を縛る校則/髪は黒く染められ〉というリリックがあるが、高校を卒業し校則から解放されたedhiii boiはファッションも自由になり無敵状態。これまで以上にカリスマ性をまとった存在感に、曲が終わると「edhiii―!」と呼ぶ大きな声が飛び交った。
無音の中で「GALAXY」のラップを始めると、さらにデカい歓声が上がる。LEDビジョンには街中で歌うedhiii boiや、水や青い炎をイメージさせるグラフィックなどが映る。エモーショナルなギターから始まる「edhiii boi is here」では、おなじみのedhiii boiのキャラクターがビジョンに登場し、カラフルでポップな仕立てに。ストリート、青春、繊細さ、未来感、ヒップホップ、テクノ、ハイパーポップ、ロック……そんなことをいちいち羅列するのも野暮なくらい、さまざまな要素を混ぜ合わせて〈誰も真似出来ない〉くらいクールなものを作ろうとするedhiii boiの世界観が冒頭から全開だ。
Photo by Satoshi Hata
「青い春」は、青色と白色のサーチライトが動き回る中、初めてのワンマンライブの映像を映し出しながら歌った。edhiii boiが高校時代に経験してきた「青春」を振り返り抱きしめてから、カラフルに彩られた空間の中で〈僕らは今未来へと進む〉と「スーパーヒーロー」を歌う。「僕は町のスーパーヒーロー」と語るように発し、うしろのビジョンには雲が流れる映像が投影されていて、まるでedhiii boiがヒーローとして雲の上を飛んでいるようだった。
MCでedhiii boiが「みんな仲良くなって一緒に帰ってくださいよ」と呼びかけたら、今日ここに集まったオーディエンスはみんな「おともだち」だ。〈言う 愛してんぜ Friends 「ホンマありがとう」〉の合唱が美しく響き渡ると「最高だぜ」とedhiii boi。自分の音楽を愛してくれている、目の前にいる「おともだち」に「いつもありがとう」とシャウトすると、アツい拍手が湧き起こった。
「kawaii」「不思議な国のアリス」では会場がピンク色に染まったり、ビジョンにはハートが浮かび上がったりするが、やはり今のedhiii boiは「かわいい」以上に「頼もしい」と感じさせる。歌声も熟しこれまで以上に安定感を獲得し、オーディエンスの心をしっかりと乗せられる頼もしさがある。次の「TOKYO」での〈また戻ってくるこの場所に〉という言葉と駆け上がるメロディも、オーディエンスが頼り続けられるアーティストとして生きることを宣言するようだった。〈あいつが言ってた 人生は一回〉の「あいつ」は、edhiii boiにとって憧れであったが約2年半前に亡くなった「YOSHI」と言い換えて歌った。そして「Higher Up」でも「誰ひとり置いていかないからな!」とシャウト。孤独な寂しさも涙も心の膿も、すべて放出しながら踊らせてくれる音楽が生まれていたシーンだった。
海辺に公衆電話がぽつんとある映像を背負いながら歌い始めたのは、「全部僕のせい」だ。さきほどの堂々とした存在感とは変わって、か弱い自分を見せる。しかし「忙しいんだわ」ではまた狂気すらまとうようなファイターの姿になるのだから、いろんなキャラクターをステージ上に登場させることができるedhiii boiのすごさに驚く。ただ、そのどれもが「偽物」などではなく、理想の自分や自分の中にある多面性をすべて音楽で表現し尽くしているのだ。
Photo by Satoshi Hata
そもそも〈忙しいんだわ〉というフレーズは、「118」で初めて歌ってキーラーワード化したもの。次の「Uiteru」では、〈どうも どうも〉の合唱が起こる。口にしたくなるフレーズを曲の中で生み出す天才だと改めて思い知る。”Uiteru”では無音の中で高速ラップを繰り広げて歓声を呼び、声だけで踊らせる天才であることも証明していた。
「Uiteru」「カメレオン」と畳み掛けて、夜中のクラブのクライマックス状態みたいに盛り上げたあと、小学生の頃からラップを作ったりダンススクールに通ったりしていたことを振り返り、「やっとZeppまで来ました。ここまで早かったよ、って言ってくれる人もいるんだけど、俺からしたらめっちゃ長かったからね」と語った。「EP(『大人になんてなりたくない EP』)どうでした?」とフロアに聞くと全員が「最高!」と叫ぶが、「一番好きだった曲は?」という質問に対しては答えが見事にばらばら。その状態に「まじで嬉しい」とこぼしていた。
Photo by Satoshi Hata
「ここからはゆったりしながら行こうかなと思います」という言葉を合図に始まったのは、「おとぎ話」「宇宙(ソラ)」。客席を見ながら、ときに手を振って、歌心で一人ひとりを掴んだ瞬間だった。そして鳥の鳴き声や学校のチャイムの音で世界観を作ってから歌ったのは、「花火 feat. SHU」。SHUとは、edhiii boiと同じ高校に通う後輩のシンガー。学校の廊下から聴こえてきた歌声に惹かれて、コラボをオファーしたという。この日も第一声から歓声が上がるほど、人を感動させる力のある透明感溢れる声だ。鳥肌が立った人も多かっただろう。歌い終えると大きな拍手が起こっていた。
ここからは「みんなと歴史を振り返る時間」。人生初ライブ『THE FIRST FINAL』でSKY-HIらと披露した「Snatchaway」を、『THE FIRST』のオーディションを受けていた時の映像が流れる中で歌った。そしてソロデビュー前に完成させたSKY-HIの楽曲「14th Syndrome」へとシームレスに続ける。RUIが歌うパートをオーディエンスも合唱していたこともエモーショナルさを掻き立てた。そしてデビュー曲「NO」へとつなげることで、『THE FIRST』に応募した2020年から2022年のソロデビューまでの軌跡を辿った。さらには「これ、何の時の服かわかる?」という質問にファンが「”118”を披露した時!」とシャウトすると、「NO」の翌週にリリースした、edhiii boi、SOTA(BE:FIRST)、Novel Coreによる「118」が始まる。なんとSOTAもサプライズ登場! 3人のヒップホップと仲間に向ける愛が炸裂する豪華な瞬間だった。SOTAは「このキャパでedhiii boiを見られるのは今のうち。edhiii boiとの人生を楽しんでください!」と、edhiii boiのファンに伝えてからステージを去った。そしてNovel Coreとともに、edhiii boi自身も「書きながら救われた」という新曲「爆走 feat. Novel Core」を全力で届けた。
Photo by Satoshi Hata
エネルギッシュにedhiii boiの音楽を楽しむファンのことを誇らしそうに、満員の美しい景色を「すごいっしょ!」とNovel Coreに自慢するシーンも、この日の印象的なシーンのひとつだった。味方がいないと思っていた自分に、今は大勢の味方ができた。自分のためだけに歌うのではなく、目の前の人のために歌いたい――そんな想いが強く表れていたのが、この日のライブだった。「Forever Friend」を歌い上げたあと、edhiii boiがステージをあとにする直前に残した言葉はこうだ――「悩んだとき、しんどいとき、僕の音楽が証明してあなたを必ず救ってくれると思う」。
アンコールで再びステージに呼ばれたedhiii boiは、10代の焦燥感や不安を鋭利なギターとともに表現する「マジだりぃ」を投下。10歳の頃の声と映像と今のedhiii boiを掛け合わせながら歌う「夏休み」では、Zepp Shinjukuが愛の深いファンで埋め尽くされている景色を前に《憧れの世界ママに見せる》と歌い、「今日まで音楽を続けてきてよかった」とシャウト。さらに目に入った少年にグッズのボストンバッグをプレゼントし、「夢はあるの?」と尋ねる場面も。ガムシャラに憧れの景色を追い求めてきたedhiii boiは今、誰かにとってのヒーローとして夢を応援する立場になっている。
Photo by Satoshi Hata
「これからもそばにいるから、みんなもそばにいてください」と曲中で語った「Flower」を経て、ラストは新曲「天才ギャング」を初披露。ハードなビートの上で〈天才ギャング〉と叫び散らす、edhiii boiいわく「まっすぐの自己紹介ソング」。「GALAXY」や「Uiteru」に並ぶような会場をブチ上げるサウンドで、今までにないくらい遊び心をふんだんに発揮したインパクトのある一曲だ。この曲が今後のedhiii boiをどう動かしていくのかが楽しみである。
4月9日には、「天才ギャング」やこの日歌った多くの曲を含む3rdアルバム『大人になんてなりたくない』をリリースする。そして、5月からは大阪・名古屋・東京をまわる初のワンマンツアー『edhiii boi 1st TOUR 大人になんてなりたくない』の開催が決定。さらにはこの日、ファンクラブの開設も発表した。「関西人だから、まじでおもろい動画上げていくからね」とのことで、まだ見たことのないedhiii boiの一面がファンクラブ内で見られそうだ。高校を卒業し勉強や校則から自由になったedhiii boiは、アーティストとしてのオリジナリティを追求しながら、誰かのヒーローになるべく、より一層精力的に音楽活動を展開していく。