第一世代のZ4に注目|未来的スポーツカーBMW Zモデルを徹底比較【Z4編】

この記事は「Z8の価値はこの先も揺るがない|未来的スポーツカーBMW Zモデルを徹底比較【Z8編】」の続きです。

【画像】BMW Z3の後継モデル、Z4のインテリアやエンジン(写真4点)

Z3を引き継いだZ4

Z3とZ8はともに2003年にステージを降り、Z4がZ3の直接の後継モデルとしてバトンを受け取った。Z4はモデルチェンジを受けた唯一のZモデルでもある。とはいえ私たちが注目するのは第一世代のZ4である。Z3同様、Z4も多種のパワートレーンが用意されており、また最初に発売されたロードスターとともにクーペも計画されていた。当時のBMWは論議を呼んだクリス・バングルによる「フレーム・サーフェシング」(日本では”揺れる炎の面造形”と説明された)の時代に入っており、「Z」は再びアバンギャルドを象徴することになった。

ルックスは今でも際立っている。個人的には、特にクーペ仕様は2座のスポーツカーの形として抜きんでていると考える。伝統的なフロントエンジン/リアドライブのプロポーションが明確なエッジと削り取ったような凹面と融合しているからだ。胴体部分が変な形に陥没していると言われれば確かにその通りだが、その奇抜な処理がこの車の特徴だ。折り紙細工のトライアンフGT6とでも言えるだろうか。

再びMクーペとMロードスターもラインナップされたが(それぞれ4275台、5070台が生産された)、今回はM3の陰から一歩踏み出した。マルチリンクのリアサスペンション、6段ギアボックス、新開発の可変LSD、そして改良されたS54エンジンとクーペで1495kgの車重(M3より75kgほど軽量)の組み合わせは、まさに爆竹のようなスポーツクーペを作り出した。レスポンスは鋭敏で4本のエグゾーストから咆哮を轟かせたが、同時に365Nmの最大トルクの8割をわずか2000rpmで生み出すエンジンは柔軟性にも優れていた。

起伏のある丘陵地帯で思い切り走らせてみると、Mクーペのステアリングは少しだけ鈍く、いっぽうZ4MはM3CSLのものより速いことが分かった(CSLは標準型M3よりクイックだがそれでもやや眠そうだ)。さらに他のZ4が最新式の電動パワーステアリングを採用したのに対して、Z4Mは油圧式のパワーアシストにこだわっており、その正確な手応えのおかげで車の鼻先を瞬時にコーナーの望むポイントに向けることができる。それに比べるとZ3Mはやや嫌々ながらという感じの抵抗があり、しばしば切り増す必要があった。シートポジションは低く、Z3Mよりもシートを後ろに下げることができる。M3のアップグレードのおかげでブレーキの性能も申し分なく、ワインディングロードでは存分に楽しむことができた。

とはいえ、初期のMクーペの弾けるような刺激は若干失われている。ギアシフトはゴツゴツした感触で、シートも教会のベンチのように固い。さらにMクーペより105kg重いせいで、せっかく向上したパフォーマンスも相殺されている。何よりも問題は不安定なシャシーにある。常に落ち着かず、快適性だけでなく、ドライバーが十分な自信を感じられないという点でも好ましくない。

現在では多くのZ4Mはだいたい2万5000~3万ポンドの価格帯にある。あの見事なストレート6を積む最後のモデルとしてMのヒストリーでも特別な存在であり、さらにくっきりシャープなデザインも際立っている。しかも状態の良いZ3Mクーペよりずっと多く残っており、値段も安いのだ。

もっとも結論としては、Z3Mクーペが運転して最も楽しいだけでなく、価値もある。鮮やかな性能、一風変わった癖のあるデザイン、そして密かに開発されたというストーリーを考えあわせれば、最も好ましい「Z」として歴史に残るのではないだろうか。いや、既にそうなっているから、未来に向けて確保すべきモデルであることは間違いない。

2006年BMW Z4 Mクーペ

エンジン:3246cc直列6気筒24バルブ ボッシュ燃料噴射

最高出力:338bhp/7900rpm 最大トルク:365Nm(269lb-ft)/4900rpm

トランスミッション:6段MT後輪駆動 ステアリング:ラック&ピニオン パワーアシスト

サスペンション(前):マクファーソンストラット コイルスプリング、テレスコピックダンパー、スタビライザー

サスペンション(後):マルチリンクコイルスプリング、テレスコピックダンパー、スタビライザー

ブレーキ:ディスク 車重:1495kg 性能:最高速250km/h(155mph/0-62mph 加速5.0秒)

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA

Words:Ben Barry Photography:Sam Chick

THANKS TO Munich Legends, munichlegends.co.uk