“Honda の本気が子供の夢になる”。そんなスローガンを掲げたプロジェクトがひとつの節目を迎えた。

  • 「ホンダコライドンプロジェクト」発表会

ホンダは3月7日、東京・港のホンダ本社で「ホンダコライドンプロジェクト」発表会を開催した。同プロジェクトでは、ゲーム『ポケットモンスター スカーレット』に登場する伝説のポケモン「コライドン」を電動二輪で再現したミライモビリティを製作。「ホンダコライドン」と名付け、9日までHondaウェルカムプラザ青山で展示する。

自立式二輪タイプの「ホンダコライドン」爆誕!

  • Hondaウェルカムプラザ青山

「ホンダコライドンプロジェクト」に先駆け、2024年にトヨタ技術会がコライドンと対になる伝説のポケモン「ミライドン」を模した「トヨタミライドン」を制作し、話題を集めた。これに刺激を受け、「HondaであればHondaらしいコライドンが作れる」との思いで立ち上がったのが「ホンダコライドンプロジェクト」だ。

  • プロジェクトチームのメンバー

プロジェクトメンバーは社内公募で集まった有志約40名。“Hondaの本気が子供の夢になる”を合言葉に、Hondaの設計思想やシミュレーション技術、Honda先進技術研究所が持つ先進バランス制御技術などを駆使し、「ホンダコライドン」の製作にあたっている。まだ人を乗せて走ることはできないが、コライドンの重さや大きさなどはほぼ実寸大の形状を再現。そしてこのたび、ついにお披露目できるところまでたどり着いた。

  • ホンダコライドン

やるからには「ホンダらしく」

発表会で登壇した同プロジェクトの責任者である坂本さんは、「このプロジェクトを提案したとき、社内はかなりザワつきました」と振り返る。

「正直、こういうプロジェクトを提案すること自体が初めてだったので“当たって砕けろ”の精神で臨んだのですが、経営陣からは『面白そうだからやってみよう』のひと言で承認を得られました。ただし、『やるからにはホンダらしいコライドンを作ろう』との宿題ももらいました」と坂本さん。

  • 「ホンダコライドンプロジェクト」推進責任者 本田技研工業 二輪事業企画部 坂本順一さん

坂本さんが所属する二輪事業企画部だけでは「ホンダらしいコライドン」は作れない。そう考えた坂本さんは、プロジェクトの企画書を手に二輪・パワープロダクツ事業部や先進技術研究所を回った。メンバー集めは難航するかと思ったが、どの部署も「面白そうだね、やろう」と二つ返事で快諾してくれたという。

そしてチームで「ホンダらしさ」を追求した結果、ホンダコライドンには「ホンダ ライディング アシスト」を搭載することに決定。ホンダ ライディング アシストとは、ホンダが開発した二輪車向けの自立バイク技術で、ヒューマノイドロボット「ASIMO」の開発で培ったバランス制御技術を応用したものだ。これにより、停車時も自立する二輪のホンダコライドンを作ることができたという。

「完成したホンダコライドンをどう活用するかといった段階にはまだ及んでいません。私自身としては、夏前までにはぜひ人が乗れる状態を実現したいなと思っています。時速10~15kmの想定で走らせたいと考えています」(坂本さん)

ポケモンファンの期待に応える外観へのこだわり

  • 「ホンダコライドンプロジェクト」開発責任者 本田技研工業 二輪事業企画部 萩原和也さん

同日の発表会には、「ホンダコライドン」の開発責任者を務める萩原さんも登壇。「このプロジェクトが発足したときは企画段階でワクワクが止められず、『なんとか開発責任者をやらせてくれ』と坂本に直談判しました」と経緯を打ち明ける。

「まずはとにかく、ゲームの『ポケモン スカーレット』を夜な夜なやりこんで、コライドンがどういうふうに動くのか、どんな表情をするのかを研究しました。プロジェクトのことは(関係者以外に)話せなかったので、家族からは『いつまでゲームしてるの』と揶揄されましたが、ようやく打ち明けることができました」(萩原さん)

萩原さんは、「とにかく『ポケモンファンをがっかりさせてはいけない』というのがチーム全体の想いで、できるだけコライドンを忠実にイメージして外観などは作り込みたいと思いました」と回想。製作するうえで苦労した点のひとつが、マシンの「カラーリング」だという。

  • ファンの期待に応えるべく外観にもこだわった

「株式会社ポケモンさんもコライドンの体色への思いは強く、これをなんとか表現しようということで検討し始めました」ということで、世の中にある色、ホンダのバイクにある色ではなかなかコライドンの色が表現できず、新たな色を作るかたちで進行した。

「テクスチャーの部分もこだわりのポイントで、顔や脚の部分など、いろいろなテクスチャーを入れ込んでいます。検討当初はすべて統一のテクスチャー形状にしようと思ったのですが、そうすると生き生きした感じでは仕上がらなかったんですね。そこで恐竜の剥製なども参考に、一本一本線を引いてアンバランスなテクスチャーを作ることにしました」(萩原さん)

  • コライドンの質感も見事に再現されている

実物を見てみると、顔や鼻先の模様、後ろ足、前足の質感など、ひとつひとつがパターン化されておらず、生き生きした質感に仕上がっているのが確認できる。坂本さんは「私自身も早く動くコライドンを見たいと思っています。1日でも早くお見せできるよう、チーム一丸となって取り組んでまいります」と訴力を込めた。