「7・8月はマイナー調整も」ドジャース・佐々木朗希は先発ローテを回れる…

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 東京ドームで行われる開幕戦で登板の可能性が高まっているロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希。しかし、佐々木はNPBのキャリアでは規定投球回に到達したことがなく、耐久性が問題視されている。迎える新シーズン、そんな佐々木をドジャースはどう起用していくのか。今回は、佐々木朗希のイニング管理にフォーカスした。(文:Eli)

 

今シーズンのメジャーリーグは

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 ロサンゼルス・ドジャースは昨オフ千葉ロッテマリーンズからポスティングされた佐々木朗希を獲得した。100マイル(約160キロ)をコンスタントに叩くフォーシームや、消えるように落ちるスプリットなどが評価され、2025年mlb.comプロスペクトランキングでは堂々の1位となった。だが、佐々木に常について回る課題が耐久性だ。

 

 NPB時代では2022年に129.1イニングを投げたのが最大で、一軍で本格的に稼働し始めた2022年からの3年間のイニング平均は110イニングである。

 

 このことから、ドジャースは佐々木の40人枠登録&メジャー昇格を1,2か月ほど遅らせてポストシーズンまで戦える余地を残すかと思われた。

 

 しかしスプリングトレーニングが始まると、佐々木は開幕ローテに入り、東京シリーズでも投げるかもしれないことが発表された。ドジャースは佐々木のイニングをどのように管理するのだろうか。

 

 

メジャーリーグでのイニング管理の例

 近年では新人投手や先発経験の少ない投手のイニング管理は30球団共通となっている。プロスペクトがデビューする際には、イニング管理の話題が必ず議論されると言っても良い。

 

 レギュラーシーズンでは30先発162イニング、プレーオフを勝ち進めば追加で4,5先発20イニングと考えると、特にコンテンダーのチームがイニング数に敏感になるのは当然と言える。

 

 昨季では新人王のポール・スキーンズ、4年のキャリアを経て先発転向し開花したギャレット・クロシェが良い例だろう。この2人は先発経験が少なかったことに加え、メジャートップクラスの剛速球を投げるため、より注意が必要だった。これも佐々木朗希との良い比較対象になる。

 

 昨季、最も厳しいイニング管理が行われたのがクロシェだ。当時シカゴ・ホワイトソックスに所属していたクロシェにとって2024年は2022年に受けたトミー・ジョン手術と2023年に発症した肩の炎症からの復帰に加え、本格的な先発転向を開始する年となった。

 

 2020年にデビューしたクロシェだが、2023年シーズン終了までに先発登板はゼロ。基本的に100マイル(約160キロ)に達する速球を武器に1イニングを制圧するリリーフ投手だった。

 

 また、大学野球でも本格的な先発投手としての経験はない。そんなクロシェのイニング管理はクロシェ自身がブルペンへの配置転換を拒否したことにより、先発登板のイニングを大幅に減らすことで行われた。7月以降は先発としての登板間隔を維持した上で、1登板当たり2~4イニングに抑えられた。

 

 ピッツバーグ・パイレーツのスキーンズのイニング管理はクロシェより容易だった。そもそも昇格&デビューが5月11日となりシーズンが短縮されたからだ。それでもシーズン最終盤の2登板ではそれぞれ5回73球、2回23球で交代するなどの管理が行われた。

 

 ちなみに典型的なメジャーリーグ先発投手は中4,5日を基本とし、毎月5、6先発で30イニング程度を消化する。昨季208.2イニングを投げたシアトル・マリナーズのローガン・ギルバートが良い参考だ。

ポストシーズンに備えて“節約”が必要…?

 クロシェとスキーンズの先例を紹介したが、佐々木朗希とドジャースはポストシーズンの事を考慮する必要がある。

 

 参考として昨季のポストシーズンではゲリット・コールが5先発29.0回、山本由伸が4先発18.2回、ウォーカー・ビューラーが3先発15.0回を投げている。

 

 ワールドシリーズまで順調に勝ち進むと仮定すれば、PSローテ1番手なら4,5先発20回程度、3番手なら3,4先発15回程度を投げる必要がありそうだ。

 

 ゆえに、もし佐々木朗希がポストシーズンのローテに入るとすれば、このイニング分を10月まで残しておく必要がある。

 

 

 また、クロシェとスキーンズは制限下でも140回を投げたが、NPBで最大129.1回、過去3シーズン平均110.1回しか投げていない佐々木朗希の限界はポストシーズン含めても120~130回付近に位置するのではないか。

 

 非常にざっくり計算してみる。シーズン通して稼働させたい場合、毎月20回が限界だ。これでもポストシーズンを加えた場合通年で130回を超える。

 

 月4先発は週1回の登板と考えるとできそうだが、毎登板5回に制限されるのは勝つ面でもブルペンへの負担と言う面でも問題である。

 

 もう1つは7,8月からマイナー調整をさせる方式だ。オールスター休み開始くらいにいったんアクティブロースターから外しマイナーに降格させる。そしてポストシーズンに備え9月後半からMLB昇格させ、そのままポストシーズンで登板する。

 

 7月後半~9月中盤にメジャー登板させないことで余裕を持たせることができる。通常のFAと違いマイナー契約を結んだ佐々木朗希はドラフト選手と同じ扱いになっているため、チームは選手の放出無しにマイナー降格させることができる。

Prospect Promotion Incentiveと佐々木朗希のイニング管理

 2022年に結ばれた選手会-MLB労使協定により、トッププロスペクトとされる選手がシーズンで活躍するとドラフト指名権が追加でもらえる制度、『Prospect Promotion Incentive』が導入された。

 

 対象となる選手は『ESPN』、『MLB Pipeline』、『Baseball America』の少なくとも2つでトップ100に入る必要がある。指名権は30球団の1位指名が終わったあとの位置が付与され、昨季のドラフトではダイヤモンドバックスが31位指名、オリオールズが32位指名を受け取った。

 

 指名権を獲得するためには、対象選手をサービスタイム1年分加算するだけメジャーロースターに置いた上で、選手が新人王獲得、またはMVP orサイヤング賞3位以内に入る必要がある。

 

 

 毎年のように贅沢税対象額を大幅に超え、ドラフトにおいてトッププロスペクトを獲得しづらいドジャースにとって、球界が同意する才能を抱えること自体珍しい事象であり、ドラフト指名権を狙うのも良いだろう。

 

 これまでに、同制度による指名権で3人の選手が指名されたが、2023年にフリオ・ロドリゲスを対象とした指名権でマリナーズにドラフトされたジョニー・ファーメロは現在マリナーズ傘下9位の評価を受けている。

 

 ドジャースは積極的に補強を行い、贅沢税課税ラインを超えていることから毎年のようにドラフト指名権が10位落とされている。

 

 2025年は全体40位が最上位だ。今後サラリーキャップが導入されない限り、総年俸はそれほど減少しないと考えられ、ドラフト順位は低いままでいるだろう。

 

 前述のイニング管理からは逆行するが、佐々木がメジャーで1年間健康に戦える自信があるならば、ドジャースとしては珍しい超トッププロスペクトである佐々木を活かしてドラフト指名権を狙いにいくのもアリかもしれない。

 

 

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【了】