トヨタの「ウーブン・シティ」に初潜入…どんな景色広がっていたのか?

2020年に構想が発表されたトヨタの実証実験の街、トヨタ・ウーブン・シティが5年の歳月を経て第一期、Phase.1の街並みが本日竣工し、竣工式展が行われた後に報道関係者にその一部が公開された。

そもそもなぜこの実証実験の街がトヨタに必要なのか。自動車メーカーとしてのトヨタ自動車には、テクニカルセンター下山や、このウーブン・シティの隣に位置する東富士研究所など多様な試験場があるが、この先トヨタが、自動車以外のさまざまな移動を提供するモビリティカンパニーへと変化していくうえで、実際の街並みのなかで様々なアイデアやコンセプトを具現化し、実際に実験し、体験した人から意見を集めていくモビリティのテストコースが必要だったからだという。

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東名自動車道の裾野ICを降りてすぐの場所にあるこのトヨタ・ウーブン・シティは、約30万平米の敷地を持つ住宅やテストコースを組み合わせた「街」で、今回竣工したのは、その第一段階となる47,000平米の区画。この後、外構工事や居住区画の内装仕上げなどを行い、今年の秋以降から実際に実証実験を開始するという。

まずはトヨタ及びその関係者から段階的に入居して実証実験を開始。安全が確認された後に、今回インベンターとウーブン・シティが呼ぶ初期のパートナーとして発表された、空調機の「ダイキン」、飲料メーカーの「ダイドードリンコ」、食品メーカーの「日清食品」、コーヒーの「UCCジャパン」、そして教育システムの「Z-KAI Group」が、ウーブンbyトヨタと共に実証実験を行っていくという。2026年度以降には、外部の研究者などの居住者や、一般公募でのビジターなどの訪問が検討されている。

第一期の街区は、敷地面積約47,000mとあって東京で言うと六本木ヒルズの約半分の広さの街。低速モビリティの実証実験の街としては十二分の広さを持ち、360人の居住フェーズなので見たところ居住街区の部屋数は約200戸程度で、それぞれの建物が4階建てで30〜50戸程度と思われる部屋を持つ階段型のマンションスタイル。居住街区の周りを取り囲むように道路が用意されており、街区の真ん中にはコートヤードと呼ばれる公園のようなコミュニティエリアがある。

ちなみに街区のコンセプトデザインは、あのGoogleの新社屋を設計したことでも世界的に有名なビャルケ・インゲルス率いるビャルケ・インゲルス・グループによるもので、ビジターセンターやインキュベーションスペースである「Kakezan Invention Hub」などのデザインは日本のどこにも存在しない新しい建築デザインで、モナコやロンドンの再開発エリアを彷彿させるソフィスティケーテッド&モダンな空間だ。

今回は、先行しての内見ということで、この居住街区の周りの実証路、「Kakezan Invention Hub」、そして地下の実証実験路、コートヤードを実際に見学した。

まず実証路だが、歩行者と車両の交差点を案内されて現れたのが、日本信号製の実際の信号機。ただし、普通の信号機ではなく、信号機を取り付ける柱自体がさまざまなオプションを装着したり、カメラを装着したり出来る仕組みになっているもので、信号機の位置まで自在に変更可能。柱を含めたシステムがネットワークに接続せずに独立して端末として機能するように作られているそうで、これによってプライバシーを保ちながら、いろいろなテストが可能になっているという。

よく見るとすべての建物の壁も取り外し可能な構造で、サイネージを取り付けたり、将来的な実験に対応させたり出来る模様。居住街区の非常用階段も完全に外部に露出する形で設計されており、これらも含めてさまざまな実験を想定した作りになっているのだろうが、その詳細までは今回は明らかにはされなかった。

周回道路にはガードレールは存在せず、歩道と車道を隔てる段差なども存在しないが、一方で電動の低速モビリティを想定したと思われるマークの描かれた専用レーンは用意されていた。自転車やバイクを想定したレーンになっていないことが気になったが、これについても秋以降に実証実験が開始されるとわかってくることだろう。

「Kakezan Invention Hub」は全面ガラス張りの三角形のホールで、この街区に居住するインベンターと呼ばれる発明家が、アイデアやプロトタイプを実際に使用したり体験した居住者(ウィーバーズと呼ばれる)と意見交換し共創するためのスペースで自動車も中に入れられる広々としたエリア。取り入れた意見をその場で反映したりする作業が出来るよう、2階には作業スペースに使える部屋が用意されている。発明家とウィーバーズが繋がることで、掛け算のように新しいアイデアが生まれ発展していくことを願って「Kakezan Invention Hub」と名付けられたという。

じつはこのウーブン・シティは地下ですべての建物が繋がっている仕組みで、地下に物流サービスなどの実証実験などで使用される予定の実証実験路が用意されている。都内などでも一部のマンションや商業施設では自動運転配送ロボットなどの実証実験が公道と私有地を使って行われているが、ウーブン・シティは完全に私有地の中に作られた実証実験のための街なので、新しい技術を使ったシステムの実験を行う際の合意形成が容易で速いスピードで開発出来ると考えられる。

コートヤードは街区の広場で、今回はeパレットがUCCの提供するカフェとなっており、水素で焙煎したコーヒーを提供するというイベントが開催されるなど文字通り意見交換を行う場所となった。自然の地形を生かした構成で、若干の傾きがある地形などこの広場も、公園などを想定した場所での新しいモビリティの開発に活用されると思われるスペース。

今回の内見会では居住区やこの秋以降に始まる実証実験の内容についてまで踏み込んだものではなかったが、発表されたインベンターの5社、例えば「ダイキン」と「日清食品」が出会ってウーブン by トヨタと掛け算した未来はどんなものだろうかと想像しただけでワクワクが止まらない。このトヨタ・ウーブン・シティをウーブン・シティ・マネジメントヘッドとして率いる豊田大輔氏が見る未来が、この秋以降にわれわれの前に姿を現すことになる。

〈文=難波賢二〉