川谷絵音とWurtSが語る、音楽への衝動

3月に開催される「ツタロックフェス2025」への出演が決まっているindigo la EndとWurtS。その開催を前に、川谷絵音とWurtSによる初対談が実現した。川谷とWurtSは世代が異なり、活動を始めた当初の環境やツールには大きな違いがあるが、どちらも他に類を見ない活動スタンスで自らの道を切り開いていった、その開拓者精神には通じるものがあるはず。WurtSは昨年10月に日本武道館、indigo la Endは12月に横浜アリーナでのライブを終えたばかり。2人に作り手としての意識やライブ観について語り合ってもらった。

※この記事は2024年12月25日発売「Rolling Stone Japan vol.29」に掲載されたものです。

【写真】川谷絵音とWurtS

共通点はクリープハイプ、にしな

ーお二人は今日がはじめましてだそうですが、川谷さんはWurtSさんにどのような印象をお持ちですか?

川谷 最近の若いアーティストに共通することではありますけど、すごくクレバーというか、ちゃんと分析して作っているなと。それって僕らの時代にはなかった。パソコンがあれば音楽を一人で作れるようになった時代に出てきた新しい世代の中でも、WurtSくんの音楽からはいろいろ考えて作っているのを感じます。最新アルバムの『元気でいてね。』も、参照元は渋めというか、「この年代から引用しようとしているんだ」という驚きがあって。僕らの世代は特に「あっ!」となるんじゃないかな。

WurtS ありがとうございます。そうやって聴いていただけて嬉しいです。でも僕はずっと手探りで音楽を作っている感覚です。本当にトライ&エラーで、曲を作って、聴いてくれる人たちがどういう反応をするかを気にしたりはしますが、最初からこれがウケるだろう、というのは全然なくて。もちろんアプローチは考えつつ、でもその考えと曲がヒットするかどうかはまた別というか。

ーWurtSさんは川谷さんに対してどのような印象をお持ちですか?

WurtS 僕は中学生の頃からindigo la Endさんの曲をずっと聴いていて。その影響は自分の中に大きくあると思います。影響を反映したいという意識で作っていなくても、勝手に出てきてしまうもの、身体の中に染み付いているものですね。WurtSの音楽の基盤の中にあります。特に『あの街レコード』(2014年)は繰り返し聴いていました。

川谷 ありがとう。もう10年も前の作品ですね。

WurtS 当時はもちろん自分がアーティストになっていなかった頃で、アーティストとして憧れる感覚というか。YouTubeなどでMVやライブを興味深く観ていました。

ー最近は川谷さんも下の世代から「聴いていました」と言われることも増えていますよね?

川谷 そうですね……複雑ですけどね。年取ったなって(笑)。感慨深いというより、ちょっと恥ずかしい気持ちになります。そんなに時間が経っているのか、と。

ーお二人には今年クリープハイプのトリビュート・アルバム『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』に参加しているという共通点があります。クリープハイプは川谷さんよりさらに少し上の世代のバンドというのもあり、おそらくお二人で捉え方に違いがありますよね。

川谷 僕にとってクリープハイプは、BUMP OF CHICKEN、RADWIMPSの影響下にあったものと、銀杏BOYZやGOING STEADYといった青春パンクと呼ばれていたものの影響下にあったものを繋いだバンドというイメージがあって。それ以降はクリープハイプの影響を強く受けたバンドがたくさん出てきた。当時の僕の中ではクリープハイプが登場したことで、”邦ロック”の定義が変わった気がしましたね。

WurtS 僕にとってはindigo la Endさんと同じように、一人のリスナーとして憧れていた存在で。音楽を始めよう、じゃあどういうジャンルをやるのか、となったときに「クリープハイプのような音楽がやりたい」と言えば伝わる存在。そういう意味ではクリープハイプというジャンルとして捉えている部分があるのかもしれません。自分もそんな存在になりたい。そこを目指して頑張っている感覚があります。

ー尾崎世界観さんと川谷さんはどちらも今の20代のミュージシャンに強い影響を与えている2人だと感じます。

WurtS 僕と同世代のアーティストはすごく影響を受けていると思います。音楽そのものはもちろん、ライブのスタイルであったり、どんなギターを使っているのか、どんな機材を使っているのか、そういうところまで調べて同じものを買ってみたり、アーティストとして憧れていて、そこから吸収したいという気持ちで見ている。僕自身もたくさんの先輩アーティストから影響を受けているから、それを自分なりに落とし込みたいと思っています。

ー『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』でindigo la Endは「ABCDC」をカバーしています。どうしてこの曲を?

川谷 ずっと前から好きだったんです。僕はリアルタイムで聴いていて、ちょうどライブも観ていた時期の曲で、単純に思い入れが大きかった。何曲かやりたい曲を挙げて、クリープハイプ側がその中から選んだ形です。他はもっとリード曲っぽい、MVのあるような曲を候補に出していたんですけど、その中で「ABCDC」のような曲があったら、それをやってほしくなるじゃないですか。気持ちはすごくわかるので「ですよね」という感じです(笑)。

ーWurtSさんは「キケンナアソビ」をカバーしていますね。

WurtS 尾崎さんから「この曲をやってほしい」と言われ、それはもう「わかりました!」と。だから、どうしてこの曲を自分に選んでくれたんだろうって考えながら作りました。そうして作っているとき、歌詞の中の、心と身体の関係性を歌っている部分は、WurtSにある中の人と外の人のような感覚と共通しているように感じるので、そこでリンクした部分があるのかなと思ったりしました。

川谷 「キケンナアソビ 」とWurtSくんはかなり合っていますよね。音楽的にも、変な構成だし、すごく変わっている曲で、昔のTHEクリープハイプという曲ではないというか。最初に原曲を聴いたとき、いい違和感があったのを覚えています。今やライブで盛り上がる曲にもなっているけど、WurtSくんのカバーはその新しい汲み取り方を提示したと思いますね。クリープハイプを高い声でやるというのはみんな当たり前の考えとしてあると思うので、そうじゃなくて、低いトーンで始まるのもWurtSくんっぽいし、また違った面白いものを聴かせてもらったなと。

WurtS 僕はまず「大丈夫かな?」と心配で、参加したみなさんがどういうアレンジをしてくるのかずっと気になってました。indigo la Endさんの「ABCDC」のアレンジを聴いたとき、indigo la End感というか、そういうものを強く感じて。クリープハイプの曲のカバーを聴いているけど、indigo la Endの曲を聴いている感覚になったんです。すごく勉強になったし、自分もそこに辿り着きたいと思いました。自分がアレンジを大きく変えようと思ったのは、わかりやすく自分の色を出すことしかできないからで、indigo la Endさんのカバーを聴いたときはすごくナチュラルに曲を自分たちのものにしていたから、僕もこうならなきゃって。

川谷 今回はコードと歌をちょっとだけ変えた程度なんです。僕らは今までいろんなカバーをやってきましたけど、だいたいむちゃくちゃに変えてしまって、原曲のファンに申し訳なさもあったので、今回は絶対同じ轍は踏まないぞと(笑)。そのおかげか、反響もいい感じですね。尾崎さんも褒めてくれて。僕らこの前ライブでやりましたけど、全然カバーしている感覚がなかった。

ーもう一つのお二人の共通点は、indigo la Endの新しいアルバム『MOLTING AND DANCING』ににしなさんが参加していて、WurtSさんも少し前ににしなさんとコラボレーションしていることですね。

川谷 彼女の魅力はやっぱり声ですよね。どう考えても、にしなにしか出せない声がある。藤井 風くんの『tiny desk concerts JAPAN』ではコーラスとしても素晴らしかったし、声の特徴もちゃんと出ている。別のアーティストといっしょにやってもハマるのに、すごく特徴がある声を持っている人ってあまりいない。母音の歌い方も独特で、”u”の歌い方は母音の中間くらいで歌っているような感じで、それが魅力になっていたりもして。それくらい声に芯があるのに、少しふわっとした、ちょっと掴み所がない雰囲気があるのもいいですよね。

WurtS 僕も声に惹かれました。初めてにしなさんの曲を聴いたとき、沖縄の音楽や沖縄出身の方の音楽にある世界観、民謡っぽさのようなものを感じて。どこからその歌い方がきているのかすごく不思議で、いっしょに曲を作ってみたいと思ったんです。実際に歌を間近で聴いたときに、芯があるけど、ところどころ抜く感覚があるというか、すごくオルタナっぽさがあって。コラボした「サンタガール」は、すごくポップス寄りの曲だったんですが、いっしょに歌ったときに、ポップスでもあるけど、ジャンルがわからない感じになったんです。にしなさんだからできることだと思いますね。ど真ん中のポップスを歌ってもど真ん中のポップスじゃない感覚を注入してくれる。

川谷絵音(Photo by Maciej Kucia)

「同時進行」と「匿名性」 お互いの活動姿勢に思うこと

ーそういった共通点も踏まえつつ、川谷さんはWurtSさんの音楽を聴いてどのように感じていますか?

川谷 さっきのジャンルの話をすれば、すでにWurtSというジャンルになっていると思います。デビュー曲からそうで、一聴してWurtSだなと思う。歌が始まればもちろんそうだけど、イントロだけを聴いても若い同世代の人たちと違うWurtSらしさがあるんです。

例えばsuisさんを呼んで、あの曲(「ソウルズ」)をやるってなかなかできないことだと思う。普通もっとキャッチーなものを作ると思うから、度肝を抜かれましたね。「この曲でフィーチャリングするんだ!」って。めちゃくちゃ攻めてる。suisさんの新しいフィーチャリングの仕方ですよね。suisさんがやるものは綺麗なものが多かった中、ダークなものをやるとは。WurtSくんにしかできませんよ。たぶん求められていることじゃないとわかっていると思うし、若いときは求められていることに応えるのが快感になる時期だと思うんですけど、いち早くそうじゃないことをやっていますよね。

これだけ大人から期待されているから、周りに反対された可能性もあるけど、でもこうやって実現しているということは、WurtSくんがやるから、それについていきたいと思う人が多くいるってことですよね。ライブ映像を見ても、ちゃんと自分の好きなことをやろうとしていて。自分が楽しむ気持ちという、ミュージシャンに一番なくてはならないものをちゃんと持っている。若い世代のアーティストでそれができる人はあまりいないと思います。フェスにも出て、メジャーのフィールドでやって、タイアップもやって、なおかつちゃんと攻めている。素晴らしいです。

WurtS ありがとうございます。本当に自分のやりたいことに対して周囲からノーがないんです。だからこそ自分のやりたいことをガンガンできているんだと思います。suisさんとの曲も、自分はアクのあるような曲しか作れないという、この3年くらいの自分の中での結論があり、だったら逆に僕はsuisさんらしいものではなく、あえてもっと自分に寄せて、新しいsuisさんが見たいという意識でフィーチャリングさせてもらいました。誰からもストップが入らなくて、むしろ僕が一番心配しています(笑)。ちょっとは何か言ってほしい(笑)。

ー「分かってないよ」が大ヒットした後でも自分の好きなことを優先できた理由はどこにありますか?

WurtS 「分かってないよ」から時間が経って「Talking Box」という曲をたくさん聴いてもらえたことが大きかったです。「Talking Box」はちょっとEDM寄りで、「分かってないよ」とは全然違っていたから。そこで意外と自分のやりたいことをやっていても聴いてもらえる、という意識になったかもしれません。もちろんタイアップなどの大きな仕事にもちゃんと応えたいですが、そういったものに頼り切らずとも、自分のやりたいことをずっとやっていれば、また注目してもらえると思っています。

ー川谷さんも自分のやりたいことをずっとやってきた人ですよね。

川谷 僕は15年やってますからね、ちょっとまた話が変わってくるかも(笑)。おそらく自分には、こういうことがしたいという想いはあるんですけど、みんなみたいな熱さがない。音楽が生活の中にあって、続けていたらなんとなくやりたいことが増えていってる。もちろん音楽活動の目標はあるんですけど、もっと大きな”人生”として見ているのかもしれません。30歳を超えてからそういう感覚が強くなっていますね。

ープロジェクトを増やしたというより、自然に広がっている感覚?

川谷 ジェニーハイは誘ってもらって始めたし、礼賛に関してはサーヤちゃんの才能をどうにか広めたくて始めたので。きっかけがいろんなところに転がっていて、それを回収している感覚です。

ー川谷さんのようにたくさんのプロジェクトを同時進行するアーティストが増えているのは、ある種の時代の表れだと思います。そういった活動の在り方をWurtSさんはどう感じますか?

WurtS そもそも僕は表舞台で活動するとは思っていなかったんです。もともとめちゃくちゃ海外のアイドルが好きで、そこから楽曲制作を始めて今に繋がるんですが、最初はアイドルをプロデュースしたいとか、そういう気持ちでやっていたから、僕自身もWurtSを演者としてみて、プロデュースしているというか、俯瞰して考えているところがあります。

ーそういった背景があるからこそ、現在も匿名性の高いスタイルでやっている?

WurtS 最初にヴィジュアル、キャラクター作りから始めて、WurtSというものを作ってからアーティスト活動を始めていて。どちらかというとWurtSを被っているという気持ちで、中の人は別でいる感覚でずっとやっています。

ー具体的にどういった海外のアイドルに夢中になっていたんですか?

WurtS ワン・ダイレクションです。音楽をしたいというより、ワン・ダイレクションになりたかった(笑)。昔は自分がワン・ダイレクションに加入する初のアジア人になる妄想をしたり(笑)。だからWurtSがどこまでいくのかわかったら、そういった方向で次のプロジェクトをやりたい気持ちもあります。

ー現在はWurtSさんのような匿名性の高い活動をするアーティストも多いです。川谷さんからはどう見えていますか?

川谷 そもそも人間ってだいたいあまり良くないじゃないですか、私生活を映し出したら(笑)。放送できない。だからリアリティーショーが炎上したりする。別に見たくないものは見たくないし、聴いている方も余計な情報は入れたくないですよね。そういう状況で絶妙な匿名性はすごく魅力的だと思います。ちょっとは出ているし、別に発言もする。ヨルシカもそうで、SNSの投稿でだんだん人となりが見えてくるけど、見えすぎない。米津(玄師)は途中で顔を出して匿名性は薄れましたけど、匿名性があってそこまでいけるのなら、そっちの方がいいに決まってます。顔を出すとプライベートも大変になりますしね。ずっと言ってますが、羨ましいです(笑)。

ーおそらく世代的な感覚の違いもありますよね。

川谷 僕らの世代に匿名性の高い人なんていなかったから、選択肢になかったんですよね。活動の途中で顔を出す人はいましたけど、でも最近はずっと匿名性を持ったままやるのが普通になっていて、リスナーもアーティストの顔が見たいわけじゃない。それが当たり前になっているのはいいですよね。yamaも、あの在り方を含めてyamaですし。今後もどんどん増えていくでしょうね。そんな中でWurtSくんの帽子に穴を開けるアイディアはすごくいい。わざわざヘッドギアを作ったりすると、仰々しく隠しているように見えるけど、これはあるもので作っている感じで、それが絶妙に懐に入りやすい。口元が見えるのもポイントで、顔を全部隠したままライブされると入り込みにくい気がするけど、これなら問題ないし。

ーこの帽子はどんなアイディアから生まれたんですか?

WurtS 最初から僕はライブをしたいと事務所に伝えていたんです。その前提で活動をしていたから、絶対に顔を隠したいのもありつつ、ライブができるようにというのはあったので、あんまり顔を覆いすぎるとマイクとの干渉だったりも含め、プレイの面で影響が出るからと、考えながらできたのがこれです。最初は紙袋でやってみたり、いろいろ試したんですけどなかなかうまくいかず、もともと帽子が好きでいろいろ持っていたので、ふとNEW ERAの帽子を被ったときに閃いて。フェスなどの日中のライブにも顔を隠したまま出演できるのも良いところです。

川谷 発明ですよね。グッズで出したら絶対売れると思う。

WurtS 作るのが大変らしく……。

川谷 でもライブでお客さんが全員これ被ってたら、自分がたくさんいるみたいで嫌かも(笑)。

WurtS(Photo by Maciej Kucia)

2人の「ライブ観」を大いに語り合う

ー活動の当初からライブを想定していたそうですが、ここ2、3年でのライブの経験は最新アルバムのサウンドにも繋がっていますよね。

WurtS フェスなどの現場でいろんなジャンルの方のステージを観させていただくことが多くなったので、インプットが多くなり、いろんな音楽をやってみたいと思うことも増えて、作る音楽の幅が広がっていきました。あと、僕はずっと一人で活動していたので、制作は一人で完結するものだと思っていたから、1stアルバム(2021年作『ワンス・アポン・ア・リバイバル』)では打ち込みも半分くらいあって。でもライブなどでいろんな人と関わるようになって、レコーディングで演奏してもらったり、その場でアレンジを考えたりと、制作方法の面でも広がったと思います。

ーアルバムの序盤にはジャズやヒップホップの影響も出ています。

WurtS いろんなステージを観て「こういう音楽も作ってみたい!」と思いつつ、自分がまだそういったものを作れていない悔しさも感じて、そういう気持ちを落とし込みました。だからアルバムの最初の方では「こういうこともできるよ!」とプレゼンしてます。

ー川谷さんもここ2年ほどライブの本数がこれまで以上に増えています。制作に影響はありますか?

川谷 単純に時間がない(笑)。いろんなバンドを含めて、今年ライブを100本やってるし、それに舞台(『独特な人』)もやっていたので、音楽とも関係がない時間があったりして。だからライブを制作に還元できているかはわからないですけど、でも人生としては大きなフィードバックがあったので、それがまた音楽になるかもしれない。今年の『独特な人』で恋愛リアリティーショーをやって、そこから「BOYFRIEND」という曲ができたりはあったので、別の形で音楽にフィードバックされるものはありましたね。

ー直近では12月1日に横浜アリーナでのライブがありました。この1年の一つの集大成だったかと思います。

川谷 やってみたら、別に横アリでやっているぜという感じは全くなくて。「感動的なMCとか全くしないから、このままサクッと終わるよ」とMCで話したように、一つの通過点にしたかったんです。

ー一方でWurtSさんは10月に武道館でライブをしましたが、感触はいかがでしたか?

WurtS どちらかというと自分は音楽がどれだけヒットするかというより、ライブ会場を大きくすることを目標にしてきたんです。だから武道館でできたことはすごく嬉しくて。ただ実際に武道館でやってみて、意外とコンパクトだなという感覚もあったので、もっといけるっていう気持ちも湧きました。

ー上の世代のアーティストの方が会場を大きくしていくことを目標にしているイメージで、若い世代はそこにあまり固執していない印象もあるんですけど、WurtSさんは大きい会場でやりたい気持ちが強いんですね。

WurtS いろんなライブ映像を観て、いろんなアーティストが「武道館!」とステージで叫んでいる姿にも憧れていたので、それを今自分ができている嬉しさはあります。ヒット曲を作りたいとも思うんですけど、それ以上に武道館で叫びたい、あんなライブ映像を自分も撮ってみたい、そういう気持ちが強いんです。次は「横浜アリーナ!」って叫びたいですね。

ーWurtSさんからシンガー/フロントマンとしての先輩でもある川谷さんにライブについて聞いてみたいことはありますか?

WurtS リスナーとしてindigo la EndさんのMVを観たり、ライブを観たりしているときから、僕が勝手に思っていることなんですけど、すごく大人っぽいですよね。それってどうやったらできるのかなって。

川谷 僕らは音楽的に静かなので、結果的にそうなってしまったと言う方が正しいんですよね。それに何より今まで体育会系でやってこなかったから。みんなよく「対バンをぶっ殺すぜ!」みたいなことを言うじゃないですか。あれがものすごく苦手で。だからできるだけバンドとつるまない、仲良くしない、本当に自分が尊敬している人とだけやる、呼ばれたら行くけど、くらいの感覚でやっていて。正直、ダメな例なんです、本当に。ステージに立ったら楽しくやるんですけど、そういうちょっと歪んだ人たちなので、他のバンドに聞いた方が早いかもしれない(笑)。

ーそんな川谷さんがライブで意識していることは?

川谷 僕たちは曲の繋ぎでも、とにかく無音の状態を作りたくない、というのをずっと意識しています。パッと音が消えて、無音で楽器の転換をしたりするのがすごく嫌で、ずっと緊張感のある状態でライブをやりたい。海外のライブを観ても1時間半ぶっ通しでやるのがカッコよかったりするので、とにかくずっと繋ぐ、緊張感を保つ、というのはどのバンドでもやっていることですね。

ーWurtSさんはステージでどんなことを大事にしていますか?

WurtS とにかくがむしゃらに。あと最初はすごく緊張してしまったので、本番前までライブを意識しないようにしていて。それこそYouTubeでライブ映像を観て、自分がワン・ダイレクションになった気分で部屋でライブの真似をしていたときのような気持ちで、楽しみながらできたらいいなと思ってやっていますね。憧れの人を演じている感覚です。

ーそれは武道館など大きい会場でも変わりませんか?

WurtS そうですね。憧れに近づいている喜びもあって。より演じている感覚は強くなっているかなと。

Photo by Maciej Kucia 川谷絵音:ジャケット、フーディー、パンツ、シューズ(Maison MIHARA YASUHIRO/Maison MIHARA YASUHIRO TOKYO TEL: 03-5770-3291)

2025年に向けて、海外への眼差し

ーサブスクリプションサービスの普及以降、ミュージシャンにとって音源とライブ、どちらが大事なのかという話があったりします。その点について川谷さんはどう捉えていますか?

川谷 ライブの方が大事だと思います。サブスクのリスナーが少なくても、ライブに人が入る方が、バンドをやっていて楽しいし、音楽をやっている感じがする。それに、生で聴きにきてくれる方がハードルが高いですからね。リスナー数はそこまで多くないけどライブの動員が多いアーティストだと、最近で言えばChevonかな。ライブの動員がリスナー数をはるかに超えてる。ああいったアーティストやバンドは一回ライブに来た人が絶対にまた来るし、それが倍々ゲームで増えていくから、リスナー数は後から追いつくんです。でも逆はあまりない。WurtSくんはちゃんとリスナー数も多くてライブの動員も多いっていう一番いいパターンで。ちゃんとライブでお客さんを楽しませることもできているし、ライブに行きたいと思わせるフロントマンとしての存在感があるってことだと思います。

ーリスナー数とライブの動員の乖離をいかに無くすことができるのか。若い人たちが特に頑張っている部分ですよね。

川谷 例えば、1曲だけ売れちゃうとその反動がありますよね。音楽って興味ない人に聴かせることは難しいわけで、TikTokはそれを補強してくれるものだと思うんですけど、1曲だけ目立ってしまうから、動員とリスナー数がしっかり結びついていない印象で。注目度に比例する形でチケットが売れないと本人たちは相当キツいと思います。匿名性が高いアーティストもライブの動員がしにくい面がありますよね。ライブに行くってその人の音楽だけじゃなく、人となりが好きだったり、その人に会いたいという要素もあると思うので。WurtSくんはその中でも特別ですよね。SNSでちゃんと自分の意見も言うし、人となりが見えて。大事なことだと思います。だから今、素晴らしい状態ですよね。

ー今日WurtSさんの話を聞いてその理由がわかりました。もともとライブを大事にしていて、それに喜びを感じているというのがリスナーに伝わっているんだなと。

川谷 あと、すごく礼儀正しい(笑)。それも魅力的な人間性の一部ですよね。

ーそんなWurtSさんは2025年に2マンツアーを予定しています。

WurtS 去年も今年も2マンライブに呼んでいただく機会が多かったので、そこでいろんな2マンライブのやり方を学びました。ツアーで呼んでいる方々はすごくお世話になっている方ばかりなので、その恩返しもしつつ、みなさんに学んだいいところを取り入れてライブができたらと思います。

ーindigo la Endは来年15周年イヤーで、4月からはツアーが決定していますが、その前に1月にはクリープハイプとの2マンがあります。あまりいろんな人と仲良くしてこなかったindigo la Endが(笑)、クリープハイプと2マンをやることへの期待も大きいと思います。

川谷 共同企画で2マンをやるというのは初めてで、これ以降もたぶんないと思います。いや、呼ばれたら出るんですけど、自分たちから働きかけるのはちょっと難しいので。呼ばれなくなったらワンマンだけをやっていきます(笑)。でもWurtSくんは全方位いけるというか、どんなフェスでも出れるだろうし、海外でも絶対できるポテンシャルのある音楽をやっているから、すごくいいですよね。indigo la Endはフェス向きのバンドでもないから、すごく羨ましさはあります。盛り上がる曲もいっぱいあるし。

ーWurtSさんは海外での活動も視野に入れていますか?

WurtS やっぱりワン・ダイレクションが......。いや、やってることは全然違うんですけど(笑)。でも海外でやりたい気持ちはあります。

川谷 僕らも海外でライブをするモチベーションは高いかもしれない。この前、韓国でやったワンマンがすごく楽しくて。誰かを観ている感じではなく、能動的に楽しんでくれていて。僕はそういった文化がすごく好きなので、海外でも積極的にやっていきたいですね。

Stying by Yudai Ishinosawa (TEN10) Hair and make-up by Moi Maruyama / Enon Kawatani

Stying by Jun Ishikawa / WurtS

『MOLTING AND DANCING』

indigo la End

ワーナーミュージック・ジャパン

発売中

https://indigolaend.lnk.to/MAD

『元気でいてね。』

WurtS

EMI Records

発売中

https://lnk.to/Ws_Genkideitene

Vポイント presents ツタロックフェス2025

2025年3月22日(土)23日(日)幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール

※ indigo la End とWurtS は22日(土)に出演

主催:CCCミュージックラボ(株)/ライブマスターズ(株)

企画:CCCミュージックラボ(株)

制作:ライブマスターズ(株)

運営:(株)ディスクガレージ

特別協賛:CCCMKホールディングス(株)/ 三井住友カード株式会社

問い合わせ:info@livemasters.jp

【3月22日(土)DAY1】

indigo la End / オレンジスパイニクラブ / KANA-BOON / カネヨリマサル / CLAN QUEEN / Kroi

KOTORI / Chevon / SHISHAMO / トンボコープ / NEE / にしな / ブランデー戦記 / マルシィ / ヤングスキニー / WurtS

【3月23日(日)DAY2】

アルステイク / シンガーズハイ / SKRYU / Chilli Beans. / This is LAST / TETORA / Novelbright /

ハルカミライ / Hump Back / ハンブレッダーズ / FOMARE / プッシュプルポット / bokula. / moon drop / reGretGirl / レトロリロン / ガラクタ(Opening Act)

最終先着先行

専用URL:https://eplus.jp/tsutarockfes/

1DAY券各日 U-18:9,300円(税込)/一般:11,800円(税込)

2DAYS券一般:22,000円(税込)