[写真]=AFC

 中国第四の都市・深圳にて開催中のAFC U20アジアカップは20日までにグループステージの全日程を終了。“アジアの8強”が出揃った。勝ち残っているのは、サウジアラビア、中国、韓国、ウズベキスタン、オーストラリア、イラク、イラン、そして日本である。

 日本のグループステージは「思い描いていたプラン通りではあるけど、想定内」(船越優蔵監督)で推移することとなった。タイとの初戦は日本も緊張していたが、相手はもっと緊張していたというようなゲームの中で、石井久継(湘南ベルマーレ)の先制点から、最終的には3-0と快勝。順調なスタートを切った。

 続くシリアとの第2戦は、大会開幕前から難所としてイメージされていた。昨年行った親善試合では2-2と引き分けており、良くも悪くもそのイメージを持った状態で臨んだ。相手のカウンター対策を兼ねて採用した3バックシステムによって攻撃が重くなってしまい、相手のリスタートに対するミスも絡んで2度の先行を許す展開に。最後は交代出場のFW高岡伶颯(日章学園高校/サウサンプトン内定)の得点で命拾いする形のドローとなったが、課題を突き付けられる試合となった。

「(シリアは)命がけというか、相当な覚悟を持って試合に臨んでいた。気持ちの部分で自分たちが劣ってしまってたのは反省です」(MF大関友翔/川崎フロンターレ)

 技術・戦術、駆け引きといった部分での課題はもちろん、新たな国家体制になり、新しい国旗を背負って戦っていたシリアの気迫は特別なものもあり、そこに圧倒された面があったのも否めない。シリア戦は“負けたら終わり”のプレッシャーに晒されながら、国を背負って戦うアジア予選特有のシビアさを選手たちが、肌で感じる機会にもなった。

 最後は韓国とのグループステージ最終戦。日本にとっては「引き分け以上で突破決定」というシチュエーションだったが、韓国はすでに突破を決めている状態。しかも1位抜けと2位抜けでの日程上の差もないため、韓国側は先発8名を入れ替えるほぼターンオーバーを選択してきた。ハーフタイムに行った交代が第3GKの投入だったことからもわかるように、その温度感はかなり低めだった。かつては韓国側に強く存在した“日韓戦だから”という論理もだいぶ薄くなったことを、あらためて実感させられる光景だった。

 その相手に日本は幸先良くFW神田奏真(川崎フロンターレ)が前半のうちに先制点を奪い取り、優勢を確保。その後は「見てる人は退屈だったと思うんですけど」とDF市原吏音(RB大宮アルディージャ)が振り返る“意図した塩試合”の流れに持ち込んだ。

「韓国もグループステージ決まってて、無理して来なかったですし、うまく時間を使いながらボールを回して(時計を進めた)。大人のサッカーというか、これもサッカーの一つ。真剣勝負の上ではあること」(市原)

 個人プレーでの仕掛けはあったが、全体では互いに無理をすることなく時間を経過。韓国側もガムシャラな攻勢を始めるといったことはなく、このまま試合終了かと思われた。だが、まさにそこに落とし穴があり、後半アディショナルタイムに、自陣でのミスからボールを失い、その流れから決められるという最悪な形で同点に追い付かれ、試合は終了。1-1での引き分けに終わった。

 引き分け以上で突破が決まる状況でのドロー決着は本来そこまで落胆するべきではないが、勝利をほぼ掌中に収めながらの失態に、試合後の選手たちからは敗戦後のようなムードが漂ってしまうこととなった。ただ、過去のユース代表を思い出しても、グループステージで順風満帆なら次のステージでうまくいくというわけではなかった。ポジティブに解釈すれば、若い選手たちが「失敗しながら成長していく」(船越監督)過程とも言えるし、決戦を前に苦い薬を飲んだとも言えるだろう。

 23日、イランとの準々決勝は「勝てば世界切符、負ければチーム解散」の試合である。韓国戦のようなややこしい状況ではなく、全力を傾注して勝利を目指すのみ。チーム結成以来最大の決戦が迫りつつある。

取材・文=川端暁彦