花王は2月18日、肌の経年変化に関する調査結果を発表した。本調査は、独自の長期肌実態調査(ウルトラ肌解析データベース)を活用し、日本人女性106名の5年間の肌変化を解析する形で行われた。

  • 106名の5年間の顔の肌の見た目変化の分布

調査の背景

肌の状態、見た目 (シミ・ソバカスなどの色ムラ、シワ、たるみなど) は年齢に伴って変化するが、その変化の仕方は個人によって大きく異なる。

同社は、1992年から同一人物の肌性状や意識などの経年変化を継続的に追跡調査し、網羅的データベース「ウルトラ肌解析データベース」を構築。このデータベースにより、長期的な肌の変化を網羅的に解析し、科学的知見を蓄積することが可能だとしている。

近年、高齢化社会が進む中で、年齢を重ねることを前向きにとらえるウェルエイジングの考え方が広く受け入れられつつある。ウェルエイジングを実現するためには、自分の肌状態を正しく認識し、価値観やなりたい姿に合ったケア法を選択することが重要といえる。そこで同社は、加齢による肌の見た目の変化パターンを解明するべく、ウルトラ肌解析データベースを活用し、同一人物の5年間の変化について評価を行った。

5年間の肌の見た目変化の評価

調査では、2010年に16~74歳だった日本人女性106名について、2010年と2015年の顔画像を比較した。顔を全方位から解析するため、3Dの顔画像をパーツの位置が同一の平面顔画像に変換し、2010年と2015年の個人の差分画像(顔画像の変化データ)を作成した。

  • 3Dの顔画像を平面の顔画像に変換

1.経年変化の特徴を示す主成分の抽出

経年による肌の見た目の変化の特徴を把握するため、106名分の差分画像データを用いて、eigenface法(顔画像の特徴を抽出する主成分分析の手法のひとつ)で解析を行った。さらに、統計的な処理を加えることで、参加者の経年変化特徴を表す第1、第2主成分を得た。第1、第2主成分得点をプロットした結果、U字型に分布している様子がみられた。

  • 参加者の主成分得点

U字型の軌跡に沿って、年齢が高くなることを確認

これらのデータの意味を解釈するために、参加者全員の主成分得点を用いてクラスタ分析を行ったところ、3つのグループ(A、B、C)に分かれた。

  • クラスタ分析による3つのグループの分布と特徴

また、各グループの特徴を年齢と、目視による見た目(テクスチャ)変化で確認した。その結果、グループAは比較的若い年代(平均年齢31.4歳)で構成され肌の変化がほとんど見られず、グループB(平均年齢47.8歳)では、小さなシミやちりめんジワなどの比較的小さな見た目の変化が、グループC(平均年齢61.6歳)では、はっきりとしたシワやたるみなどの比較的大きな見た目の変化が多いことがわかった。

  • グループ別の変化パターンのイメージ

以上の結果より、肌の見た目の経年変化は、量と質が異なる3つのグループに分けられ、各グループの平均年齢の境界となる40歳前後と、50代半ばに肌の見た目の変化の様子が変わる2つの「曲がり角」があることが明らかになった。

今回の調査結果は、第2回日本化粧品技術者会学術大会(2024年11月18~20日・兵庫県)で発表され、最優秀ポスター発表賞を受賞した。同社は今後もこのデータベースを活用し、顔の形状や肌を深く知ることで、化粧品やケア方法の開発、各個人の価値観に寄り添った提案をめざして研究を進めるとしている。