猛威を振るっている今季のインフルエンザ。12月29日までに全国の医療機関から報告された患者数は1医療機関あたり64.39人で、これは現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、最も多い数字です。未だ収束する気配のないインフルエンザについて、感染経路や予防法、発症した時の対応を改めて確認してみましょう。
■インフルエンザの感染経路とは
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することで起こる病気です。38度以上の発熱や頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身の症状が突然現れ、その他にものどの痛みや鼻汁、咳など一般的な風邪の症状もみられます。
子どもはまれに急性脳症を発症することがあり、高齢者や免疫力が低下している人は肺炎を伴うなど、重症になることがあります。また、妊娠中の女性や持病のある人(喘息のある人、慢性呼吸器疾患(COPD)、慢性心疾患のある人、糖尿病など代謝性疾患のある人など)も重症化には注意が必要です。
インフルエンザの一般的なピークは1~2月で、4、5月まで散発的に流行が続くこともあります。感染力が非常に強く、いったん流行が始まると短期間に多くの人に広がってしまい、日本では毎年約1千万人、約10人に1人がインフルエンザに感染しています。
また、インフルエンザウイルスは抗原性の違いにより、A型、B型、C型、D型に大きく分類され、例年、A型は1月から2月頭にかけて流行のピークを迎えます。現在流行しているインフルエンザもA型ですが、その後はじわじわとB型が流行していくことや、今後さらに罹患者数が増えることも予想されています。
では、インフルエンザはどのように感染するのでしょうか。インフルエンザの感染経路は、主に「飛沫感染」と「接触感染」の2つがあります。
<飛沫感染>
1.感染者のくしゃみや咳、つばなどの飛沫と一緒にウイルスが放出される
2.別の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込み感染する
飛沫感染は主に、学校や職場など人が多く集まる場所で起こります。
<接触感染>
1.感染者がくしゃみや咳を手でおさえる
2.その手が周りの物に触れた時、ウイルスが付く
3.別の人がその物に触ってウイルスが手に付着する
4.その手で口や鼻を触って粘膜から感染する
接触感染の主な感染場所は、電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなどです。
■インフルエンザを予防するには
この冬はすでに爆発的な流行を起こしているインフルエンザですが、本当のピークはこれからの模様。今からでもインフルエンザを予防するには、どのような対策が有効なのでしょうか。インフルエンザの予防には、主に「感染経路を断つこと」「予防接種を受けること」「免疫力を高めること」の3つが有効とされています。
1.感染経路を断つ
感染経路を断つために最も大切なのは、「正しい手洗い」です。私たちは毎日、さまざまなものに触れていますが、それらに触ることによって自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。ウイルスが体内に侵入するのを防ぐため、帰宅時や調理の前後、食事前などにはこまめに手を洗いましょう。手洗いは、以下のような手順で行います。
1.流水でよく手を濡らし、石鹸をつけて手のひらをよくこする
2.手の甲を伸ばすようにこする
3.指先・爪の間を念入りにこする
4.指の間を洗う
5.親指と手のひらをねじり洗いする
6.手首も忘れずに洗う
石鹸による手洗いが終わったら、水で充分に流し、清潔なタオルやペーパータオルでよくふき取って乾かします。また、爪を短く切っておくこと、手洗いの前に時計・指輪を外すことも忘れないようにしましょう。
2.予防接種を受ける
インフルエンザワクチンを打つことで、発症の可能性を減らし、発症しても重症化を防ぐことが期待できます。ワクチンはインフルエンザが流行する前に接種するのが望ましいですが、今からでもワクチンを打つことで予防効果があります。
3.免疫力を高める
免疫力が弱まっていると、インフルエンザウイルスに感染しやすくなると言われています。また、感染した時に重症化してしまう恐れもあります。普段から充分な睡眠とバランスの良い食事を心がけ、免疫力を高めておきましょう。
その他、人混みや繁華街への外出を避けることも感染を防ぐのに効果的です。また、空気が乾燥するとのどの粘膜の防御機能が低下するため、乾燥しやすい室内では加湿器などを使って適度な湿度(50〜60%)を保つこと、こまめな換気を心がけることも感染予防につながります。
■発症したらどうすればいい?
目安として、比較的急速に38度以上の発熱があり、咳やのどの痛み、全身の倦怠感などの症状がある場合はインフルエンザに感染している可能性があります。その場合、まずは安静にして充分な睡眠をとりましょう。また、高熱による発汗で脱水症状になるのを防ぐため、こまめに水分を摂ることも大切です。
高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪い場合は、早めに医療機関にかかりましょう。特に、幼児や高齢者、妊娠中の女性、持病のある人などは重症化しやすいため速やかな受診が必要です。
医師が必要と認めた場合は、抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。発症から48時間以内に服用を開始すると、発熱期間の短縮などの効果が期待できます。
なお、熱が下がった後もインフルエンザウイルスは体内に残っています。周囲への感染を防ぐため、熱が下がった後も数日は学校や職場に行くことは控え、自宅療養しましょう。また、くしゃみや咳が出る場合、周りに人がいる時は咳エチケットとしてマスクを着用しましょう。
最後にインフルエンザの対策方法に関して、呼吸器内科の専門医に聞いてみました。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することで発症する病気で、症状としては38度以上の発熱、全身症状(頭痛、関節痛、筋肉痛など)、局所症状(鼻汁、咽頭通、咳など)があっという間に出現することがほとんどです。インフルエンザの抗原検査は、症状が出現してから24時間程経過したタイミングで受けることでより検査結果の信憑性が高まり、症状が出現してすぐに検査を受けると陰性になる可能性があるため注意が必要です。
感染力の高いインフルエンザではありますが、予防することも可能です。具体的にはインフルエンザワクチンを接種する、咳エチケットを心がける、手洗いうがいを心がける、流行期は人混みを避ける、室内では定期的に空気の入れ替えをする、適正な湿度を保つ(50-60%)、規則正しい生活リズムを習慣にする、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を心掛ける、などです。特にインフルエンザワクチンは接種することで発症予防効果(60%程度)のみでなく、肺炎や脳症などの重症化リスクを低下させることが可能になります。小児、高齢者、基礎疾患をもっている方は接種することを考えて下さい。
発症後の対策としてはとにかく安静に休養することが大切です。無理はせず、できるだけ解熱するまでは寝ていることが望ましいです。高熱がでると多くの水分が体の外にでてしまうのでこまめに水分を摂るように心がけてください。お茶やお水だけでは体に必要なミネラル分が摂れませんので、イオン飲料や経口補水液などをお勧めします。治療薬に関しては、リスクの高い方には発症後48時間以内に抗ウイルス薬服用を開始することで高い効果が得られます。
また周囲への感染のリスクを低下させるためにドアの手すり、お風呂・トイレなどの共用スペースを消毒すること有用です。流行期は体調に異変を感じたら、マスクを着用して飛沫感染に注意し、周囲との過度な接触はせず休養することも大切です。