2007年に芸能界デビューし、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013)をはじめ数々の作品に出演してきた女優の山下リオ。今年4月にグラビアに初挑戦し、今月13日に17年ぶりとなる写真集『Selenge』(講談社)を発売するなど、活躍の幅を広げている山下にインタビューし、今の仕事に対する思いや自身の転機について話を聞いた。
これまでの歩みを振り返り、山下は「お芝居に関して挫折した経験が何度かあって、これ以上成長は望めないかもしれないとか、自分の中でずっと葛藤があったり、実生活で自分の人間性について悩むことが多かったです」と打ち明ける。
人間性についての悩みについては「言葉にするのは難しいんですけど、人に影響を受けすぎて、感情が振り回されたり、感化されてしまうので、自分の軸がなくゆらゆらして、自分に対して不安がありました」と説明。「加えて、お芝居に関しても確信が得られず、昔はダメ出しもたくさんされていたので、私はこのお仕事向いてないと思っていました」と語る。
「辞めたい」と思った時には、いつも母親に連絡。「『じゃあ辞めればいいじゃん』って言われるんですけど、天邪鬼だから、それも嫌で(笑)」と、自分の気持ちを何度も奮い立たせて続けてきた。
そして、コロナ禍に大きな試練が訪れた。
「全部の仕事がなくなり、貯金も尽きました。そんな中、親友が亡くなるという悲しい出来事で、人生のどん底を経験しました。俳優という仕事で誰かの命を救えるわけではないですし、エンタメは今は必要ないという感じになっていたので、あの時期が一番葛藤がありました。自分には何もできないし、誰からも求められていないと思ってしまって」
葛藤を抱える中、2022年8月末に16年間所属したスターダストプロモーションを退所し、独立した。
「声をかけていただかないと続かないお仕事だと思っているので、辞めたら自分は求められているのかわかるだろうと。自分に対する究極の追求というか、追い詰めた先にどんな景色が見えるんだろうと思って辞めました」
独立してオファーをもらえなかったら芸能界を引退しようという覚悟の決断だった。
「このお仕事は踏ん切りの付け所が難しいんです。定年退職もない上、事務所にいることで甘えが生まれたり、つてでどうにかなるかもしれないという期待をもってしまう。私の場合は、未来の自分の輪郭を誰かに描いてもらうのを待っているだけな気がしていました。そんな自分が嫌で、どんな結果になっても誰のせいにもできない、野ざらしの環境で自分がどうなるのかをみてみようと思いました」
結果的にオファーが絶えることはなく、数々のドラマや映画、舞台に出演。「本当にありがたいことに、自分でも激動の2年間だったなと思います」と笑顔を見せる。
「オファーが増えていく中でどんどん解放されていったというか、ありのままの自分でいることで、自分の人生の舵をちゃんと切れているような、そんな片鱗がつかめた感覚があって。そういう道を少しずつつかんでいった先に、また何か試練が待ち受けているとは思いますが、それも含めて、逃げずに続ける大切さを感じていますし、俳優業の面白味もやっと見えてきたかなと思います」