
コロナ禍によってビジネスの形態が変わったもののひとつにラグジュアリーホテルがある。コロナ禍で人との接触を極力避ける措置が取られる中、ホテル業界は大きな打撃を受けた。そのような状況の中で、いくつかのホテルは、コロナが終息した後もホテルの宿泊客しか味わえなかったスイーツを、ホテルの外でも買って持ち帰ることができるようにするという新しい試みを始めた。その一例が、リッツ・ホテルが2021年6月にオープンさせたRitz Paris Le Comptoirだ。
【画像】「世界最高のパティスリー賞」を受賞したLe Comptoirのクリスマスケーキ(写真10点)
「Le Comptoir」はフランス語で「カウンター」を意味する。この名称は、かつてここがヘミングウェイも愛したリッツ・ホテルのバーだったことに由来する。そのバーは現在、ホテル内の別の場所に移動している。
Le Comptoirのオープン以前から、リッツ・ホテルのシェフ・パティシエであるフランソワ・ペレ(François Perret)このプロジェクトを担当している。ホテルのレストランで提供されるデザートには一定の制限があるが、パティスリーとして独立しているLe Comptoirでは、彼の才能を存分に発揮できるという。その結果、ホテル内で提供されているものが一般販売されているだけでなく、逆にホテルに宿泊していてもこのパティスリーを訪れなければ食べられないスイーツもあるというわけだ。
フランソワ・ペレ率いるLe Comptoirと言えば、まず思い浮かぶのがマドレーヌだ。日本でもおなじみのマドレーヌを、彼は伝統を尊重しながらも独自の革新を加え、最高の一品として仕上げている。2019年には「Meilleur Pâtissier de Restaurant du Monde(世界最優秀レストラン・パティシエ賞)」を受賞し、2024年にはLe Comptoirがガイドブック「La Liste」で「世界最高のパティスリー賞」を受賞した。
今年のLe Comptoirのクリスマスケーキ、ブッシュ・ド・ノエルは「Bûchette Père Noël」、サンタクロースをテーマにした一品だ。マドレーヌに帽子をかぶせたようなシルエットで、ココナッツビスケットとマンゴーのコンポート、ライムのアクセントを加えた華やかな味わいとなっている。また、マドレーヌをぎゅっと押し固めたような3種類のブッシュも今年のクリスマスケーキとして用意されている。レモン風味、洋梨とショコラ、そしてショコラの3種類で、それぞれ6~8人用の大きなサイズから1人分の小さなサイズまで選べる。
フランスでは日本の正月のようにクリスマスを家族で過ごすことが多い。そのため、家族の好みが分かれる場合には、小さなサイズのケーキを人数分揃えるということもよくあるそうだ。日本と違い、フランスではクリスマスが終わった後すぐにお正月を迎えるわけではなく、年が明けてもゆっくりその余韻に浸る。このクリスマスケーキは1月2日まで楽しむことができる。
Ritz Paris Le Comptoirのサンタクロースに会いに行き、パリで年末年始を過ごすのはいかがだろうか?
https://www.ritzparislecomptoir.com
写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI