勤労感謝の日に合わせて、誰かの努力や仕事に対する行き場のない感謝やお礼を集めて展示する「#これ誰にお礼言ったらいいですか展」が、東京・神宮前のMIL GALLERY JINGUMAEで開催された。

誰に伝えればいいか分からない感謝「迷子のお礼」を解消

「#これ誰にお礼言ったらいいですか展」は、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げるパーソルホールディングスが手掛けた展示で、11月22~24日の3日間にわたり開催。

このプロジェクトは2023年11月にスタートし、今回で2度目の開催となる。

日々の生活の中で、誰が考えたものかはわからないけど、いつの間にか便利になっていたものや、些細ではあるけれど助けられているものに出合ったことは、きっと誰しもあるだろう。

そんな、名前も知らない誰かの努力や仕事に対するお礼の気持ちは、誰に伝えればよいのかわからず、そのままになっていることがほとんどだ。

パーソルホールディングスはそんな行き場のないお礼の気持ちを「迷子のお礼」ととらえ、東京・御岳山の「迷子のお札預り所」カフェやSNSなどを通じて集めた結果、約600件の「迷子のお礼」が寄せられた。

そのお礼を伝えるべき相手を探し出して、お礼を届けた先にある思いや反応を含めて紹介しているのが、今回の展示だ。

会場には、お礼のコメントとともに感謝を感じたアイテムの実物や、お礼を届けた際の反応など24点が展示。

また、会場には「届けられているたくさんのお礼コメント」が天井から吊るされ、来場者が「迷子のお礼」を残せる「お礼集めブース」も設置されていた。

展示された実物には、リュック通勤のビジネスパーソンに便利な縦入れのブリーフケースや、お手洗いの個室でスマホなどの忘れ物を防ぐ小物置きになっている扉の鍵、押す時にも軽い電動アシスト自転車など、ちょっとした便利さやありがたさを感じられるものがズラリと並べられた。

展示に添えられた吹き出しにはお礼の言葉が記され、その吹き出しを開くと、お礼を伝えた相手からのメッセージを読むことができる仕掛けとなっていた。

さらに、みじん切りの手間をなくしてくれる「ブンブンチョッパー」や被災地などで役立つ電池不要のソーラーランタン「キャリー・ザ・サン」では、それぞれのアイテムに込めた想いなどの開発秘話もパネルで紹介されていた。

小さくても、目立たなくても、素敵な仕事はたくさんある

今回のような展示では、どのような狙いで「迷子のお礼」を届ける形で行われたのか。プロジェクトを担当したパーソルホールディングス はたらくWell-being推進室 室長の中山友希氏に話を伺った。

  • パーソルホールディングス はたらくWell-being推進室 室長 中山友希氏

――今回の展示はどのような狙いで企画されたのでしょうか。

「働くことに関してネガティブなニュースが多い中で、勤労感謝の日という機会に、自分の身の回りにある、目立たないけれどもナイスなお仕事を集めて、その仕事をした人にスポットライトを当てる1日にしたいと考え、企画しました」

――昨年に引き続き2回目の開催となりますが、どのような反響や反応がありましたか。

「お礼をお届けした人から感謝されるということは想像していましたが、驚いたのは、お礼を伝えたい人の熱量が非常に高かった点です。相手がどこの誰か分からない中で、まるで捜索隊のようにヒントを集めながら探していくのですがが、投稿された方々がとても詳しくヒントを提供してくださいました。今年は、昨年の約20倍にあたる投稿が寄せられ、その熱量をより強く感じました」

――プロジェクトを進める中で、特に印象に残った「迷子のお礼」のエピソードを教えてください。

「長野県の松本市で、道路に開いた穴を通報したところ、数日で修復されていたというお礼の話です。そのお礼を届けようとした際、ご本人は見つかりましたが、『当たり前のことをしただけです』と固辞されまして……。それでも、お礼をお届けしたいという投稿者の思いを尊重し、趣旨に賛同していただきご紹介できました。その方のように固辞されるパターンも少なくないんです。このように、当たり前と思っている行動が誰かに届き、感謝の気持ちが生まれ、それがまたお礼として返ってくる。そんな『気持ちの循環』が生まれることが、とても素敵に感じました」

――今回の展示で、どのようなメッセージを伝えたいと考えていますか。

「アワードで表彰されるような規模の大きな経済性の高い仕事も素晴らしいですが、小さくても目立たなくても素敵な仕事がたくさんあるということ伝えたいです。誰かが思いを込めて取り組んお仕事に、もっとスポットライトが当たるようなきっかけになれば嬉しいです」