
メジャーリーグ 最新情報
今シーズンのメジャーリーグは[PR]
MLBで初めてのポストシーズンを迎えたロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手。サンディエゴ・パドレスとの地区シリーズでは、素晴らしい投球をした2人の投手が高い壁として立ちはだかった。今回は、その投手たちとの対戦を始めとした、地区シリーズの大谷選手の打撃内容を分析した。(文:島倉孝之)
地区シリーズの大谷翔平の総評
現地時間10月11日、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手にとって初めてのポストシーズンの対戦である、サンディエゴ・パドレスとのディビジョン・シリーズが終了した。結果は3勝2敗でドジャースが勝ち抜け、リーグ優勝決定シリーズに進出した。
このシリーズでの大谷翔平選手の打撃はどうだったか。私なりにまとめると、パドレスの2人の投手に見事な投球をされて数字は伸びなかったが、それでもなおチームの勝利に貢献はできたといえる。
大谷選手の地区シリーズの成績は以下のようになった。
20打数 4安打 1本塁打 4打点 2四球 10三振
打率.200 出塁率.273 長打率.350 OPS.623
一見、レギュラーシーズンに比べ平凡な成績に見え、10三振が目立つ。しかし、ある2人の投手との対戦を除くと、以下のようにレギュラーシーズンを上回る数字になり、三振は3にまで減る。
打率.400 出塁率.500 長打率.700 OPS1.200
その2人は、6度の対戦で3三振を奪い、出塁を許さなかった先発のダルビッシュ有投手、4度の対戦で全て三振を奪ったリリーフのタナー・スコット投手だ。前者は多彩な球種、緩急、低めへのコマンドで、後者は高めの力あるフォーシームを中心に大谷選手を封じた。
2人の大谷選手への投球内容を振り返る。ダルビッシュ投手は大谷選手を相手に2試合、6打席で計28球を投げたが、球種はカーブ、スプリッター、カットボール、スライダー、フォーシーム、スウィーパーの6つ、球速は時速71.4~95.0マイル(約114~152キロ)と多岐にわたる。
以下に詳細を示すが、この地区シリーズでの大谷選手への球種構成は、レギュラーシーズンでの本人の平均のそれとほぼ逆転している点も興味深い。
スコット投手は大谷選手を相手に4試合、4打席で計20球を投げた。球種の85%が平均時速98.2マイル時(約158.0キロ)、最速で時速100.1マイル(約161.1キロ)のフォーシームである。残り15%は平均時速91.0マイル(約146.5キロ)のスライダーだ。
パドレスが誇る“大谷キラー”2投手との対戦は
以下、大谷選手が三振を喫した打席から両投手の投球例を取り上げる。まずダルビッシュ投手の投球2例を示す。大谷選手にとっては、第2戦(現地時間10月6日)、第5戦(同10月11日)のいずれも第1打席になる。図はGamedayのデータによった(以下同)。
緩急をつけながら多彩な球種が投じられているうえに、見事に低めにコマンドされ甘いコースに行かない。他の打席での対戦でも甘いコースにはほとんど来ていない。
加えて、一部報道されたように、図では表現できない投球モーションの変化もあった。この上にフォーシームは時速90マイル台半ば(約150キロ)の球速がある。誰も打てないような完ぺきな投球をされていた。
次に、スコット投手の投球2例だ。大谷選手にとっては、第1戦(現地時間10月5日)の第5打席、第3戦(同10月8日)の第4打席になる。
第1戦で投じられたのはすべて高めの時速100マイル(約160キロ)近いフォーシームだ。この日の先発のディラン・シース投手から高めのフォーシームを捉え本塁打にした大谷選手は、この厳しいフォーシームに食らいつくが、最後はボール球を振らされた。図にない第2戦は高めの同様のフォーシーム3球で三振を喫している。
第3戦はコースを若干変え、低めも交えた配球になった。これまでなかったスライダーも織り交ぜられ、最後は外角のスライダーに手も足も出ず見逃し三振になった。
図にない第5戦は、外角低め中心の配球ののち、真ん中のフォーシームで三振を喫した。
このようにみると、ダルビッシュ、スコット両投手は、地区シリーズで大谷選手に対しほぼ100点満点の投球をしたといっていい。
打倒ドジャースに燃えるチームやファンの雰囲気が乗り移り、高い集中力で臨めた結果ともいえる。配球、コマンド、球速と、誰もが真似できる投球ではない。
地区シリーズでは“繋ぐバッティング“に…?
一方、大谷選手も、厳しい投球をされる中で、しっかりとチームの勝利に貢献できる働きはできたといえる。初戦にシース投手から打った上記の本塁打だけではない。
パドレスに王手をかけられて迎えた第4戦も注目される。この試合の大谷選手は3打数1安打1打点2四球だったが、出塁した打席の内容がチームに貢献する重みを感じさせるものだった。
2回表2死1,2塁から放ったタイムリーヒットによりドジャースはリードを広げることができ、直後のムーキー・ベッツ選手のタイムリーや3回表の追加点をも呼び込んだ。6回の第4打席は、ジェレミア・エストラダ投手からファウルで粘って9球投げさせたうえで四球をもぎとった。
いずれも「フォア・ザ・チーム」でつないでいこうという大谷選手の姿勢が見て取れた素晴らしい打席だった。地区シリーズでは、得点圏に走者を置いた場面で4打数3安打を記録している。
フィールド内外ともにライバリティが高まったパドレスとの地区シリーズをドジャースは勝ち抜けた。大谷選手本人にとっても、何にも代えがたいヒリヒリとする緊張感の中でのプレーを初めて体験でき、厳しい攻めを体験した中でもチームの勝利に貢献できた。これこそまさに本人が一番望んでいたことだろう。
大谷選手の夢にはまだ続きがある。これに向け、チームの勝利に貢献するパフォーマンスがどれだけできるか。以降対戦するチームも、ダルビッシュ、スコット両投手の内容を学習して臨んでくるはずだ。
その大谷選手は、続くニューヨーク・メッツとのリーグ優勝決定シリーズ第1戦では、4打数2安打1打点1四球の滑り出しを見せ、チームの勝利に貢献している。
【関連記事】
【了】