12日間のパリ2024パラリンピックでは、さまざまな名勝負が生まれた。記憶に残る日本代表選手の戦いを、取材班が厳選して紹介する激闘録の第2弾!

バドミントン 女子シングルス(WH1/車いす)準決勝
里見紗李奈 vs 尹夢璐(中国)「ルル選手との試合が私のなかでは決勝だと思ってやっていた。本当に、お互いぶつけ合ったなと思う」と里見
photo by Hiroyuki Nakamura

パラリンピック連覇を狙う里見紗李奈にとって、ネットの向こうにいる「ルル」こと尹夢璐は、最強のライバルであり、自分を高みへと向かわせる最高の相手だ。

試合はハイレベルな技術の応酬だった。第1ゲームは抜群のコートカバー力を誇る里見が終始リードを保ったまま21-17で先取。しかし、第2ゲームは簡単にはいかなかった。

里見は立ち上がりから6ポイントを連取したものの、そこから5連続失点。互いに針の穴を通すようなコントロールショットは見応え十分で、その後は流れが拮抗したまま試合が進んだ。デュースまでもつれるなか、22-20でこのゲームを取ったのは里見だった。

ルルとは東京大会で1勝1敗。今年2月の世界選手権では準決勝で対戦し、国際大会の連勝を59で止められた。パリ大会予選リーグでも、ルルに黒星を喫していた。

けれども里見は「最後は気持ちの強い方が勝つ」と信じてルルとの準決勝に臨み、制した。ルルという最大の山を越えた里見は、2大会連続で金メダルを獲得した。

握手を交わすライバル同士の2人(写真はダブルスの試合)
photo by Hiroyuki Nakamura

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車いすテニス 男子シングルス 決勝
小田凱人 vs アルフィー・ヒューイット(イギリス)「彼(ヒューイット)がいて、多分自分もここまで来た。彼がいなかったことを想像すると、僕もこのプレーまで至ってないかもしれない」と小田
photo by Takamitsu Mifune

観客が一斉に立ち上がり、新王者となった18歳の小田凱人に万雷の拍手を送る。まさに決勝戦にふさわしい戦いだった。そして、このハイレベルで白熱した一戦は、多くの人がパラリンピック史上に残ると思ったに違いない。

お互い、持ち味を正面からぶつけ合った。第1セットは、ボールに気迫を乗せて打ち込んでいった小田が6-2で先取。だが第2セットは、積極的にネット前へ出ていく小田に対し、ヒューイットがバックハンドのパッシングショットなどで応酬。ヒューイットが6-4で取り返す。

そして迎えた運命の最終第3セットは、つばぜり合いの様相となった。ゲームカウント3-5で迎えた第9ゲーム、劣勢の小田は、マッチポイントを握られ、いよいよ崖っぷちに立たされる。しかしヒューイットが繰り出したドロップショットがわずかにラインを割って命拾い。結果的に、このポイントが勝負の分かれ目となった。

小田は、このゲームを逆転してものにすると、その後は畳みかけるような攻撃を連発。最後はヒューイットが小田の強打を返しきれず、セットカウント2-1で小田の劇的な逆転勝利となった。

負けたヒューイットが王者を称えるシーンが涙を誘った
photo by Takamitsu Mifune

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陸上競技 男子5000m(T11/視覚障がい)決勝

唐澤剣也 vs ジュリオセザール・アグリピノドスサントス(ブラジル)「アグリピノドスサントス選手は最初からずっと先頭で、押し切って金メダル。本当に実力がある」と唐澤
photo by AFLO SPORT

レース前、この種目の世界記録は、2024年の世界パラ陸上競技選手権で、ブラジルのエウチン・ジャッキスが新しく樹立した14分53秒97だった。だが、わずか3ヵ月半後、3人の選手が記録を更新した。銀メダルを獲得した唐澤剣也もその1人だ。

序盤からレースを引っ張ったのは、アグリピノドスサントス。東京大会は7位だったが、2023年と2024年の世界パラ陸上では、銀メダルを獲得するまでに急成長した選手だ。

唐澤は早い段階で2位につけた。時折、チャンスをうかがうが、アグリピノドスサントスの前になかなか出られない。レース中盤まで、先頭集団がほぼ等間隔で縦に並ぶような構図が続く。

2位をキープし、しっかりアグリピノドスサントスについていく唐澤。だが、無情にもその差は開いていく。それでも唐澤は粘った。ラスト2周に入ると、アグリピノドスサントスとの距離が狭まった。

先にゴールしたのはアグリピノドスサントスで、タイムは14分48秒85。自己ベストで走った唐澤は、金メダルまであと2秒63及ばなかった。

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text by TEAM A
key visual by Takamitsu Mifune