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9月上旬、移籍後初めてエンゼルスタジアムに凱旋したロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手。「50-50」の達成がささやかれる今、この1年間で新たに成長した姿をかつての本拠地のファンに見せてくれた。今回は、「ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手」からの変化や進化を、具体的なデータをもとに示していきたい。(文:島倉孝之)
大谷翔平の進化と歩み
「新たに成長した姿」これが今回のテーマである。移籍前後の打撃内容を比較すると、移籍後に大きく進化した特徴的な点があった。これが「50-50」に迫る今年の成績に直結していたのだ。
ここからは、「ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手」から、「ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手」への変化や進化を見ていきたい。
なお、比較対象とするエンゼルス時代の成績については、MVP争いに常時加わるようになった2021~2023年のものを、まだシーズンが終了していない2024年の成績は現地時間9月10日終了時点のものを用いる。
打撃に関しては、移籍前後の変化として、以下の点が見受けられた。
・ゴロが減りライナー性の打球が増えた
・速度の遅いブレイキング系の変化球への対応が高まった
・真ん中の球に対しより確実に強く角度のある打球を打つようになった
米分析サイト『Baseball Reference』のデータをもとに打球割合の推移をみると、ドジャース移籍後の2024年は、その前3年間に比べライナーの割合が高まる一方、ゴロの割合は低下している。
2023~2024年の変化は、ライナーが+3.7ポイント、ゴロが+7.3ポイント、フライが+2.3ポイントになっている。
同期間のハードヒットの割合は以下のように推移した。移籍後の2024年は、前年比5ポイント超上昇し、直近4年で最高値を記録している。
・2021年:53.7% 2022年:49.9% 2023年:54.2% 2024年:59.4%
”苦手分野”が“大好物“に…?
米分析サイト『Baseball Savant』のデータをもとに、ファストボール、オフスピード、ブレイキングの3区分(詳細はグラフの凡例参照)でみた球種区分別の推移をみると、特に2022年に苦手にしていたオフスピード系の変化球を、ドジャース移籍後の2024年は逆に得意にしている。
2022年は、オフスピード系に対して打率で約2割、長打率で4割未満の数字しか残せなかったが、ドジャース移籍後の2024年は打率.341、長打率.718となり、3区分の中では最も得意な球種になっている。
さらに2024年は、ブレイキング系に対する長打率も6割台半ばに伸びている。一方、2023年に打率.380、長打率.787と得意としていたファストボール系に対する数字は、2024年に低下した。2023~2024年の間に、緩急への対応を変えてきた可能性がある。
この1年で飛ばす技術が大成長!?
『Baseball Savant』のデータをもとに、コース別にみたスイングに対するバレル(一定の速度・角度を満たす打球)、ハードヒットの割合の推移を以下に示す。
真ん中のコースについてみると、ドジャース移籍後の2024年は、2021~2023年の平均に比べ、バレル率が9ポイント、ハードヒット率が15ポイント上昇した。2024年は4割以上をハードヒットにしている。
他のコースについてみると、外角高めのボール球でハードヒット率が9ポイント上昇したのが目立つ。一方、ストライクに関しては、インコースの真ん中や低めでハードヒット率が5~6ポイント上昇しているほかは大きな変化はみられない。ただし、後記のように、2021~23年の間でも変化が大きいコースも見られる。
以下、真ん中や外角高めのストライクの変化の詳細を示す。直近1年間では、真ん中のバレル率は倍に近い上昇を示し、ハードヒット率も大幅な上昇を示した。
なお、2023年は、外角高めのストライクのバレル率が、過去2年の傾向とは異なる大幅な上昇を見せ、一時的に20%に達した。
“エンゼルス大谷“との最大の変化
現在の大谷選手にはもうひとつ忘れてはいけない数字がある。現地時間9月8日終了時点で既に自己最高の46を記録している盗塁だ。2024年は成功数だけではなく、成功率などの数字が驚異的に伸びている。
大谷選手の盗塁成功率は、2021年以降以下に推移している。
・2021年:72% 2022年:55% 2023年:77% 2024年:92%
・2021~23年の平均:70%
ドジャース移籍後の2024年は、2022~23年のようなルール改正(ピッチクロックや牽制球の制限の導入)の影響がないにもかかわらず、成功率が前年比15ポイント上昇し、9割を超えた。
その理由を私が推測できる範囲で考えると、投手のモーションや捕手の肩といった要因の分析がドジャースの方が進んでいることが挙げられる。
2023年エンゼルスと2024年ドジャースのチーム盗塁成功率の数字を比較すると、以下のように、大谷選手を除いても2024年ドジャースの成功率が10ポイント以上高い。
・2023年エンゼルス:70%(大谷選手以外で68%)
・2024年ドジャース:83%(大谷選手以外で78%)
以上から、エンゼルス時代とドジャース移籍後の大谷選手の変化を一言でまとめると、「確実性が上がった」ということになるのではないか。打撃では真ん中の甘いオフスピードの球を確実に強く捉えるようになり、走塁では盗塁の成功率も上げた。
これは、本人の技術の向上とともに、ドジャースの優れたデータ分析力も影響しているのかもしれない。この変化が、自らを前人未到の「50-50」達成に、さらにまだ経験のないポストシーズンでのプレーに近づけているのは確かだ。
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【了】