ここ最近、特に猛威を振るうようになったゲリラ豪雨。帰宅時間帯に重なることも多く、電車などの公共交通機関に与えるダメージも甚大で、その影響は雨とともに我が身に降り掛かってくるのだから本当にたまったもんじゃない。

そんなときに利用をオススメしたいのが、Yahoo!乗換案内のiOS版に8月6日から実装された「運行情報キャスト」だ。遅延や運転見合わせなどの最新情報をマップ上で確認できる便利機能で、大雨や地震でダイヤ乱れが心配されるときなどはきっと重宝するに違いない。

ということで今回は、Yahoo!乗換案内のプロジェクトマネージャーを務める朝生美希さん、エンジニアの江田卓也さんに詳しい使い方などについて話を聞いた。

  • 「Yahoo!乗換案内」プロジェクトマネージャーの朝生美希さん(右)、エンジニアの江田卓也さん(左)

■めちゃ便利! 遅延情報などが一発でわかる「運行情報キャスト」

――今回、Yahoo!乗換案内のiOS版に「運行情報キャスト」という新機能が追加されたということですが、具体的にどんな機能なのでしょうか?

朝生さん:Yahoo!乗換案内の「公共交通マップ」からご覧いただける機能で、全国の鉄道運行情報を地図上で一覧できる機能となっています。路線ごとの遅延、運転見合わせ、運転再開などの情報が文字だけでなく、地図で見られるので、たとえば「渋谷〜新宿間の一部区間だけ停まっているんだな」「山手線の内回りが遅延しているんだな」といったことがパッと見でわかります。

――なるほど! 大きな駅などに設置されている路線図情報のような機能ですね。

朝生さん:そうですね。ただ、それだとJRはJRの情報、小田急電鉄は小田急電鉄の情報といったように、各社が個別に情報を掲示するだけで、他社の関連情報と合わせて見ることはできません。

自分が使っている電車が遅延、または運転見合わせになってしまったときって、他の鉄道会社の運行状況も確認したくなりますよね。「運行情報キャスト」は、それらの情報をひと目で確認できるようになっています。

――どうやって使えばいいのでしょう? まずアプリを開いて……

朝生さん:右上にある「公共交通マップ」をタップして、画面上部にある「運行情報」を選択していただくと専用マップが表示されます。路線が黄色くなっているものが「遅延」、赤くなっているものが「運転見合わせ」を意味しています。

アプリ下部のパネルにテキスト情報も表示されるのですが、これをスワイプすることで、各路線ごとの情報にフォーカスすることができます。マップを俯瞰で見れば、ダイヤ乱れの影響がある地域、あまりない地域もすぐに見分けられますよ。

■「運行情報キャスト」をリリースするに至った経緯と工夫点

――これ、めっちゃ便利ですね! この「運行情報キャスト」を開発しようと考えた背景についても教えてください。

朝生さん:昨年は「トレインキャスト」という公共交通マップの機能をリリースしたのですが、これはYahoo!乗換案内が15周年を迎えたことに合わせ、もっとユーザーの皆さんに休日もアプリを楽しんでもらいたい、鉄道ファンに驚きとワクワクを提供したい、という思いで作った新機能だったんです。

具体的には、公共交通マップの各路線上を列車アイコンが走っている様子をご覧いただいたり、列車アイコンをタップすることでその列車の詳細情報が見られたりするなど、「動く電車図鑑」的な楽しみ方に特化していたのですが、今回の「運行情報キャスト」はもっと利便性を向上させたいという思いで開発しました。

――「トレインキャスト」の反応はいかがでしたか?

朝生さん:おかげさまですごく反響をいただいていて、たとえばSNSでも、「ずっと眺めていられる」「これを見ながらお酒が飲める」「新幹線ってこんなに短い間隔で走っているんだ!」といったコメントがスクショとともにアップされたりしています。

――「トレインキャスト」は見ているだけで楽しいですからね。一方、今回の「運行情報キャスト」はより実用性のアップグレードにこだわった、と。

朝生さん:やはり運行情報というのは鉄道情報における大事な要素のひとつですからね。それを地図上で全国一斉に可視化できる、俯瞰して見られる、というところに大きな価値があるんじゃないかと考えました。特に慣れない土地だと、テキストで「◯◯線 運転見合わせ」と案内されても、それが自分に直接どう関係するのかわからなかったりしますが、地図と合わせて見ればイメージもしやすくなると思います。

――「運行情報キャスト」を開発するなかで、工夫した点などはありますか?

江田さん:まずは「既存機能との融合」ですね。「トレインキャスト」は多くのユーザーさんにいろんな使われ方をしてきたので、「運行情報キャスト」がノイズにならないよう、従来どおりの楽しみ方も継続できるような設計にしました。

また、「描画負荷を減らすこと」にもこだわりました。全国的に見れば常時4,000〜5,000本の列車が走っているので、その情報を地図上に表示するとなると、非常に負荷がかかるんです。なめらかに見られるようにするには、少なくとも“フレームパーセカンド”(fps=1秒間に表示される画像数を表す単位)が30は必要なのですが、「運行情報キャスト」で新たな表現を加えたことにより、開発当初は5~6程度まで落ち込んでしまいましたが、試行錯誤しながら結果的に40~50は担保できるようになりました。(※端末性能によって異なります)

最後に、「運行情報の可視化」ですね。過去に類を見ない取り組みだったので、いかに見やすくするかという点については、とにかくこだわりました。「運行情報キャスト」の画面はモノクロ調を採用し、遅延や運転見合わせが発生している場所だけ色あり表示にすることで視認しやすくしたり、新宿駅のようないろんな路線が重なるような場所では、下部パネルで選択した路線が一番上に表示されるよう工夫したりしました。

■ゆくゆくはバスなどの公共交通機関にも対応か

――「運行情報キャスト」のおすすめの使い方などはありますか?

朝生さん:これから列車移動が控えているという方はもちろん、すでに乗車中の方や鉄道好きの皆さんにも利用してもらいたいですね。

たとえば大雨や地震によって自分が乗る、または乗っている列車がストップしてしまうと、周辺の列車も同じくストップする可能性も高いわけですが、「運行情報キャスト」であれば複数路線の情報がまとめて見られるので、状況判断がしやすくなります。

あとは慣れない場所に行くときなども、テキスト情報だけだとわかりにくいので、「運行情報キャスト」を活用していただきたいと思います。そして鉄道ファンのみなさんも、朝のニュースで道路交通情報を見るような感覚で、日本中の鉄道運行情報を俯瞰して眺めて役立ていただければと考えています。

――最後に、今後アップデートを考えているポイントなどがあれば教えてください!

朝生さん:現在、「トレインキャスト」「運行情報キャスト」は鉄道情報のみとなっていますが、たとえばバスやフェリーなど、ニーズ次第で他の公共交通機関への対応も進めていきたいと思っています。

また、現在の「トレインキャスト」は時刻表ベースになっていて、遅延、運転見合わせ情報などは列車アイコンの走行位置に反映できていませんが、これをリアルタイム反映できるよう、研究開発を進めていけたらなとも考えています。かなりチャレンジングですが、江田たちと喧々諤々の議論を重ねながら実現できたら嬉しいですね。